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村上春樹「1Q84 Book1」読書感想文

初めての村上春樹となる。
読む前だけど、すでに感想は決めている。

おもしろかった・・・では、ちょっと浅すぎる。
深い世界観に圧倒された、あたりか。
ハルキ・ムラカミのメッセージを感じた、でもいい。

もし、それ以上に詳しく訊かれたら『読まなければわからない』と言い放てばいい。
おもむろに。
あとは、読んだという実績をつくるだけだ。

というよりも、誰に?
誰に対して?

ああ、恐れているんだ。
だって、村上春樹でおもしろくないと感じたものなら、やっぱり自分は無学無知無能だと、だから受刑者になってんだと、頭を抱えてしまう。

でも、最低限として、挫折だけは回避したい。
なんせ、全3巻ある。

ああ、恐れているんだ。
もう1人の自分に。
いかん!
自分の読書をするんだ!

・・・ と、読書録の行間にありますが、冷静になって読み返すと、もう1人の自分を感じるようになってるということは、すでに懲役病が発症しているようなのです。


きっかけ

官本室の本棚の一角に、村上春樹の著作群がある。
読書人を詐称するには、避けては通れない作家だ。
でも、なんかとっつきにくい。

その隣にある村上龍のほうは、だいぶ前に読んだことある。
たしか「限りなく透明に近いブルー」だったか。
内容は覚えてないけど。

ともかく、春樹のほうの「ノルウェイの森」は恋愛小説だという。
恋愛の、しかも長編はまずい。
あっさりと挫折しそうだ。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」やら「ねじまき鳥クロニクル」あたりは、題名からしてなんのことだかさっぱりわからない。
苦手なファンタジーテイストが漂う。

かくなる上は「1Q84」か「ダンス・ダンス・ダンス」しかないが、明日からは3日の免業日となる。
官本は3冊借りれるので、どうせだったら厚くて難解そうな本をと「1Q84」にしてみた。

単行本|2009年発刊|554ページ|新潮社

感想

IQは関係なかった

最初にパラパラ読みをして、題名の『1Q84』は “ イチキューハチヨン ” だと知る。
勝手に “ アイキューハチジュウヨン ” だと思っていた。
まぎらわしい。

IQがテーマとなっていて、たしかIQの平均は100だったから、IQ84の、ちょっと頭が弱いほうの人が登場するのかも、などと一気に妄想してしまっていた。
だから難解そうに感じていた。

で、以外に読めた。
しかも、ちょっとおもしろい。

人物が暗いところがいい

不思議だ。
話のテンポは好みじゃないのに、おもしろく読める。

どこがどう好みではないだろう?
やたら比喩が多かったり、無駄にも感じる一行があったり、細かな描写がダラダラ続いたりというところか?
でも、先を読みたくなる。

すべての登場人物が、暗色なのがいいのかも。
内にこもる暗さではなくて、前向きな暗さ。
真剣さがある暗さ。

これが「イエーイ!」みたいなノリの人物ばかりだったら、もうとっくに挫折していたところだった。

ざっくりとした内容

パラレルワールドというのか?
1984年にいる主人公が、別の世界に入り込んだことに気がついて、そっち側を「1Q84」と名付ける。
そこで Book1 は終わる。

そうなるのに合わせて、登場してくる新興宗教の教えが絡まって、なんかどうか意味はうなずけるけど、そこは無学者の悲しさで、深いところまではイマイチよくわかってない。

あとは、ジョージ・オーウェルの「1984」という小説が出てくるので、それを読み込んでからだったら、確実に感じるところが変わると思われる。

なんにしても『読まなければわからない』と言い放つしかできない読書となってしまった。

かなり省いた登場人物

青豆雅美

30歳になりかけている。
友人なし、恋人なし、独身。
体育大学を卒業。
東京港区のスポーツジムのインストラクター。
独自に習得した筋肉ストレッチは、高い評価を得ている。

大塚環

青豆の唯一といえる友人。
高校では同じソフトボール部だった。
結婚して、夫のDVで悩み自殺する。

青豆は報復のために、筋肉ストレッチの知識から完璧な殺人術を編み出し、そのDV男を殺害する。

川奈大吾

予備校で数学講師を週に3回している。
空いた時間に小説を書いている。

青豆とは小学生の同級生で、それっきり会ってはないが、好意を持たれ続けている。

深田絵理子

17歳の高校生。
『空気さなぎ』という小説を書いて“ ふかえり ” という名前で出版社に送る。
その原稿が編集者の目に留まり、川奈大吾が改編して『空気さなぎ』は新人賞を受賞する。

