わがままな君には白いベールがよく似合う(8)完結

 後日、家に結婚式の招待状が家に届けられた。そこには結婚式の日取りと、短いメッセージが手書きで一言だけ添えられていた。私は迷わずに出席に丸をつけ、ポストへ投函した。この前のようにひどく動揺することはなかったものの、指先は軽く震えていた。スコンという、あまりにも淡白な音を立てて、招待状は私の手を離れた。
 喪失感と、これから前に進んでいくのだという決意。私はこれから麻里奈の前に出ても恥じない人間になりたいと思った。だから、ダイエットだって、美容研究だって、仕事だって、なんでも完璧にこなしてやるという気持ちでいっぱいだった。次に会うときまでに、少しでも理想の自分に近づけるように。そして、会うときは最高の笑顔で「おめでとう」と言おう。それが、今の私にできる最高のプレゼントになるはずだから。十年以上無意識のうちに続けてきた、麻里奈、と思う癖はいつになったら治るのかはわからないけれど、気長に待とうと思う。麻里奈のウエディングドレス姿を想像すると、少しだけ心の奥の方がちくりと痛んだ。だけど、この傷もいつかは癒えるのだろう。
 きっと生きるとは、そういうことだから。



 麻里奈の結婚式の日、梅雨だというのに、空模様は嫌になるくらいの晴天だった。
 ウエディングドレスを着た約十年前と何も変わらない麻里奈が、祝福されながら太陽の下で微笑む。私は心から綺麗だと思った。その光景を見られただけで友達でよかったと思った。

 この世界のなかで私は、麻里奈が好きだった。



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