普通の会社員がフリーランスで稼ぐ

普通の会社員がフリーランスで稼ぐ #全文公開_3 フリーランスは「特別な生き方」じゃない!

【Episode1】第二子誕生を機にフリーランスの人事アドバイザーに

「毎日睡眠時間4時間の生活は体力的にもう限界でした」
――そう振り返る斉藤博美さん(41歳)。
 斉藤さんが働き方を変える決断をしたのは、第二子の誕生とオフィスの移転がきっかけだった。

 新卒で老舗の食品メーカーに総合職として入社。そのまま総務部に配属された。
「入社してすぐの頃は、給与事務や昇進昇格に伴う様々な事務仕事に携わりました。一時期、役員秘書を担当していたこともあります。そのうち、新入社員の教育や研修の仕事を任されるようになって・・・これが今のキャリアにつながるきっかけになりました」

ビジネスマナー研修や営業スキルアップ研修の企画や全体のプログラム設計、講師のアレンジなどを担当。配属先の職場で実践を交えながらの新入社員教育プログラムの立ち上げなどにも携わった。
 「ちょうど社内的にも教育研修に力を入れようという機運が盛り上がっていて、若手の私にも仕事を任せてもらえた。非常にやりがいを感じました」

 ところが入社5年目27歳のときに転職を決意する。
「女性の総合職は実は私が社内で初めて。結婚、出産はしたかったのですが、正直言ってそのまま勤め続けたとしても全く自分のキャリアプランが描けなくて・・・周囲では〝転職は30歳が限界゛などと言われていたこともあり、このタイミングで転職しました」

 転職先は外資系医療機器メーカーの人事部だった。
「人と関わる人事の仕事に魅力を感じていました。できれば人事のキャリアを深めたくて転職先を見つけました。外資系のメーカーなら子育てと仕事の両立もしやすそうだと思ったのも決め手の一つでした」
 それからは新卒および中途社員の採用、人事制度の運用、給与計算など幅広く人事領域の仕事全般を経験してきた。
 30歳で結婚。この結婚も転機の一つではあった。
 「夫の仕事の関係で、東京の近郊に住まなければならなくて、通勤に1時間半近くかけざるをえなかったんです。子どもがいないときは、なんとかなりましたが、生まれてからは時間のやりくりが本当に大変でした」

 斉藤さん夫妻は夫婦ともに地方都市の出身。子育てに実家の力を借りることはまず難しかった。それでも、子どもを保育園に入れ、一時預かりなどを活用してなんとか乗り切った。
 第一子出産後の3年後に第二子を妊娠、出産。
「第二子出産後に一度は職場復帰したんです。ところが、子どもが一人のときと二人のときでは、かかる手間が全く違う。ちょうど仕事の上でも責任が増す時期で、仕事を自宅に持ち帰るなどして、業務に支障が出ないようにしていましたが、毎日睡眠時間は4時間くらい。体力的に限界でした」
 そんな中、オフィスの移転が決まり、通勤時間がさらに30分延びることに・・・。
 「もう続けるのは絶対に無理。会社を辞めることを決意しました」

 斉藤さんが次に選んだのは、フリーランスの人事アドバイザーとして活動することだった。今は3社ほどのクライアントを持ち、採用や制度設計の仕事に携わっている。
 「関わり方の度合いはクライアントによってそれぞれです。採用の面接業務だけを担当する場合もありますし、人事のデータベース導入のお手伝いをしたり、人事制度の刷新や構築の仕事を請け負ったりする場合もあります。働き方もいろいろで、ほとんど在宅で行う場合もありますし、半分クライアント先に常駐するような場合もありますね」

 日々、慌ただしいが、不思議と時間に追われる感覚がなくなった、と話す斉藤さん。
「働く時間と場所が自由になるのがフリーランスの最大の魅力。子どもと過ごせる時間が増えたのが何よりうれしい。今の私にはこの働き方が一番合っていると思っています」

(※文中は仮名です)

「フリーランスで生きる」ことは「特別なこと」ではなくなった

みなさんは「フリーランス」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?

