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旅と写真が好きな私が選ぶ、ロードムービー9選+1

旅と写真・・どちらも昔から好きだったけれど、旅行は旅行、映画は映画と別個に考えており長らく結びつけてはいなかった。
そりゃそうかという気もするが、事前にチェックして積極的に見に行く映画のジャンルの比率がロードムービーだけ異様に高いと気づいた時には、私って思ってたより単純、と拍子抜けしたほどだ。
というか、どこまで旅が好きなんだ私。

もちろんロードームービー以外にも好きな映画はたくさんありますが、今日は自称旅写真家の私が好きなロードムービーをもちろん独断で(じゃなかったら一体何)、選出してみました。
★の数が映画としての評価でもあります



★★★人生の転機編★★★

旅じゃなくてもいいんだけど、旅の中だからこそ向き合えることがある。旅の中で大事なことに気づき、旅のおかげで人生が別の方向に動き出すこともある。そんなスペシャルな旅の醍醐味を、映画らしいストーリーで楽しめる大好きな作品3選。

はじまりへの旅
原題:Captain Fantastic
2016 アメリカ

大大大好きな映画。
森の中で6人の子供を一人でホームスクーリングしている父親。その内容は自給自足はもちろん、狩猟、ロッククライミング、音楽、語学、哲学、とスパルタの超英才教育で、子供たちは全てにおいて高いスキルを持っている。仲良し姉妹が秘密の話を他の家族に分からないようエスペラント語で話す場面も。
しかしある時、とある理由で森を出て、家族で2400kmの旅をすることになる。移動手段は「スティーブ」と名付けられたバス。家族の合言葉は、”Power to the people, Stick it to the man(人民に力を、権力にノーを)”

ちょうど親になって数ヶ月目に見た映画でもあり、ロードムービーという枠を超えて、親が子どもにできることは何なのか、どんな価値観でどのように生きるのが幸せなのか、答えではなく問いかけとしてふかーーーく心に染みた映画でした。
映像も美しく、ラストも最高。


レインマン
原題: Rain Man
1988 アメリカ

言わずと知れたアカデミー賞作品。
お金に困っていた主人公(若かりしトム・クルーズ)が父親の訃報を受けて遺産目当てで故郷に戻るも、全然知らなかったが実は自分には自閉症の兄がいて、しかもその兄が遺産を相続することが決まっていると聞き激おこ。
衝動的にその兄を施設から半ば誘拐のように連れ出してしまう。

こちらも古いアメ車で(憧れの)ルート66を長距離移動。
飛行機だと3時間のところを3日ほどかけて移動しているので移動距離は2000kmくらいか。

旅の途中、ふとしたきっかけでタイトルが回収されるのだけど、その脚本はいつ思い出しても秀逸で心が熱くなる。
今初めて見た人は、ふっる!!トムクルーズわっか!とか思うのかな。それも含めてやっぱり不朽の名作だと思います。


リトル・ミス・サンシャイン
原題:Little Miss Sunshine
2006 アメリカ

やっぱりこれは入れてしまう・・!
さえない家族が9歳の娘(ぽっちゃりメガネちゃん)の夢を叶えるために、美少女コンテストの会場までボロボロのバスで向かう、という話。

今でこそ同じような雰囲気の映画は結構あると思うのだけど、地味で情けない人たちにスポットを当てつつ軽快でおしゃれに仕上げる、という手法が当時斬新に感じた。
誓いのために口を聞かないお兄ちゃんのもっさりしたビジュアルは、アメリカにもこういう人がいるんだ・・と感慨深さもあった(まあそりゃあいるだろうけど)

黄色いワーゲンバスに家族が走って乗り込んでいるビジュアルイメージは映画を見たことなくても知っている方も多いのでは。
途中車が壊れたりなんなりでまさにこれぞロードムービー。移動距離は800マイル(約1287km)。

で、やっぱり元祖というか、ストーリーもしっかりしていて、「っぽさ」だけではない、はちゃめちゃだけどじんわりいい話なんですよ。
いつか同じ構図でワーゲンバスに乗り込む写真を家族で撮影するのが、ミーハーながら密かな夢。


★★旅路を楽しむ編★★

旅から戻って過ごす日常は、旅の前と大きな変化がないことも多い。
だけど初めて見た景色、出会った人との交流、小さなトラブル、その時はさっと通り過ぎていったなにげない一瞬が数年経っても、記憶の中でキラキラ輝き続けたりする。
そんな旅のリアリティを感じる、地味だけどしみじみと良い作品3選。

サン・ジャックへの道
原題:Saint Jacques... La Mecque
2005 フランス

遺産相続の条件のためにフランスからスペインへの巡礼路を歩く羽目になった仲の悪い兄弟と、同じツアーの一行の物語。
淡々とした中にユーモアや美しい景色、ややファンタジックな心理描写などが入り、きれいにまとまっている。
こちらは徒歩で移動距離1500km。ひえー

