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ネットで情報をカナタが集めていると、大島弓子というマンガ家が描いた『バナナブレッドのプデ…
男は若いのにウンチクばかりだった。いちばん得意なのはアメリカの昔の映画の話で、なんといっ…
迷彩のオーバーオールで先輩がその本屋の入り口に現れ、それから1時間先輩のパリの話を聞き続…
※※※ アキラは自転車を押した。家には帰りたくなかった。姉にも母にも父にも会いたくなか…
カナタが初めてブランコに乗ったのは3才の頃だったかしら、とアキラは思い出してみた。はしゃ…
不感症という言葉はアキラにプレッシャーを与えた。セックスに関するあらゆる言葉が、彼女には…
母のアキラと違って走るのが苦手だったカナタだが、50メートル走のスタートは好きだった。体育の先生は火薬臭い鉄砲を耳にくっつけて持ち上げ、片目を閉じていつも引き金をひいた。 カナタは両方の手と指を地面につけ、左足を前に、右足を後ろにして構えた。音楽も聴いていないのに、周辺はイヤホンで音が閉ざされたような空間になり、カナタは目を瞑りそうになる。 先生の指の先まで想像できる、その1秒の間に、その折れ曲がり力の入った指が動き、人差し指の腹に汗がにじみ、すべりおちそうな感じで引き金
※※※ アキラは娘のカナタに、これまで2回自分の絵を描いてもらった。一度はカナタが6才の…
※※※ 14才の頃は、友だちのことを疑ってばかりだった。その疑いは結局、いつも自分に返送さ…
アキラは80才になっても自転車に乗った。そして、近所の公園に行って健康体操をした。 そんな…
アキラはカナタを産んだ時、その初めての泣き声が、それまでのアキラの人生のすべてを許したよ…
42才のアキラは、どの地点が自分の西暦ゼロ年だったのだろうとよく思う。やはり、娘を産んだ14…
カナタが先輩から聞いた言葉で今でも覚えているのは、「めんどくさいことにみんなは反発せず、…
永遠はやはり、ない。ということは母のアキラから時々聞かされていたものの、19才になったカナタはたいへん残念だった。母のアキラは酒はあまり飲まなかったが、父がいない時、こっそり飲んだ。その時アキラは時々こう言った。 「小5の時、あのキャンプ場に行った時、カナタにはあの星座の三連星が見えたんだっけ?」 母は片手でワイングラスを持ちながら、いつもあまり動かずにテレビを見ていた。 その三連星は覚えていたものの、その真中にあるらしい星雲はどれだけ目を細めても見えなかった。だからカ