見出し画像

【読書ノート】図解 日本酒入門

世界文化社出版、山本洋子著「図解日本酒入門」を読みました。つい先日Dry January(1月の禁酒月間)を終えたばかりの私が、一番最初に読んだ本です。分かりやすいアル中ぶりですみません。

まずは基本のおさらいをしました。日本酒には「純米」という言葉が最初につくものとそうでないものがあります。違いは醸造アルコールが入っているかどうか。米と米麹と水、このシンプルな原料からできるのが「純米」と呼ばれる酒です。この純米こそまさに日本酒、といった感じですが、実は全体の25%だそうです。もうひとつのタイプは「醸造アルコール」つまり蒸留酒と呼ばれるアルコール分が含まれたものです。こんな感じの区分です。

  • 米・米麹だけなら→純米大吟醸酒、純米吟醸酒、純米酒

  • 米・米麹・醸造アルコール→大吟醸酒、吟醸酒、本醸造酒、普通酒

思い返せば、私が日本酒にハマるきっかけになったのが、一杯何千円もするクソ高い(失礼!)純米大吟醸酒でした。若い頃「つぼ八」っていう安い居酒屋によく行ってて(今でもありますか?)、そこで日本酒を飲むたびに記憶を失ってた危険かついやーな思い出があり、日本酒にはずっと苦手意識があったんです。ところがニューヨークでの長い出張生活で、クライアント先の隣のビルにあった日本酒バーに頻繁に通い、そこで純米大吟醸酒を飲んで衝撃を受けました。な、なんじゃこれー!美味しすぎる!!!本当の意味で日本酒にハマったのがアメリカだとは、人生とは分からないものですね。

この本では日本酒を飲む順番のおすすめが紹介されています。

1杯目:スパークリング日本酒
2杯目:キリッと純米大吟醸酒
3倍目:純米吟醸酒の爽やかさを味わう
4杯目:うまみを感じる純米酒
5杯目:お燗酒
最後:コクとうまみがたっぷりの古酒を。

うおー、この通りに飲んでみたい!私は舌の感覚が鋭い1杯目に、きちんと味わいたい大吟醸酒を持ってくることが多いのですが、スパークリング日本酒とは新しい。っていうかスパークリング日本酒というものを飲んだことがない気がする。

スパークリングタイプの日本酒には大きく分けて3つあります。

1:二時発酵の「おり」(白い濁ったもろみの部分)
2:おりなし
3:ガス混入製法:二時発酵させず、後から炭酸ガスを混入。常温で流通可。

濁り酒は飲みやすくて好きだけど、そのスパークリング版はさらに飲みやすそうだな〜。次回の帰国の際はぜひぜひ飲んでみなければ。

2、3、4の大吟醸酒、吟醸酒、そして純米酒の違いはお米を削る量から来ています。

大吟醸酒は50%以上を削り、フルーティーかつきれいな酒質、そしてめっちゃ高級な日本酒の最高峰です。繊細で清涼感ある香りを生かすよう、冷やして飲むことがおすすめされています。りんごやバナナ、メロンのような香りが特徴のお酒もあるんですって。ああ、すでによだれが・・・。

吟醸酒は大吟醸酒より少しお米を残し、40%以上削ってるもののことを言います。純米大吟醸酒よりやや骨太で、香りも大吟醸酒より控えめです。その分、料理に合わせやすい特質があります。

最後の純米酒においては、米を削る量が40%以下のものということになります。多いものだと80%のお米を残すものもあるそう。温めると輪郭がはっきりするのが特徴で、お値段もリーズナブルです。

5杯目の燗酒は、体がポカポカと温まり、冬の季節はありがたいですよね〜。血行を良くするそうで冷え性の私にピッタリ。ちなみに徳利はしっかり肩までつけて湯煎で温めるのがいいそうですよ。鍋で加熱しながら酒をつけると、徳利内の温度が70度に到達してしまい、アルコール分の揮発が始まることで、香りや味が抜けてしまうんですって。・・・分かってはいるんですが、どうしてもめんどくさくて電子レンジで温めてる私のことは見逃してください。

家飲みで、いろいろな温度を試してみるのも楽しいですよね。美味しく飲める温度帯にここまでバリエーションがあるのが日本酒の特徴。こちらでもたまにホットワイン、室温の赤ワイン、キリッと冷やした白ワインなんて飲み方をしますが、日本酒のように日常茶飯事にお燗をするのは確かに珍しいですよね。お刺身には冷たいお酒、煮物や珍味にはほっこりお燗酒なんて組み合わせが、ごく自然に食卓に並びますもんね〜。

最後に飲むのにおすすめされているのが、ビンテージな古酒。寝かせて美味しいお酒があるそうで、私にとってはまだまだ未知の世界です。とは言え、案外身近にあるのかもしれません。例えば千葉県の木戸泉酒造が紹介されています。そこでは長期熟成した「高温山廃」という酒作りを行っていて、中には20年以上寝かせたものもあるんですって。チョコのような濃い甘味や香ばしい風味もあるなんて、奥が深すぎる〜。古酒のお燗も味がまろやかになって美味しいし、逆に冷やしても別の美味しさだそうで、こちらも次の帰国の際のチェックリストに入れました。

