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Vol.2 高尾山の豊かな自然をとことん味わう。
東京都八王子市にある高尾山は、幅広い世代に人気の低山ハイクスポット。その人気のわけは、やはりアクセスの良さではないでしょうか。新宿駅から京王線に乗り約1時間。高尾山口駅に着けば、その名の通りそこが山の麓。電車を降りたらすぐに登り始められるというわけです! 山の中腹まではケーブルカーやリフトで上がることもでき、気軽に登れるということも高尾山の推しポイントのひとつです。
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しかも都心から約1時間という距離でありながら、四季折々の豊かな自然にどっぷりと包まれて過ごすことができるのも大きな魅力。その自然の豊かさは、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で最高ランクの三つ星を獲得したこともあるほどです。
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山頂まではルートいろいろ。体力や気分に合わせて楽しめる。
標高599メートルの高尾山山頂までのコースはいくつもあって、それぞれに異なる山の表情を楽しめます。
1号路は、頂上まで舗装されているので比較的歩きやすいコース。さまざまなご利益があると言われる人気のパワースポット、薬王院にも立ち寄ることができます。
一方で6号路は本格的な山道です。小さな滝や沢を登って行く箇所もあって、別名「森と水のコース」。マイナスイオンをたっぷり浴びることができます。
気軽にリフレッシュしたい人は、ケーブルカーで上がった山腹の1km弱の周遊コース2号路がおすすめです。
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ケーブルカーの駅から山頂までは歩いて1時間ほど。舗装された1号路ではあるけれど、道中は上りが続くまさに“山登り”です。でも、山頂に到着すれば山々が連なる景色に清々しい気分。汗とともに日々のモヤモヤもすっきり流れていきそうです。
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高尾山の山頂で、その豊かな自然と親しむ。
でも、これだけじゃもったいないんです、高尾山は!
一息ついたら、目指すは午後1時半からのガイドウォーク(土日祝日開催)。ガイドウォークは山頂にある〈高尾ビジターセンター〉のインタープリター(自然解説員)の案内で、高尾山の自然について楽しく知ることができるプログラムです。
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「高尾山は、日本で初めてインタープリターが常駐した山なんです」
と教えてくれたのは、インタープリターの石川雄馬さん。インタープリター(interpreter)というと、通訳の意味もありますが、ここにおいては自然が持つ意味や重要性を人々にわかりやすく伝える役割の人であり、石川さん曰く「大きく言うと地球のメッセージを伝えるのが仕事」です。
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石川さんがインタープリターとして教えてくれるのは、山で出会う生き物がひとつひとつ「何か」ということだけでなく、「この山でどんなふうに生き物たちが関わり合って生きているか」ということです。
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たとえば、ふわりふわりと優雅に飛ぶ美しい蝶、アサギマダラ。この蝶の幼虫はキジョランという毒のある植物の葉だけを食べるそう。「食べてキジョランの毒を溜め込むことによってアサギマダラは自らを有毒化し、外敵から身を守っているんですよ」と、石川さん。アサギマダラの生き方には、驚きを隠せません!
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「昆虫は、ある決まった植物しか食べない、という“偏食”のものが多いんです。高尾山は日本三大昆虫生息地といわれていますが、たくさんの昆虫がいるということは、それだけたくさんの植物があるということなんです。生態系はネットワーク。だからもし、なにか一つの種を守ろうという時、それだけを守っても残すことはできないんです。ネットワーク全体を守らないと」
高尾山の豊かな自然を守ってきた人たち。
続けて石川さんは、「高尾山に多様で豊かな自然が保たれてきたのは、このネットワークが人の手によって守られてきたからです」と、高尾山の歴史的背景を話してくれました。
高尾山はもともと744年ごろに、僧の行基(ぎょうき)が薬王院を開山したと伝えられています。以来、高尾山では殺生禁断の思想が息づいてきたんだそう。戦国時代にはこの地をおさめた北条氏により、「高尾山内の竹林一草たりとも、みだりに伐ったものは首を切る」というほど厳しく自然が保護されたと言います。
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「高尾山で人気の植物の一つにセッコクがあります。セッコクはランの一種で、他の山にも生えている植物ですが、その美しさから盗採されやすく、こんなにたくさん自生しているのは珍しいと思います。昔からずっと人がこの山の生き物を守ってきたからこそだと思うんですよね」
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高尾山の自然保護の歴史は古いものばかりではありません。高尾山が国定公園に定められた1967年以降にも大きな動きがあったんだそうです。
「今、高尾山にはゴミ箱がありません。持ち帰るのがルールです。でも以前はあったんです。来訪者が捨てたゴミ箱の食べ残しを狙って、カラスや野生動物が集まってしまい問題になっていました」
このままではいけないと高尾山に携わる人々が立ち上がり、清掃運動、そしてゴミ持ち帰り運動が始まりました。そして山内のゴミ箱がすべて撤去されたのが1980年代半ばごろのこと。
「当初は反発も大きかったそうです。それでも何年、何十年もかけてそれを徹底し、整ったのが今です。とはいえ、今も環境の変化などで自然は大きな影響を受け続けています。ガイドウォークなどの活動を通じて、みなさんに高尾山は観光地という側面だけでなく、生き物たちが棲む山なんだということを理解していただき、この自然を守ることを考えるきっかけを作ることができればと思っています」
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麓でも高尾山の自然をのんびり味わえる〈高尾599ミュージアム〉。
ガイドウォークを終え、下山する時に目に入る山の景色は、登ってくる時とは少し違って見えてきます。高尾山の自然の豊かさの秘密が分かったことで、視界に入るすべての植物・生き物に愛着と畏敬の念が湧いてくるような……!
さて、そんな気分で麓まで降りたら、帰る前にぜひ立ち寄ってほしい場所があります。〈高尾599ミュージアム〉です。広々として心地よく、洗練された空間の中には、高尾山に生きる生き物たちの剥製や、植物のアクリル標本などがずらり。
「この展示を見て、山で見てきた生き物と答え合わせされている方もいますよ」と、学芸員の山中菜美さん。〈高尾599ミュージアム〉の展示は高尾山の生き物たちに特化しており、高尾山の自然への理解を深める場として、人気のスポットなんです。
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「いらっしゃる方の中には、『ここ、東京なのにムササビがいるんですか!?』『高尾山ってこんなにいろいろな生き物がいるんですか!?』と、驚かれる方も少なくありません」
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一番の見どころは、やはりこれら自然の中で生きる生き物を彷彿とさせる美しい展示ですが、多摩産材の椅子が並ぶカフェスペースが地元の人々や登山客の憩いのスペースになっていたり、外の芝生で子どもたちが遊んだり、思い思いの過ごし方ができるのも、この施設の大きな魅力。
「そんなに大きな施設ではありませんが、いろいろな楽しみ方があると思います。きっと訪れた方それぞれの琴線に触れるものがあるはずなので、ぜひ丸ごと味わってみてください」
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599メートルという低山ながら多様な自然や本格的な登山を味わえる高尾山と、小規模ながらさまざまな顔を持つ〈高尾599ミュージアム〉。ぜひ、自分なりの楽しみ方を見つけてみてください。訪れるたびに、きっと新しい発見があるはずですよ。
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【Vol.3:8月中旬公開予定】
次回は、多摩地域の日本酒造りについてお伝えします。お楽しみに!
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※文中の価格はすべて消費税込み、2024年7月時点でのものです。