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玉響
2020年8月23日 20:53
なんだか寝付けない夜は、決まって夜更けまでキッチンに篭るのが、私の常だ。1週間前の夜中もそうだった。生あたたかい夏の夜、ぼんやりと、ああまたこの日かと動揺も無く、私は早々にタオルケットを引き剥がした。冷蔵庫の上には、レモンが4つ転がっていた。ころんとしたそのフォルム、かたくてしっかりとした皮、熱気で靄がかった気分をはっとさせてくれるようなビビッドイエローに惹かれて、その日の昼間に購入した。
2020年8月3日 21:33
4日前、アンティークピンクの薔薇を、いつものスーパーの片隅で見つけた。色もはっとするくらい美しかったが特に素晴らしかったのはその香りだ。あまりに甘くてくらっとしてしまう香りだった。私は一瞬で心を奪われて、二束、衝動買いをした。 今朝、その香りはもうしなかった。暑さからか色もくすんで、しなっと萎んでいた。私は冷たい水を差しながら、もう生花は買わないだろうと思った。せめてあの香りの香水があればいい
2020年8月14日 21:41
「食べられないもの、ある?」「パクチー」私は即答して、匂いがだめです、と付け足した。「貴方は?」「俺は、トマト」彼は即答して、なんでだめかは分からない、と笑った。そうか、なんでだめかは分からないのか。私も、トマトが好きではないが、好きではない理由はなんとなく分かる。ぶちゅっとした触感、トロっとした中身、酸味、後味。幼いころから、ミートソースやケチャップは大好きなのに、野菜のトマトはその