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【自由律俳句・焼きそば】今日だけは車止めに座る浴衣女子

密閉性低い容器が今日は嬉しい

夏祭り。あのプラスチック容器にパンパンに入れられた焼きそばが恋しい。
あの容器、他にはいつ使うだろうか。スーパーの天ぷらをセルフで取る時だろうか。そういう時、できればしっかり閉じたいと願う。
でも祭りの焼きそばは、しっかり蓋が閉じないくらいが嬉しい。

甘ソース辛ソース交互にかけようよ

お好み屋に行くと、甘いソースと辛いソースが並んでいることが多い。
すでにノーマルソースを塗って提供され、「お好みでどうぞ」と声をかけられる。
私はほぼ卓上調味料コンプリートの勢いでちょこちょこかけがちだが、何もかけず最後まで突っ走る人がいる。個人の自由ではあるが、色々楽しもうぜと軽やかに誘いたい。もしかしたら激うまの可能性を捨てるのは惜しい。

踊りを封じられた鰹節祭りだ許せ

焼きそばはやっぱり祭りイメージになってしまう。
ふわっとかけられた鰹節もあのプラスチック容器で蓋をされると身動きが取れない。祭りだから踊りたいのに踊れない。でも私からすれば、あの蓋に張り付いた鰹節こそ祭りの象徴である。だから踊らないでくれ。

片手で持ちたいがたわみに怯む

あのプラスチック容器の強度は絶妙である。
片手で持つと持った部分と逆側が焼きそば重でたわみ、隙間が開き、中身が落下してしまうのではないかというささやかな不安に苛まれる。
不安だけど、しっかりたわむくらい入れては欲しい。だから私は、購入した屋台から少し離れてから恐る恐る片手に持ち替え、たわみ具合をチェックするのだ。

今日だけは車止めに座る浴衣女子

綺麗な浴衣を着た女子が、あろうことか車止めに座っている。
一瞬いやいやそれええのかと思いつつ、祭りの空気に飲まれて開放的になっているのかと思うと微笑ましい。ただ足が疲れ果てただけかもしれないが、それもまたなんだか良い。「やだ、こんなとこ座れない」とお高く止まる女子より、「はー疲れた、あそこ空いてる!」と小走りで車止めを確保して、焼きそばをすする女子を好きでいたい。

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