たね

小説を書くのが好きです。私生活についても思ったことを徒然なるままに綴っていきたいと思っ…

たね

小説を書くのが好きです。私生活についても思ったことを徒然なるままに綴っていきたいと思っています。  読んでいただけたら嬉しいです。 インスタグラムもやってます。 https://instagram.com/tane_0127?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA==

最近の記事

ナイショの話

 内緒の話をしようと思う。  これが現実か、架空なのかは読んでくださっている方に想像していただきたい。  わたしは、過去に元ホストの同い歳の男の子を好きになった。  彼は身長はわたしと同じくらいだったけど、スタイルにも容姿にも恵まれていた。  2人で歩いていても、すれ違う人々が男女問わず視線を向けてくるような。  わたし的には自惚れだけど、身長も同じくらいだし、見た目上、いい感じに見えていたのではないかと思う。  彼はホストを辞めたあと、ドラムの講師をしたり、とても優秀だっ

    • わたしが泣かなかった理由

       わたしは小さい頃から親元を離れるまで泣かない子どもだった。  同級生からいじめを受けて、いくら辛くても、わたしはさもなんでもないようなことのように、母には笑って話した。母は複雑そうな顔をしていた。  両親から暴力を振るわれることも結構な頻度であった。  当時、わたしは他人の心の機微に疎かったので、知らず知らずのうちに、気分を害するようなことを言っていたのだと、今になって思う。  対策としては、他人同士の会話をリスニングして、真似るようになった。  わたしはどんどん、無意識に

      • 愛情か、憎悪か

         わたしが、わたしを女だと意識したのはだいぶ遅かったように思う。  おしゃれ?メイク? はぁ?男に媚びてるの?  前の投稿で書いたが、当時、肥満で、お喋りもできなくて、自分の容姿に自信のなかったわたしは、そんな、ひん曲がった性格をしていた。  さて、わたしの過去の話になる。  わたしの生まれ育った実家は、いわゆる貧困家庭だった。  毎日、ご飯を食べるのがやっと。  そのくせ、母はいくらお金がなくても専業主婦を貫いた。  わたしはある程度勉強ができたので、もっと学びたくて

        • 愛の情、恋愛未満

           わたしと志田くんは大学で出会った。お互いのことを認識していたものの、出会ってすぐの頃、話すことはなかった。  だけど、ひょんなことをきっかけにわたしは志田くんの彼女になり、志田くんはわたしの彼氏になった。  最初は底抜けに明るくていつも男女を問わない友人達に囲まれていて、近寄りがたい存在だった。  でも、仲良くなるうちにどんどんわたしの手を引いて、行動的にも、気持ち的にも外に連れ出してくれる彼をわたしは好きになった。  一度だけ「わたしのどこが好きなの?」と、志田くんに聞い

        ナイショの話

          祈り。

           馬鹿みたいだけど、大ボリュームで君の名前を呼んだら振り返ってくれるような気がしたんだ。 「ねえ」と話しかければ、「なに?」と優しい目で問いかけるそんな君が好きだった。  わたしは君に恋をしていた。  そして、きっと君もわたしに恋をしていた。  馬鹿みたいだね。  そんなの永遠に続くはずなんてないのに。  君から、いつからか「仕事で遅くなる」という連絡が頻繁に届くようになった。  君から、いつからか甘いタバコの匂いがするようになった。  君から、いつからか温かい眼差しを送

          障がい者手帳を取得したことを両親に報告した。

           先々週、申請していた障がい者手帳が届いた。  等級は一級。  わたしは、発達障がい(自閉症スペクトラム、多動性注意欠陥障がい)がある。  主治医によると、症状が顕著にあらわれていて、症状は重めとのこと。  夫とは前々から、わたしの実家には障がい者手帳のことは知らせずにいようと話していた。  両親はわたしの障がいについて認めたくなかったからだ。  でも、わたしはなんとなくそのことが後ろめたくて、今日電話で報告した。  母は平然を装っていたつもりだったと思うけど、戸惑った雰囲

          障がい者手帳を取得したことを両親に報告した。

          望んだものこそ手に入らない。

           わたしは、小さい頃からとにかく不器用で無口な子どもだった。  肥満体型だったし、男子どころか、女子にも指をさされて笑われる始末。  同級生に一個上の学年の兄弟がいる子がいて、話したこともないはずなのに「お前、なんか喋ってみろよ」と絡まれたこともある。そのとき、わたしは意地でも一言も喋らなかった。その場から早く解放されたいのなら、なにか言えばいいのにそれでも一言も口にしなかった。無反応を貫いた。だって、その人たちの言うとおりになるのが嫌だったから。  大人になって、自然と痩

          望んだものこそ手に入らない。

          わがままな君には白いベールがよく似合う(8)完結

           後日、家に結婚式の招待状が家に届けられた。そこには結婚式の日取りと、短いメッセージが手書きで一言だけ添えられていた。私は迷わずに出席に丸をつけ、ポストへ投函した。この前のようにひどく動揺することはなかったものの、指先は軽く震えていた。スコンという、あまりにも淡白な音を立てて、招待状は私の手を離れた。  喪失感と、これから前に進んでいくのだという決意。私はこれから麻里奈の前に出ても恥じない人間になりたいと思った。だから、ダイエットだって、美容研究だって、仕事だって、なんでも完

          わがままな君には白いベールがよく似合う(8)完結

          わがままな君には白いベールがよく似合う(7)

