400字の部屋 ♯2 「海外旅行 2」

 前日の夜に呑んで全身の細胞から酒の匂いを撒き散らし乍ら眠りこんだ朝の目覚めは記憶が無い覇気が無い金が無いのスリーパンチが常だが今朝の目覚めはいつも以上に酒を呑んだにも拘らず記憶有り覇気有り金有りのスリーパンチスペシャルであったのは、ここが曇天続きの我が国ではなく地上から垂直に立ち昇る太陽が爛爛と輝く南方の異国だからであるのは間違いない。ベッドから出て窓際から外を眺める。我が国とは異なる形のビルの群れと遥かに広がる大海に点点と浮かぶ漁船が一望出来る。素晴らしい。こんな目覚めは初めてだった。ここでは全土に降り注がれた無尽の熱波が細胞に吸収され信じられないスピードで代謝を促すのでエネルギーが湧き出て常に快活でいられる。そうした太陽からの恩恵はヒトだけに限らず象も水母もブーゲンビリアも地中の原石も等しく享受していて、それらはエネルギーを発散して「命」を謳歌している。今、濃密な「命」の中にいる。

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