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ゲストハウス×コワーキング×地域コミュニティ で探求する新しい豊かさのあり方

群馬最北の山だらけのみなかみ町、温泉街のど真ん中にあるコンパクトなスペースで「ゲストハウス&コワーキングほとり」をオープンしてから1年が経ち、先日1周年会を開催しました。偶然にも、その直後の2022/8/3にクローズアップ現代で取り上げてもらえることになったので(テーマは単身移住者女性を取材したいということで偶然なのですが)、せっかくの機会なのでほとりのことをちゃんと書いておきたいと思いました。

というか、みなかみ町に移住してから1年半… 面白いことがこんなにたくさんあったのに、書きたい書きたいと思いながら書くことをサボっていました。文章を書くことは好きなくせに(得意ではないです)、SNSが恐ろしく苦手なのです。
NHKにのっかるためなら重い腰をあげたいと頑張っています(笑)

名付けた時に意識してたか定かじゃないんですが、「ゲストハウス」も「コワーキング」も、”偶然の出会い”を価値にしているニュアンスがあるんですよね。

全く別のところからやってきた旅人同士が偶然出会うゲストハウス、全く別の事業をしている人同士が偶然居合わせて交流できるコワーキング。

そして田舎では、ここに地域コミュニティが加わります。
この地域コミュニティ…じつに面白いのです。

ゲストハウスやコワーキングが同じ場所に居合わせたのだとしたら、ある意味、「同じ町に居合わせただけ」で繋がっているのが地域コミュニティです。繋がりは想像よりも濃く、そこには他にはない特長がありました。

ほとりの面白さは、地域コミュニティの特長や精神を抜きには語れませんので、先に地域コミュニティの特長を少し紹介します。

田舎の地域コミュニティの面白さ

「隣に住んでいる人の名前を知らない」とか東京ではよくいうけれど、田舎ではビックリするくらい地域に住んでいる人の顔と名前をよく知ることになります。飲食店に行けば誰かと出会って「あぁ!こんにちは」、コンビニに行けば「どうも〜」なんて日常茶飯事。というか店の人とも顔見知りだったり話したことがある人が多かったりします。

最近ではそれがすっかり普通になってしまって居心地良く過ごしていますが、都会ではあまりなかった感覚です。

特長1: 属性バラバラ、ダイバーシティコミュニティ

東京にいたときはIT業界にどっぷりでした。
IT業界、特にエンジニア同士に関してはオープンカルチャーが強かったので、勉強会やイベントの開催も多く横の繋がりがたくさんできました。純粋に技術を楽しんだり、別の会社のみなさんとお話しできるのは刺激がたくさんあってとても楽しかったです。ですが、東京にいると目的のあるイベントやコミュニティが多く(当たり前ですが)、なかなかひとつの業界以外の人と繋がる機会はありませんでした。

地域コミュニティはエリアで切り取るので、本当に職種も目的も年齢もポジションもバラバラになってきます。田舎には田舎の特徴で人が集まるんでしょ、というのはそうなんですが、地元にずっと住んでいるおじいちゃんおばあちゃんから、リモートワーカーの移住者まで、超多様コミュニティになるんです。

ほとりにきているメンバーを見るだけでも、木工職人、建築家、フォトグラファー、マッサージ師、猟師、広告コンサル、デザイナー、ITエンジニア、アウトドアガイド、英会話講師、スポーツ選手、町会議員、飲食店経営者、子育て中のお母さん、近所のスナックのママ などなど‥ 改めてみるとすごいごった煮ですね(笑) 東京でコワーキングをやってもこうはなりません。

あえて括るとしたら、田舎町に何かしらの期待や居心地の良さを感じている、という点が共通かなと。特に移住者は、自然と近い暮らし、起業、子育てだったりと…私のように自分にとっての豊かさを探しにきている人も多いなと感じます。

特長2: Give & Given

田舎のGive精神は本当にすごいです。
まだ名前もよく知らない私に、ご近所のみなさんが作物を分けてくれました。人との繋がりが増えていくと、いただく野菜だけでほとんど生活できちゃいます。"食"はとにかく充実するので、なんだか何があっても生きていけそうって思えるのも田舎の面白さです。

「余ったら分け合う、困っていたら助け合う」というのがあまりにナチュラルで、Giveに対しての見返りを直接求めなくても、巡ってくることを理解しているというか、それが当たり前だと思っている方が多いと感じます。(ときに助け合い精神を武器にされるとしんどくなることもあるようですが)