お酒を飲む際に大切なのが途中で水を飲む習慣。体内のアルコール濃度が下げ、酔いを和らげる効果のあるお水なので、「和らぎ水」とも呼ばれるそうです。氷を入れずに室温で飲み、体を冷やさないようにします。本当はお白湯がおすすめだそうですよ。私は普段からお白湯を持ち歩いているので、お白湯の効果は良くわかっているつもりですが、お酒のお供にも最適だなんて、なんだか嬉しい!脱水症状を防いだり酔いを和らげるだけでなく、舌の感覚を鈍らせずに、次のお酒や料理の味が鮮明になる効果もありです。

ウチ飲みパーティーにおすすめの酒器もずらずらっと紹介されています。うぉ〜、この酒器に埋もれたい〜と、食器好きの血が騒ぎますな。松徳硝子のうすはり大吟醸グラス、本当に美しいです。そんなグラスで飲めば、ツボ八で飲んでたような安い酒も美味しく感じたり感じなかったり。

旅先で買い集めた酒器をカゴやトレーに載せて、好きな物を選んで飲んでもらうのも、日本酒の楽しみ方のひとつ。それぞれの酒が美味しく味わえる専用の酒器があれば、より一層味わいが明確になり、個性もくっきり味わえる。一つのお酒が酒器によってどのように変化するか、飲み比べてみよう。

ああ、読んでいるだけで幸せ。日本酒は注ぐ器を変えることで、楽しみ方も無限大なんですよね〜。酒と器を探しに各地へ向かえば、新しい発見とおいしさ、楽しさが満載なのが、日本の魅力のひとつ。いろいろ紹介されてましたが、私は青森の津軽塗りが特に好みです。漆で凸凹を作った上に数十回も漆を塗り重ね、平らに研ぎ出して斑の模様に表す唐塗、小さな輪紋がかわいらしい七々子塗などが有名です。

ワインに合わないおつまみ「地獄の食材」として、塩辛、納豆、魚醤などディープなうまみを持つ日本の伝統発酵食が紹介されていました。納豆を食べてワインを試すと、お互いのいや〜な部分だけが引っ張り出されたような劇的なマズさと書かれていて、首がもげるほど納得。確かに〜!夜ご飯のお供にワインをいただくことがけっこうあるのですが、確かに納豆食べるとき「なんかまずいな」と思いながら食べてました(笑)。日本酒のお燗なら、どんな癖のある食材も、まるく包んでおいしくしてくれるマジックはやはり奇跡。

ワインの代わりに日本酒を使ったチーズフォンデュがおすすめされていました。ワインより更にまろやかに仕上がり、特にカマンベールチーズがおすすめで、粗挽き胡椒たっぷりと入れて食べると美味と紹介れていました。これはいい案!チーズフォンデュは我が家も大好きだし、アメリカ人のゲストにも喜ばれるので、ジャパニーズ版チーズフォンデュとしてお出ししてみたいな。

日本酒で四季を楽しめるをご存知でしたか?日本酒は冬に作るのが基本で、大寒を過ぎると、酒造りは最盛期を迎えます。小寒から立春の前日までの30日間を寒の内といい、大寒はその中間期。酒作りも寒仕込みと言われ、寒さを生かして酒を始め、寒天、味噌なんかも仕込むのにいいそうです。この時期の水は「寒の水」と呼ばれ、特に寒の入りから9日目に汲んだ寒九の水は「一番水が澄む」と言われて、雑菌が少なく、保存に向く、最高の酒ができます。こうやって厳寒時に仕込んだ酒が、時を経て少しずつ熟成していくので、変化の様子を四季を通して楽しめるなんて、さすが美しい国日本の伝統です。日本人として誇りに感じます。

ウチ飲みに加えたい全国のおつまみも紹介されています。私がいつかやってみたいと思いつつできてないのが東京の蕎麦屋でのひとり飲み。そば味噌、板わさ、焼き海苔、卵焼き、蕎麦の具をシンプルに出す蕎麦屋のつまみと燗酒は大人の一人のみが楽しめること請け合いですが、なかなか敷居が高いのが難。

最終章には旅飲みのすすめが書いてあります。あ〜なんて素敵な響きなの!いつか全国の蔵をめぐる旅に出るのが私の大きな夢のひとつです。「酒屋萬流(さかやばんりゅう)」という言葉があるそうで、その由来は日本酒の作り方がそれぞれの蔵独自のスタイルだから。

あ、そうそう、蔵を訪れる際は発酵食品は食べて行っちゃダメだそうです。特に納豆菌は生命力が強く、酒の味に悪影響を及ぼします。中にはヨーグルトや柑橘類もダメなところもあるそう。こういうのは常識なのでしょうが、私みたいに日本を離れて長いタイプは初耳だったりするので、このような本に巡り合えたのは本当にありがたい。

酒造りは寒い時期に行うものなので、寒い時期に見学に行けるように里帰りの予定を組もうかな。子供たちの夏休みに合わせて夏に行くことが多いのですが、たまには私のワガママもいいよね。早くコロナが終わってくれないかな、とますます思わせてくれた本でした。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,568件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?