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世界初!! Tシャツのアップサイクルで参加型プラットフォームを創る『WAcKA』代表“梶原 誠”さん

共感と環境循環の輪を繋げ、未来に繋ぐ『WAcKA』代表 梶原 誠さんにお話しを伺いました。

プロフィール
出身地 大阪府
活動地域 千葉県 
現在の職業及び活動経歴
アップサイクル社会起業家
後進国での駐在を経験し、現在は繊維アップサイクルを通して
環境と福祉分野において社会貢献活動を行っています。
環境省主催第5回グットライフアワード 環境と福祉賞受賞
2018千葉ビジコン 協賛企業賞受賞

『アップサイクル』とは何か?

記者:現在どのような活動をしていますか?
梶原 誠さん(以下、梶原 敬称略):私がやっている活動を一言でお伝すると、『アップサイクル』というキーワードでやっています。アップサイクルは、一度世の中で価値がなくなったものに、新しい魂を吹き込んで、元の価値より高めて作り変えることです。

日本ではリサイクルという言葉が使われることが多いのですが、欧米ではアップサイクルという言葉が、一つのWordとして成立しているんですね。新しい物をどんどん使っていくのではなくて、今ある資源を有効活用しようとするエコ活動の一環です。私は、その中でも衣料品に特化して活動しています。

記者:衣料品に特化したアップサイクルの活動とは、何ですか?
梶原:
廃棄される衣料品を回収して、アップサイクルしたもので人々を巻き込んでいく参加型のプラットフォームをつくる活動をしています。具体的には、廃棄されたTシャツから編み物用の手芸糸を作ります。その手芸糸をご提供して、編み物を楽しんでいただくことで、ゴミの削減に参加してもらう参加型のプラットフォームをつくっています。みんなで協力して環境貢献に取り組むプログラムですね!

記者:どのような活動方針をもって、活動していますか?
梶原:
アップサイクルは、新しいエネルギー、新しい資源を使わないということをポリシーにしています。電力も極力を使わないで、手作業でやっています。手作業を増やしたことで生まれた産物として、障がい者雇用支援があります。自分がやったことが形になり、色合いも派手なものが多くて、楽しんでいただけることが多いですね。私が車で行くと、皆さん積極的に寄ってきて、楽しみにしてくださっています。

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梶原:これは、Tシャツ8枚分を使用しています。この色は、元々のTシャツの色ですね。染めることもできるんです。
記者:これ、Tシャツとは思えないですね!
梶原:「Tシャツとは思えない!」というのがアップサイクルの醍醐味です。元の形が、想像できない新しい価値に変わっているという事なんですね。

記者:Tシャツから作るのは、梶原さんだけなんですか?
梶原:ヨーロッパではアップサイクルが進んでいて、ビジネスモデルは学びました。Tシャツから手芸糸にアップサイクルしているのは、日本ではもちろん、世界でも私だけなんです。

バングラディッシュ駐在が、人生を変える

記者:今の活動を始めたきっかけは、何ですか?
梶原:
私は、20年近く衣料品を作る仕事、主にセーターやTシャツを作る仕事をしていました。日本では、営業や販売を中心にして働いていて、その時は安くたくさん売れば良いという発想でいました。次に、衣料品を作る立場に異動してからは、今度は1円でも安く作らなければならないという発想になりました。それから、ベトナムやバングラディッシュにも行き、現地の駐在員として働くようになりました。海外で働くうちに次第にやっていることに対して違和感をもつようになりました。

私は、2012年からバングラディシュに行くようになりました。2013年4月には、「ラナ・プラザ事件」というバングラディッシュの縫製工場が入った商業ビルが崩落し、1000人以上が死亡するという事故がありました。戦争でもテロでもなく、人との命が奪われたことに衝撃を受けたんですね。自分も、安い服を買っている日本人も、それに間接的に加担していると考えると、この環境を絶対に良くしないといけないと考えるようになりました。

記者:バングラディッシュでは、どのような発見や出会いがあったのですか?
梶原:
物づくりをしていると、どうしても大量の化学物質を使うことがあります。安く作ろうとすると、その化学物質をそのまま川に流そうとしている企業も多いんですね。まだバングラディッシュですと、洗濯、歯磨き、食事など生活のことを川でやっている人が多いので、環境を悪化させるだけでなく、人の人体にも影響を及ぼしてしまいます。現地に行ってみて、自分がやっていることが環境にも人体にも加担するのは嫌だと思いつつも、家族のこともあるし、会社の成績も上げたいし・・と4年くらい悶々としていました。