お金を交換しなくても、生活がある程度成立するというのは、とても豊かな在り方に感じます。

特長3: ”人ベンチャー”の集合体

「安定した企業に就職」みたいな概念が薄いせいか、「自分のやりたいことがある人」「チャレンジしたい人」が多いと感じます。スタートアップ界隈のように新しいことをバリバリやって稼ぐというよりかは、ゆっくりでも小さくても、自分を満たす活動をしていきたいというマイペースな方が多いです。働かない、というのを意志をもって行うのもひとつの選択になってくるかもしれません。

それゆえに、自分にとってのその活動はなんなのかを探しにきた方、探している方も多い印象です。

ほとりの始まり「人と人を繋ぐ、地域のハブ」

ゲストハウス&コワーキングほとり は、「人と人を繋ぐ、地域のハブ」をコンセプトにして立ち上げました。「ほとり」という名前も、自然豊かな中に止まり木のように人が集まっているようなイメージで名付けました。

宿とコワーキングが一体であれば、"旅行者"と"地域の人"を繋ぐことができる。温泉街のど真ん中にあれば、"旅行者"と"街"(日帰り温泉や飲食店)を繋ぐことができる。

私にとってもとても好みで面白いコンセプトでした。共同オーナーのみなさんとも満場一致でしたし、私もとにかく地域の人と繋がりたかったので、運営側になれるのはとても好都合でした。

実際に1年やってみると、面白いことが起きました。

「地域内同士の人と人」が繋がった

まず最初にびっくりしたのは、20代の若い人がきてくれたことでした。
移住したばかりのとき(29歳)は、歳が近い人はいても自分より年下の人とはなかなか出会えなかったので。

話を聞くと、地元の若い人同士の繋がる機会が意外と少なかったり、地元だけど来たことない店が多かったり、移住者と話す機会もあまりなかったようで。この1年はこんな人たちをレギュラーメンバーに迎えて、繋がりを広げつつほとり中心の地域コミュニティをつくっていったような感覚でした。

すると、新しい出会いがたくさん生まれて、コラボが実現したり、仕事が広がることで今までと生活や仕事が一変したという声を聞くことができました。ほとりはきっかけに過ぎず本人たちの力だと思いますが、その一助ができたと思うと嬉しい限りです。

地域内だけでもまだまだ知られていないことがたくさんある。まだ見えていないシナジーの可能性を強く感じました。特長1のように多様性に富んだ人たちの情報をもっと見える化したい、出会える機会を増やして、内でのコラボはもちろん、地域外の人にもどんどん広げたいというのが、2年目の想いです。

ほとりコンセプト再定義

1.co-working ・・・→ co-anything

日本のコワーキングスペースは、静かで、快適なツールがあって、作業がとてもしやすい場所、という店舗が多いですが、コワーキングの原点は"交流"です。在宅で仕事をするソフトウェアエンジニアがひとりで作業をするのに飽き飽きして、カフェでもなかなか交流が生まれず、市民センターに広告を貼ったのが始まり、なんて逸話もあります。

ほとりでは、ほとんどの居合わせた人同士を繋がるように働きかけています。話した感じの雰囲気で察することもありますが、相当「話しかけないでオーラ」を出したりしてない限りは、挨拶や紹介だけでも。そこから話が盛り上がるかどうかはお任せですが、お互いのどこかしらのアンテナにかすって勝手に話が盛り上がっている様子もよくみます。「偶発的なシナジー」の卵が生まれる瞬間ですね。ほとりは、空間の提供ときっかけをつくるという、ちょっとだけハシゴをするだけです。
(この働きかけも、田舎のお店やコミュニティが自然とやっているからこそ、馴染んでできるというのは大いにあります。東京だったら難しかったかもしれません)

同僚といるオフィスのように、集中する時間もありつつ真面目な会話や雑談する時間もある。適度に新しい人とも出会える。やっているコトは違っても同じ空間を共有することに意味がある。

そんなコワーキングのスピリットを引き継ぐ形で、もっと田舎にフィットした何でもアリのco-anythingなスペースにしていきたい。なにせ特長1で紹介したように、多様性の宝庫なのです。

「パソコンとか持ってこないとダメなのかなと思って 、来づらかったんだよね〜」
ほとりを運営していて、何度か言われたセリフです。このようなことを言われるたびにコワーキングという名前を変えたいと何度も思いました。「人と人を繋ぐ」がコアなので、別にワーキングじゃなくてもいいのです。他の人の迷惑になるようなことじゃなければ、スタディングでもリーディングでもプレイングでもトーキングでも(笑)

イベントはかなり多様にやっていて、毎週土曜日に「ものづくりday」という持ち込みものづくりの日を作ったり、持ち込み料理のごはん会をしたり、アウトドア企画もあります。日常的にも、お茶しにくるとか本を読みにくるとかものづくりに来るとか、多様に使ってもらう場になっていけたらと思います。

