望んだものこそ手に入らない。

 わたしは、小さい頃からとにかく不器用で無口な子どもだった。
 肥満体型だったし、男子どころか、女子にも指をさされて笑われる始末。
 同級生に一個上の学年の兄弟がいる子がいて、話したこともないはずなのに「お前、なんか喋ってみろよ」と絡まれたこともある。そのとき、わたしは意地でも一言も喋らなかった。その場から早く解放されたいのなら、なにか言えばいいのにそれでも一言も口にしなかった。無反応を貫いた。だって、その人たちの言うとおりになるのが嫌だったから。

 大人になって、自然と痩せていった。
 わたしを好きだという男性も何人か現れたし、そういう時期になって男女の交流の場に行くと、不器用なわたしが傲慢な言い方だけど、1番ウケがよかった。
 なかには、わたしが行くなら来ると言っている男子がいるから、どうしても来て欲しいとそこまで親しくない女子に頼みこまれたこともある。

 でも、後で分かったというか、気づいたことなのだけれど、そのなかの女子チームのなかで裏で悪口を言われていたし、用がないときなどは、仲間はずれにされることも多々あった。

 ある日、1番親しくしていた女子に、お目当ての男子がいるからどうしても、わたしとLINEを交換して会う約束を取り付けて欲しいと言われたことがあった。SNSに一緒に写っていた写真を見て、その男子はわたしに好意を抱いたようだった。その子は、3人で遊ぼうと言った。
 何がしたいのか、正直よく分からなかった。結局、LINEは交換したものの、会う段階になって、わたしに急用ができてしまった。
 わたしは、2人で会えばいいと言った。だけど、その男子はわたしが来ないと、会わないという。
「〇〇ちゃん、その男子のこと好きなんでしょ?わたしは別に好きじゃない。だから、付き合ってみたらいいんじゃない?」
 わたしは、言い訳をすれば未熟がゆえにそんな発言をしてしまい、友人を1人なくしてしまった。
「わたしの大事な友達なのに、その扱いなに?自分のほうが選ぶ側だとでも思ってるの?」
 たしかに、そう思っていた節はあったかもしれない。とにかく、なにを言われたかは覚えていないけれど、その子は顔を真っ赤にして怒っていた記憶はある。
 わたしは、選ぶ側だとか、選ばれる側だとか、そんなことを意識したくない。
 だから、早々と結婚をした。

 でも、今思えば本当に軽率な発言をしてしまったと思っている。
 想い人を軽んじられ、挙げ句の果てにわたしは傲慢ともとらえられる言動をした。
 その頃のわたしにとって、相手の気持ちを慮ることは難しかった。
 でも、今になったら、その子が怒った理由が分かる気がする。

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