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経営者目線を持て、という言葉について考えてみた

ふと見かけた「経営者目線を持て」という言葉

なんとなくネットで見かけた「経営者目線を持て」という言葉。

以前よりは聞かなくなったように思うのですが、その昔よく聞いたり見たりしたことがありました。上司や社長から言われる種類の言葉だったと思います。

この言葉が何を意味していたか?文脈によっていくつかの意味合いが込められていたと思います。今思い起こすと、次のような意味合いで認識してました。

・自分の仕事、部署の視点ではなくて、会社全体の視点から見て最適な行動をしよう。
自分の財布だと思って経費を考えよう
・仕事、自分の会社、チームを自分事化して考えよう

会社の人や出来事を他人事として考えずに、自分事として前向きに取り組んでいこう、そんな意味だったように思います。

その昔の自分は、このような言葉を比較的受け入れて、何とかそう考えられるように、そう行動できるように、と思ってましたが、まぁ、全然無理でした。そうしようと思う自分と、それに反発する自分もいました。

今、そういう言葉をかけられても「いや、自分は経営者じゃないですし」「自分そんな給料もらってませんし」という人も多いと思います。

まぁ、無理だな、と思います。

ある目線を持つには「情報」が必要

話はちょっと変わりますが、経営的な視点を持つ、という場合に、とても重要なことがあります。それは情報です。

その昔、サイボウズでもマネージャーがやさぐれてて、会社の方針がなぜそうなのかわからない、などいろいろ不満が溜まっていました。(自分が一番そうだったのかもしれません)

社長の青野さん、副社長の山田さんが企画して行ったマネージャー合宿も大紛糾して、まぁ社内の雰囲気悪かったと思います。(詳しくは青野さん、山田さんの著書にも書いてあると思います)

その後、機会があり、経営会議に参加させてもらえるようになりました。そこに参加することで一番思ったことは「確かに、その情報から考えると、そういう結論になるな」ということです。

それまでは、なぜそんな判断になるのか全く不明(笑)だったのですが、それまで知らなかった情報を知る、状況がわかると、いろいろな判断・方針が理解できるようになりました。

そう、情報ってとっても重要。

そうした記憶からすると、経営者的に判断するには経営者と同じような情報を持ってもらう必要がある、少なくとも知ることができる必要があると思います。

人によって判断が変わる、というのは、考え方の違いもありますが、持っている前提条件に違いがある、というのもとても大きな要因と思います。

経営者目線を持て、というのは、社員に向けて発せられた言葉ではありますが、こう考えると、経営者に向けて「情報を社員に渡していく覚悟はあるのか?」それを問うている言葉でもあると思います。

そもそも松下幸之助さんそんなこと言っていたっけ?

と、個人の経験を書いたものの、そもそも松下幸之助さんはそんなこと言っていたっけ?というのがあります。

松下幸之助さんの『社員稼業』の前書きには以下のように書かれています。

一言でいうなら、会社に勤める社員のみなさんが、自分は単なる会社の一社員ではなく、社員という独立した事業を営む主人公であり経営者である、自分は社員稼業の店主である、というように考えてみてはどうか、ということである。
そういう考えに立って、この自分の店をどう発展させていくかということについて創意工夫をこらして取り組んでいく。
(中略)
自分が社員稼業の店主であるとなれば、上役も同僚も後輩も、みんなわが店のお得意でありお客さんである。そうすると、そのお客さんに対し、サービスも必要であろう。

自分の会社の経営者と同じ目線を持て、という話ではなくて、自分という個人事業主の経営者としての視点を持て、とおっしゃられています。全然話が違いますね。これだったら、誰しも理解できるし実践できます。

この言葉の現代的な解釈は?

この言葉を、現代的な状況に照らし合わせてもう少し考えてみます。

「お客さん」ってちょっと距離感のある言葉です。通常は、自社に対しての「お客さん」なので、身内の人ではなくて、外の人です。自分の所属している会社を身内とみなす一般的な考え方とは違います。

お客さんであってもお得意様であっても、自分とは違う存在です。自分ができることはできるし、できないことはできない。誠実にそうしたことを伝えつつ、できる限りのことはする。

自分が無理を重ねたり、疲弊してしまったらもう商売を続けられない状況まで行ってしまうので、こちらができる範囲で、こちらもコントロールしながら商売を進めていく。

これ、よく考えると「自律・自立」の話だと思いました。

会社、組織から言われたから仕事をやるのではなくて、自分ができる範囲でバリューがありそうな仕事、サービスを提供していく。自分の得意分野にあわせてサービスを提供していく。

その結果、いい仕事をして次の注文(お仕事)が増えたり仕事のレベルが上がることもあれば、お客さんの期待にそえず仕事のレベルが下がることもある。それも自分事として受け入れる。

もちろん、組織と個人ということで言うと、個人の方が弱い部分もありますが、逆に言うと、お客さんを選ぶ権利も個人の側にあるはずですし、お客さんだからと言って自分が奴隷になる必要はなく、できないこと、理不尽なことはそれはそれとして伝えていく。お客さんとしてどうしようもない、と思ったらそのお客さんからは離れる。

そのような会社、そのような世界の方がまっとうな気がしますし、自分の会社はそうありたいと願っています。

社員が経営者目線を持って、自分事として仕事を進めるようになると、経営者にとって嬉しい反面、実はより自立した社員(個人)と協調しつつ業務を進めていかねばならない。実は経営者目線を持て、と言えば言うほど、今は経営者が苦しくなる時代かもしれません(笑)

おわります。


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