          「麻里奈が結婚するらしいよ」  私は気持ちを落ち着けながら、智也にごく自然にそう話しかけた。 「麻里奈って、高校時代の話に出てくる、性格ブスな女?」  私は智也の安直な返しに思わず笑ってしまう。今日も彼は家に来ていた。 「そうそう」  でも、と思う。あの日、七恵と別れた後に傘も買わず、濡れながら家路に着いた。  私は麻里奈を思った。 ーー麻里奈。麻里奈。 「別れよっか」  私は気がついたらそう口走っていた。智也は意表を突かれた表情で私を見つめる。 「私、好きな人ができたの

          わがままな君には白いベールがよく似合う(7)

          わがままな君には白いベールがよく似合う(6)

           ーー麻里奈、と思う。  私にとって、彼女を思い出すときには決まって、痛みに近い嫉妬のような感情が湧き上がる。比べることはない、麻里奈と私は違う人間なのだから。そう自分に言い聞かせても、私は自分を宥めることができない。 「麻里奈の結婚相手ってどんな人なのかな?」  七恵が華奢なデザインの腕時計をチラリと見る。 「私もそこまでは聞いてないんだよね」 「そっか。連絡取ってなかったもんね」 「え?」  七恵の声が小さく跳ね返ってくる。 「私、結構連絡は来てた。会ったのは高校卒業し

          わがままな君には白いベールがよく似合う(6)

          わがままな君には白いベールがよく似合う(5)

           それからしばらくして、麻里奈が佐野さんの彼氏を取ったという噂が学内を占めた。私と七恵はその話を聞いたとき、思わず顔を見合わせた。麻里奈は当然のことながら、女子達の反感を買った。泣く佐野さんを慰めている様子の友人を見かけたこともある。私達は相変わらず行動を共にしていたが、不自然なことにもその話題について触れることはなかった。私も七恵も遠慮していたのだと思う。  それから、高校を卒業し麻里奈だけが地元を離れることになったため、私達は自然と会わなくなっていった。七恵は私と同じく地

          わがままな君には白いベールがよく似合う(5)

          わがままな君には白いベールがよく似合う(4)

           小、中、高校時代の友人である麻里奈は奔放な性格の持ち主だった。男友達が多い一方で、一部の女子達からは嫌悪されてもいた。麻里奈はいわゆる美人で、本人も無意識であったのだろうが、異性を誘うような仕草をすることが度々あった。小学生の頃から付き合いのある私からしたら、そのようなことは慣れっこであった。しかし、高校ともなればさすがに学内での麻里奈の立ち位置は危うくなり、私は数少ない友人として接していた。  そのとき出会ったのが、七恵だった。七恵とは高校からの付き合いではあったが、私と

          わがままな君には白いベールがよく似合う(4)

          わがままな君には白いベールがよく似合う(3)

          「経理部の杉本さんが結婚するらしいよ」  私は今日の帰り際に、聞いたままの言葉を智也に漏らす。麻里奈のことを引き合いに出すことは、私のなかのわずかなプライドが許さなかった。 「誰?」  智也は怪訝そうな顔で私を見る。彼は私の現在の恋人で、平日、休日問わずこうして私の部屋に定期的にやってくる。よく言えば、朗らか、悪く言えば軽率な雰囲気の持ち主だ。 「会社の子」  私はそれだけ言って智也を見つめる。付き合って二年。智也はどう思っているのかは分からないけれど、私は結婚を意識していた

          わがままな君には白いベールがよく似合う(3)

          わがままな君には白いベールがよく似合う(2)

           ランチを食べすぎたせいで、スーツのウエストの部分が少しだけ苦しい。昼休みのオフィスはよれたような雰囲気のなかでも、空気感が少しだけ弾んでいるようで、私はそれが嫌いではない。きっちりとしたタイムスケジュールのなか、私達は仕事をこなし、休憩時間になると束の間の休息を取り、そして、仕事が終われば各々の帰るべき場所へ帰って行く。社会人になって五年、二十七歳にもなると、この繰り返しにはとうに慣れが出てくる。 「経理部の杉本さん、結婚するんですって」 「そうなの? 仕事はどうするのかし

          わがままな君には白いベールがよく似合う(2)

          わがままな君には白いベールがよく似合う(1)

          「麻里奈、結婚するんだって」  その一言は、私の思考の一切の活動を停止させるには十分すぎる言葉だった。 「そうなの」  心臓は冷たい手で鷲掴みされたような心地がした。それでも、態度だけは平静を保ってはいられる自分が不思議だった。 「華子、結構仲良くしてたよね? もしかして、まだ聞いてなかった?」  それでも、目の前にいる友人、七恵は私の僅かな変化に気がついたらしく、気を遣ったように聞いてきた。 「そうだね、今聞いてびっくりした」  おどけたようにそう言うと、七恵は安堵したよう

          わがままな君には白いベールがよく似合う(1)

          休職1日目。

          休職1日目。  朝に土曜の受診結果を説明し、年明けまで休職したい旨を伝える。  診断書を早めに欲しいと言われ、病院に電話するが、次回受診しないと、出せないと言われ、パニックになり号泣。  泣きながら電話したら、めっちゃ心配される。申し訳ない。 休もうと思っても細切れにしか眠れない。 気晴らしに何かしようとしても、体が動かない。 誰かと繋がっていないと不安になる。 何もできないくせに職場に行きたくなる。 自分だけが世界から切り離されたような感覚。  職場では、今なんの時間

          休職1日目。