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ホルモン煙越しの半袖二の腕。
久しぶりの神戸、三宮。
3月に県庁を退職してから初めての来訪だろうか。
1年も経っていないが、駅前は様変わりしていた。
これまで目印にしていた看板は消え、近道として通り抜けてきた路地は迷路への入口と化している。
家族のためにも自分のためにもフリーランスとして頑張ってみる、と小心者の私にしては大きな決断を下し、颯爽と県庁を後にしたのが3月。
その決断を正しいものにしてやると自宅へ帰る電車で心に誓ったものの、その数時間後にはギクシャクし、1、2日後には「離婚」の2文字を頂戴し、スムーズに今日まで地獄が続いている。
地獄の底から「おい、遊ぼうぜ」と声をかける気力もなく、悲愴感漂う自分に羞恥心もあったのか県庁時代の友人には連絡を取ることもしてこなかった。
連絡待っていたが、こねぇしよぅ・・・。
長らく続いた沈黙だったが、同期が県会議員になったというショッキングな便りによって遂に打ち破られた。
そこから連絡をくれた友人とスムーズに会う約束をし、神戸に集うこととなる。
同期県会議員、どのようなマニフェストを掲げているのかは知らぬが、とんでもない大役を果たした。県会議員に恩を感じたのは初めてのことだ。
今回集うのは、毎日のようにランチを共にした女友達「(仮)ワンコインパンプス」(こちらが県庁同期)と毎日のように電話するなど日々相手してもらっている男友達「(仮)名古屋常田」(こちらが大学サークル友達)だ。
本当に久しぶりの再会、かつ少し仕事が落ち着いたタイミングでもあったので、それならばと1泊2日の小旅行とした。
愛すべきサウナも楽しみたいと欲張り、サウナ施設内のカプセルホテルに宿泊することにした。
仕事を片付けて19時ごろ着の予定だったが、はやる気持ちを抑えきれず、また、必ず今やらなければいけない仕事がなかったため、思い切って早く出発し、サウナで整えてから集合することにする。
老舗で神戸おじさんの心をキャッチしているだけあって、風呂は気持ちよかった。ミネラルウォーターを使用した水風呂で締められた私は最高の気分で外に出る。
まず名古屋からやってきた「名古屋常田」と阪急三宮前のカップルの定番待ち合わせスポット、通称「パイ山」で合流する。ここも再開発によりパイは陥没し、もはや「パイ山」とは呼ばれていないのだろう。
示し合わせたように同系統のファッションに身を包み、脅威の加速度で私の足元まで迫る体重を獲得した「名古屋常田」。
合流後10秒も経たないうちに、思いがけず結成されたデブラザーズに混乱したのか、クリスマス前のカップルへのインタビューを目論んでいたNHKお姉さんが血迷って声をかけてきたが、何をきかれるのか怖くなり、丁重にお断りをし、元町方面へ歩を進めた。
なぜか一人神戸の土地勘がないのに店選びを任されてしまった「名古屋常田」によってチョイスされたおでん屋で「ワンコインパンプス」の到着を待つ。
約半年ぶりの居酒屋の空気に癒され始める。
1年近く会っていなかった「ワンコインパンプス」は相変わらず元気そうだった。
少しだけ、私の現状を話した後は、昔のように全く中身のない話をした。
間があいても、状況が今までとは違ってもすぐに昔に戻れる。それが心地よい。
飲み会の後、よく妻に何の話をしたのと尋ねられ、本当に中身がなさすぎて何の話をしたか覚えておらず、釈然としない答えをしては怒られていたものだ。
今もこんな話をした、と例を挙げて書きたいのだが、出てこない。
覚えているのは2軒目に訪れたホルモン焼きで、私の後ろに座っていた半袖大男が煙越しにせっせと内臓を七輪にくべる姿を見て「人がいっぱい食べる姿をこれからも見続けたい」と話したことくらいだ。
そうか、この姿を見たいから私は飲食店をやりたいと思っているのかもしれない。
こんな刹那的な会話、中身のない会話を繰り返しながら、しっかりと心は充電されていった。
その後、私の行きつけだったJazz Barに向かう。
一杯飲んだところで、オーディオから流れる音楽がJazzからフュージョンに変わった。
あれが「うちはもうJazz Barではない」という無言の小洒落た閉店の合図だったのかもしれない。
鈍い私たちはそれに気づかず滞在を続け、その後しっかりと「もう閉めていいですか」とストレートに言われ、解散する。
良い夜だった。
2日目も食べ飲み、買い物をした。また気分になれば綴ってみることにしよう。
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