「コエニシング」じゃ何屋かわからないから、便宜上「コワーキング」という言葉は使い続けると思いますが、新しい概念つくって広められませんかねぇ…(笑)

2.”プロセス”を応援,見える化することで価値にする

私が田舎移住するきっかけにもなったシェアビレッジの構想をしているとき、村をつくるプロセスは創造的なエンターテイメントになると強く感じていました。プロセスに参加する・コミットするという、ある種労働に近いようなことは精神的な充実に繋がり、最高の遊びになると。

これと同じ考え方をほとりにも適用したいと思っていますが、ほとりの場合はシェアビレッジと違って作業コンテンツが新鮮とは限らないので、キーは「応援」です。地域コミュニティのみなさんのプロセスを紹介したり、そこに人を巻き込んだりして応援することをいいます。

特長3で紹介したように、田舎は「”人ベンチャー”の集合体」のような側面があり、社会的インパクトがそこまで大きくなくても、一人一人の想いや実現しようとしていることはとても面白く、素敵です。「地域の魅力は人」とよく言いますが、そこをただ拾い上げるだけでもとても意味があると感じています。

まだ種の段階だったり芽が出たばかりの、完成品としては言えない状態のところから人を巻き込んでいく。成長過程を見守ったり貢献できたりすると、人はとても思い入れを持つものだと思います。

そして特長2のGiveの精神のように、仮にそのコミットやお手伝いに直接的な見返りがなかったとしても、いつかGivenがある・巡ってくることがわかっているという心を持って接することができるというのが、豊かさに繋がっていくと思います。

鉄工所の増田さん「鉄工DIYで鉄を身近に感じてもらいたい!」
の初めとしてできた鉄板Map

そうやってみんなのプロセスがほとりに少しずつ集約されて、施設内がアップデートされたり、商品を置いてくれたり、イベントを主催してくれる人が増えたり、住みつく人がでてきたり。運営サイドに片足つっこんでるような活用をしてくれる人が増えることで、「運営とお客の境目がなくなっていく」ことが、ほとりの理想の姿です。

3.”人”に焦点をあてた暮らすように旅する体験

3つ目は今までの1と2のような場所に旅人がやってきたら…どんなことが起きるだろうか?という話です。

自分自身、旅というか移動生活が好きなのですが、遠出したときに思い出深い場所には必ず「人」の存在がありました。

観光地は調べられるけど、人の情報は調べるのは難しい。
たまたま出会えた人と意気投合して仲良くなるのは旅の醍醐味でもありますが、もう少しそのチャンスを増やす方法はないかと思っていました。

人を知る旅。
人を通して、地域を知る旅。
プロセスに巻き込まれてみる旅。
帰った後も、また会いたい人がいる旅。

そんなちょっと新しい旅の形を実現しやすい場所にしていきたいです。

おわりに

私について少し書いておきます。

幸せとは何か・精神的な豊かさとは何なのか、というのを求めて、私は1年半前にみなかみ町に移住しました。

まだ短い期間ですが、「居場所」「コミュニティ」のような人との繋がりのあり方はとても大きな要素であり、どんなあり方がいいのかは探求し続けたいと思いつつ、今回はひとつの豊かさの指針(答え)としてほとりでやっていきたいことをまとめました。

「自然との共生」や「生活をゼロからつくる」ことも大きな要素のひとつです。シェアビレッジはこれからですが、田舎暮らしをする中で感じた価値はこちらにまとめています。

さいごに、よくわからない移住者の私に、ほとりの運営を任せてくれた共同オーナーのみなさん。

みなさん経営慣れしているので、最初はおんぶに抱っこでした。地元の人たちを繋いでくれたり、やりやすいように整えてくれたり。ほとりのベースがなければ、こんな価値の実験も、実践したいこともまだまだ先になっていたかもしれません。もちろん、みなさんの想いと方向性があっていたからできていることではありますが、見守ってくれてとても感謝しています。

私自身がとてもGiveしてもらっている、応援してもらっているので、それを巡らせたいという想いが自然とでてくる。共同オーナーのみなさんももちろん、会員さんやお客さんからも本当にたくさん受け取っているし、町でそんな関わりをしている方が、幸運なことにたくさんいます。

IT業界で最先端の技術や価値ばかりを追っていた私ですが、そんな豊かな関わりから「田舎おもしれ〜」と思わせてくれています。今後はITの力も掛け合わせて、豊かさを増幅したり伝播したり、本当に大切なことを思い出せるような仕組みや活動もしていきたいと思います。

ほとり1周年を祝ってくれたみなさん、本当にありがとうございました!

都会にいるみなさん、NHKきっかけでも投稿がきっかけでも、田舎暮らしやほとりに興味を持ってくれたり、生活を考えるきっかけになったら幸いです!


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