冬と孤独をファミレスで
10代後半から20代後半まで
私はかなり孤独でした
「絶望が足りなくて死ねない」
と、毎日思っていました。
部屋に一人ぼっちがつまらなくて
ウォークマンで
椎名林檎さんの「正しい街」を聴きながら
夜な夜なファミリーレストランへ行っては
人間観察をしたり
スケッチブックとペンを持って行ったりして
絵を描いたり
今感じている事を書いたりして
時間をやり過ごしていました。
しかしその時は「寂しい」や「孤独」を
しっかりと認識していませんでした
寒い冬に好きな色のオーバーコートを着て
自転車で幹線道路を走り抜けたり
温かいコーヒーの
温度や苦みを幸せに感じたり
夜な夜な出かける事は
窓を開けるような開放感がありました。
あの頃感じていた孤独を
私は今、感じることが無くなりました。
常に自分以外のことを考えるような
社会的な立場を求められるようになって
それを演じられているからかもしれません
でも忙しない今を生きていると
この孤独感や寂しさが
冷たい風を切って
お気に入りのオーバーコートで走り抜けた
あの幹線道路が
夜の中、無条件に温かさを感じる
あのファミリーレストランで
ぽっかり空いたブラックホールに
コーヒーを注ぐような
あの絶望的な孤独感が
突然に愛おしく感じるのです
あの頃のような研ぎ澄まされた感覚が
少し遠のいてきたのは
歳なりの思考停止が
すこし上手になってしまったから
なのかもしれません。
そういう事を最近
とても寂しく感じます
持っていられるものは
年々変わってくるけれど
たまに記憶の箱を開けてみるのも
自分への愛を感じる瞬間かと思います
あの頃ウォークマンで聴いていた曲が
テレビから流れてきて思い出して
私はまた生きる事を選べるなと思いました。