2016年7月1日、バングラディッシュの首都ダッカに住んでいた時に、テロが発生しました。日本人も巻き添えになるような大きなテロでした。テロをきっかけに、日本に帰国することになりました。日本に帰国した時に、“バングラディッシュの現場で見たことを日本に伝えないといけない”と強い使命感にかられました。帰国後すぐに会社も退職しました。

12年くらい勤めた大好きな会社で、経営者の方も尊敬していて、定年まで働きたいと思っていた会社でした。でも、バンングラデッシュに行ったことをきっかけに、“このことは皆に知ってもらわないといけない!”と使命感から退職することに決めたんです。

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お金、物を得た先に気づいたこと

記者:その発見や出会いの背景には、何があったのですか?
梶原:
私が人生の中で大切にしているものは、年代によって全然違うんですね。世代ごとにキーワードで表現すると、20代はお金、30代は物でした。今、40代になりましたが、40代は『人』ですね。30代までは、物欲しかなかったですね。あれが欲しい、これが欲しい、これを買うためにどうするのか、エゴでしかなかったですね。得たいお金を得たし、欲しい物も得た。けれど、自分の周りに人がいない。次第に人が離れていくことに気づきました。

中でも、一番離れていったのは家族でした。仕事をやってお金を稼ごうと、ずっと仕事のことばかりやっていると、家族のことが疎かになっていく。家族は失ってはいないですが、お金や物を得た結果、人が離れていくことに気づきましたし、バランスを上手くとっていくことの大切さにも気づきました。

社会問題の事実を伝えていくこと

記者:どのような夢をお持ちですか?
梶原:
社会問題について知らない人が多いと思います。社会問題を知ってもらう機会をつくることが夢です。例えば、衣料品は年間で40億着供給されているのですが、そのうち10億着以上は新品のまま廃棄されています。店頭にも並ばずに、誰にも着られることなく捨てられています。ほとんどの人は、その事実を知らないですよね。

日本は、一人当たりの排気量に伴う二酸化炭素の排出量が、世界一で、世界平均の約5倍です。これだけ環境汚染に影響を与えているんです。そのことを知ってもらいたいですね。私は長年繊維業の仕事をしてきました。悪いことをしてきたつもりはないのですが、生み出した副産物を残りの人生で回収していきたいと考えています。

また、3世代どの世代も活躍できる場をつくりたいという夢もあります。私は関西出身で、関東に来た際に人間関係が希薄でとても驚きました。今中学3年生の娘がいて、喧嘩もしますが仲良しなんです。娘の友達とも仲が良くて、よく話をするのですが、どうやら親や教師とも話さないと聞いて、とても悲しくなったったんですね。だから、どの世代も交流し、活躍できるような場をつくろうと思いました。


記者:夢を具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?
梶原:
今は、編み物のワークシップで、社会問題についての話をしています。編み物を通して参加した方たちも、知らなかった事実を知ってライフスタイルを見直してみようとか、前向きな感想を聞くことが多いです。

また、シニアの方にも編み物を教えていただいています。教える側になることで、頼られて、元気になっていく姿をよく見ています。親子で参加する際に、少しずつ関係性が良くなっていくこともありましたし、子育て世代もストレス発散になっているようです。嬉しいですね。

記者:最後に読者の方にメッセージをお願いします。
梶原:私自身がやっていることは、小さなことかもしれません。でも、ガンジーも言っていますが、「大きな力より、小さくても多くの力」が世の中を変えると思っています。だから、行動し続けることに意味があると思っています。あなたが行動したことで、また他の誰かに気づきを与え、また小さな力が一つ生まれるはずです。だから、これから何か始めようとする人も、行動することに意味があると思って、何事にも取り組んでいって欲しいです。


梶原さん、今日は本当にありがとうございました。
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編集後記
気さくにお話していただき、終始楽しいインタビューとなりました。実際に日本の外に出て感じた環境問題への危機感や切迫感は、たいへん伝わってくるものが大きく、考えさせられることばかりでした。また、梶原さんが人とのご縁を大切にしていたり、色々な人達と共に吸収しあったりする姿勢は、本来の日本人の在り方のようにも感じ、心が温まりました。今後も、梶原さんのご活動を応援しています。ありがとうございました。

この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。