マガジンのカバー画像

『座敷牢の妖』

2
武士たる私と座敷牢の妖(あやかし)と呼ばれる童女。そして人食い屋敷と呼ばれるその屋敷。何故人を食らうのか。ファンタジー時代劇。ここにて開幕。そして私は幾多の夜を妖と共に越えるのだ。
運営しているクリエイター

記事一覧

第2夜  心の鬼が身を責める

第2夜 心の鬼が身を責める

朝日が登りまた沈む。
町行く景色はいつもと同じ
されど私の思いは何処か、ふわりと浮かんで沈みゆく。
散々光る空の下、どこか私は上の空。
因果のそれは、至極に当然。
座敷に住まう妖(あやかし)に、問われた事が因であり、今の私が果であるか。
されど私は武士故に、今日も勤めに胸を張り、風を切っては屋敷に向かう。

座敷の牢の灯りをつけて、今日も変わらず妖の、面と向かって刀を握る。
牢の灯りに照らされた、

もっとみる
第1夜 武士は食わねど高楊枝

第1夜 武士は食わねど高楊枝

この世のそれは移って変わる。
人から武士へ、武士から人へ。
腰の刀も今際は飾り、血で血で洗う戦など、浮世のどこにもありはせぬ。

日銭が尽きれば半端な仕事。
食うに困って町行くも、武士は食わねど高楊枝。
されど食わねば腹も減る。
腹を抑えて町行けば、大きな屋敷に辿り着く。
ここから私の新たな仕事。
なぁに特に難しくはなし、
屋敷の奥の暗闇の、座敷の牢に居座る者を、逃げ出さぬよう守るだけ。
何とも何

もっとみる