小松祐二

40代半ばの出版社の編集者。
担当している川奈には才能があると評価している。
『空気さなぎ』を改編して文学賞に応募しようと川奈に持ちかける。

緒形静恵

70代半ばの老婦人。
麻布の屋敷に住む資産家。
官僚と結婚した娘が、DVによって自殺している。
以来、DVを憎んで、それから逃れてきた女性のセーフハウスを運営している。

青豆とはスポーツクラブで知り合い、筋肉ストレッチのお客さんとなったが、やがて正義感からの殺人の依頼をするようになる。

ごく浅いネタバレあらすじ

2人のDV男の殺人に成功した

1984年の東京。
渋谷のシティホテル。

そこで青豆は、中年男性を殺した。
首の後ろの急所に、自作のアイスピックを突き刺す方法だ。
相手は即死で、出血も無く、形跡も残らない。
死因は、心臓発作としかならない。

この方法で人を殺したのは2人目。
老婦人の依頼だった。

1人目は、唯一ともいえる友人の復習で殺した。
DVで友人を死に追いやった男だった。
2人目の、この男を殺した理由もDVだった。

3人目の殺人の依頼は新興宗教のリーダー

老婦人からは、3人目の殺害の依頼もされた。
山梨の新興宗教団体『さきがけ』のリーダーだという。

そのリーダーは、宗教行事という名目で、10歳の女の子をレ○プしたのだ。
女の子は教団を逃げ出して、老婦人のセーフハウスで保護しているのだが、口もきけずに放心状態だという。

老婦人も、迷いながらの依頼ではあった。
というのも、身元が知れている状況での、マッサージをしながらの実行になる。
死因は心臓発作となったにしても、教団から疑われるのは確実だし、報復だってされるかもしれない。
準備には、身辺整理も含まれていた。

とはいっても青豆には友人もなく、付き合っている男性もいなく、結婚願望もない。
ただ1人だけ、小学校の頃から川奈大吾という同級生を愛しているとは自認しているが、以来は会ったことがない。

なによりも、老婦人の考えには賛同している。
青豆は、3人目も承諾し、計画は進められた。

改編した小説が新人賞をとってしまう

その川奈大吾である。
予備校の講師の傍ら小説を書いている。

ある日、担当の編集者の小松から、ある小説の改編を依頼されていた。
題名は『空気さなぎ』という。
17歳の女の子が書いた小説だという。
改編してからは、文学賞に応募するとも小松は話す。

当初は、道義的に疑問を感じた川奈だった。
「詐欺まがいだ」とまで言い切って断った。

だが『空気さなぎ』を読んでみると、強く惹かれる。
荒削りではあるが、独特の世界観がある。
自身の手で書き直してみたいという欲求が沸いてきた川奈は、改編に着手することにした。

すると『空気さなぎ』は、新人賞を獲得したのだ。
マスコミからの、好奇の取材が想定された。

宗教団体での体験が書かれた小説だった

改編の秘密は守らなければならない。
川奈は、今後の計画を進めるために奔走する。
17歳の作者の “ ふかえり ” こと深田に会い、保護者にも出版の承諾を得る。
しかし、予想してなかった厄介な問題が露呈した。

深田は10歳の頃に、新興宗教団体『さきがけ』の前身となる農業コミューンから逃げてきたのだった。
そのときの体験が『空気さなぎ』には織り込まれている。
創作だと思っていたのに、教団の核心の部分が書かれているのだ。

教団からの接触は予想された。
なにが起きても、知らぬふりはできない状況となったのだ。

1Q84と名付けられた別の世界

一方で青豆は、3人目の殺害に向かっていた。
タクシーに乗ったのだが、首都高速で渋滞にはまってしまい動くことがない。
道路脇にある非常階段から地階に下りた。

そのホテルでの、マッサージを装った殺害は成功。
付き添いの信者には「リーダーは寝てるので」と説明をして、その場から離れることにも成功した。

事後、老婦人の屋敷に身を寄せる。
これからの生活は、老婦人が十分に取り計らってくれる。
さほど心配はしてない。
が、気がかりになってきたことがあった。
ここのところの日常で、ある種の “ ズレ ” を感じていた。
違和感というのか。

2年前におきたという大事件を、なぜか知らない。
知ってるはずなのにと、念のために過去の新聞を調べてみてが、どうしても記憶にない。
目にした警官の服装も、今までの認識と違っている。
いつの間にか、なにかが変わっているのだ。

決定的なのが、夜空を見上げたときだった。
月が2つある。
が、青豆は冷静だった。
別の世界にいる・・・と確信する。
元の世界が1984、今の世界を1Q84と名付けてみたのだった。

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