 「自由な働き方」「楽しそう」「かっこいい 」
――こんなポジティブなイメージを思い浮かべるでしょうか?
 「大変そう」「報酬が安そう」「不安定」
――それともこんなネガティブなイメージを思い浮かべますか?
 
「フリーランスになってみたいですか?」――こんなふうにたずねると、多くの方が「興味はあるけれど、自分には無理」といった反応をされます。
 
 まだまだ「フリーランス」と聞くと、「特別な人の特別な生き方」という意識を持たれる方が多いようです。しかし、「フリーランスで生きる」ことは決して「特別なこと」ではなくなりつつあります。

 日本におけるフリーランスは着実に増えつつあります。
 たとえば国内最大級のクラウドソーシングサイト「ランサーズ」には約37万人のフリーランスが登録し、企業から仕事を請け負う仕組みが出来上がっています。
 同社によれば、2008年の創業以降、企業側からの依頼総額は319億円にも達すると言います。そして利用者、依頼総額ともに右肩上がりで伸びつつあるのです。(2014年8月現在)
 同社に限らず、こうしたインターネットを介してフリーランスが仕事を請け負う「クラウドソーシング」の会社は増えつつあり、今年5月には業界団体「クラウドソーシング協会」も設立されています。
 数年前からカフェやシェアスペースなどでノートパソコンを使って仕事をする人のことを「ノマドワーカー」などと呼ぶのを耳にするようになりましたが、こうした言葉がなじみのあるものになったことも、フリーランスで働く人の増加と大きく関係していることは想像に難くありません。

 そして「フリーランスで生きる」ことが選択肢の一つになるにつれ、その種類も多様になりつつあるように感じます。
 たとえば、私は大学卒業後、出版社に入社し11年ほど勤務しましたが、出版の世界は「フリーランス」が珍しくない業界です。ライター、エディター、カメラマン、ヘアメイク、スタイリスト・・・フリーランスの人材なくしては業務が立ち行かない。それほど一般的ですし、私にとっても、「フリーランスになる」ことはそれほど特別な選択肢ではありませんでした。
 同様にIT業界でもフリーランスはそれほど珍しくありません。エンジニアやプログラマーなどある程度、企業で経験を積んだ後にフリーランスとしてシステム開発に携わることは一つのキャリアの形として認知されています。
 前述のインターネットを介してフリーランスが企業から仕事を請け負う「クラウドソーシング」の仕組みもライター・デザイナーなどのクリエイター系の仕事か、エンジニア・プログラマーなどのIT系の仕事が主流です。

 しかし、近年の傾向としてこうしたクリエイターやエンジニア以外の文系総合職、いわゆる「普通の会社員的職種」がフリーランスとして独立・活躍する素地が整いつつあります。
 その素地のひとつには、企業が人材に求めるニーズも多様化していることがあります。新規事業や新しい部署の立ち上げをしたいが、社内にノウハウを持った人材がいない。そんなとき、軌道に乗るまでの期間限定でノウハウのあるフリーランスを活用したい中小・ベンチャー企業はたくさんあります。また、業務が忙しい期間や、急な休職者や退職者が出た場合の補てん人材として働いてもらうことができます。これら文系フリーランスが求められる背景については、第2章で詳しく述べていきます。
 私はこうしたフリーランスの文系総合職の方たちと企業をマッチングする仕事をしていますが、想像以上に反響が大きく、特に2013年の後半から新聞や雑誌など多くのメディアから取材を受けています。
 フリーランスの働き方に関心が高まり、これから文系総合職にとっても「フリーランスとして生きる」ことが人生の選択肢のひとつとなっていくであろう手ごたえを感じています。文系総合職にとっても「フリーランスとして生きる」ことは「特別なこと」ではなくなりつつあるのです。

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