国立民族博物館で開催されていた「聖地・巡礼-自分探しの旅へ-」という企画展を過去にたまたま見たことがあり、このルートの巡礼について少し知っていたのでそれもあって楽しめた。
静かな中に高揚感を感じるラストも好き。


おじいちゃんの里帰り
原題:Almanya - Willkommen in Deutschlan
2011 ドイツ

かつてトルコからドイツに移住し、50年間ドイツで暮らしてきた主役のフセインおじいちゃんは今やドイツ生まれの孫までいるのだが、ある日故郷のトルコに家を買ったので家族全員で行こうと言い出して・・という話。

「リトル・ミス・サンシャイン」と似てるのかなと思いきや全然違う雰囲気で、アグレッシブさなはなく、淡く優しく、細やかなリアリティがあった。
移民についても重すぎずフェアな視点で描かれ、異文化交流についてもユーモアを交えて微笑ましく描かれている。

トルコに着いてからの田舎の風景も美しく、トルコに旅行したことのある人には特におすすめ。トルコの挨拶「ギュレギュレー」も懐かしい。
こちらも黄色いバスで陸路移動。移動距離の詳細は不明ですがドイツートルコ間は陸路で約3000kmのようです。


菊次郎の夏
1999 日本

北野武監督作品。あの有名なメロディ・・タタタタ タンタターン、の菊次郎の夏。
小学生の男の子が会ったことないお母さんに会いに行くのだが、なぜか近所のよくわからないおじさんと一緒に行くことに。

夏になるとこの映画の何気ないワンシーン(棒立ちする井出らっきょとか)が頭をよぎって、まるで自分の子供時代の思い出のように思えてくるのが不思議。
口は悪いがシャイで心は温かい、北野武の粋なダンディズムを感じる良作。
移動距離は東京から豊橋なのでだいたい280kmくらいかな。


★ビジュアル重視編★

異国情緒、解放感、ワクワク感、旅はいつだって美しい。ここではないどこかに出かけたくなる、視覚的に好きな作品3選。

LIFE!
原題:THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY
2014 アメリカ

雑誌「LIFE」の廃刊前、最後の表紙のネガが行方不明に。写真管理部の主人公はネガを探しに壮大な旅に出る。空想と現実が行き来するファンタジー冒険物語。
アイスランドの大自然の中を主人公がシューーーンとスケードボードで滑る場面はそれだけで一見の価値あり。
飛行機も使うので移動距離はありすぎて不明。


ダージリン急行
原題:The Darjeeling Limited
2007 アメリカ

いい歳としてへっぽこな疎遠の男三兄弟が、家族の再生のためにインドにて集合。
ウェス・アンダーソン監督作品の中では正直内容は幼稚で駄作気味。それでもインドの長距離列車にスポットを当てるセンスはさすが。映像も鮮やかで全てがおしゃれ。

いかにも実在してそうなネーミングだが、インドに「ダージリン急行」という長距離列車は実在しない。
実際にはダージリンを走る「トイトレイン」というかわいい山岳列車と、それとは別にインドを横断する長距離寝台列車は存在していて、「ダージリン急行」はこの二つをミックスして着想したのではないかなと予想。
ちなみに私はダージリンのトイトレインも、インド東西を横断する長距離列車も乗ったことあり!ふふ。
移動距離は1000kmくらいかな。


マイ・ブルーベリー・ナイツ
原題:My Blueberry Nights
2007香港・フランス合作

歌手のノラ・ジョーンズが主演。失恋した女の子がやけっぱちでニューヨークから当てのない旅に出発。

こちらもはっきりいって大した内容ではないが、途中ゆきずりで知り合ったナタリー・ポートマン扮する不良娘が出ているところだけパーンと大輪の花が咲いたごとく画面が華やぎ、二人が晴天の下広い一本道を車を走らせている映像は今でも記憶に残っている好きな一場面。
移動距離は5,603マイル(約9017km)らしい。失恋パワーすごい。


☆☆☆番外編☆☆☆

ギルバート・グレイプ
原題:What's Eating Gilbert Grape
1993アメリカ

ロードムービーとは正反対の内容だけど人生ベスト1かもしれない、本当に好きな1作。
一人で家族を支えながら田舎町で毎日変わらない日々を送る主人公ギルバート(ジョニー・デップ)は24年間一度も町を出たことがない。
出て行きたくても出ていけない、離れたくても離れられない、そんな倦んだ日々の中、ギルバートは母とトレーラーハウスで放浪を続ける女性に出会う。

好きすぎて無理やりねじ込んだ感もあるが、この映画を見ると、なぜ人は旅に憧れるのか、なぜ自分はこんなに旅が好きなのか、なぜすぐここではないどこかに行きたくなってしまうのか、逆説的な形で旅への憧憬を突きつけられているような気持ちになる。
こんな映画ってなかなか他にない。それを確信させるラストが素晴らしい。
移動距離0km。


他にも迷った作品が何作かあったのだけど、鮮明に旅の映像が浮かぶものを選んでみました。
これからも素敵なロードムービーに出会えますように。

All Photography by 田中閑香

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