大内正伸

四国高松に住むイラストレーター・著作家。棚田と里山再生(Gomyo倶楽部)。著書『これ…

大内正伸

四国高松に住むイラストレーター・著作家。棚田と里山再生(Gomyo倶楽部)。著書『これならできる山づくり』『山で暮らす愉しみと基本の技術』『囲炉裏と薪火暮らしの本』、紙芝居『むささびタマリン森のおなはし』他。最新刊『「大地の再生」実践マニュアル』(共著/農文協2023.1)。

マガジン

  • 人工林の科学(スギ・ヒノキの森と土砂崩壊のこと)

    シリーズで書いた『人工林の科学』講義編・調査編をマガジンにまとめました。林業に関わる方必読の内容です。

最近の記事

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古民家の囲炉裏再生から、新築の【囲炉裏暖炉】に至るまで・・・

アトリエに遊びに来ると誰もがに釘付けになる【囲炉裏暖炉】。薪と炎をいじり始めると、皆そこから動かなくなってしまう(笑)。そもそも山暮らしで囲炉裏を使い始めたのがきっかけなのですが、四国移住の思い出とともに【囲炉裏暖炉】その完成までのストーリーをたどります。 隠れていた囲炉裏を再生するあれは東京で森林ボランティアに通い始めた頃だったろうか、かやぶき民家の保存に囲炉裏がいいのだということを初めて聞き知ったのは。囲炉裏から立ち昇る煙が木材やかや屋根を燻して保存性をよくするというの

    • 紙芝居『神流川なつかし物語』

      むささびタマリンに次ぐ僕のもうひとつの創作紙芝居『神流川(かんながわ)なつかし物語』(2006年)。絵26枚/挿入歌6曲(うちオリジナル4曲)/約40分〜。 2023年の12月15〜16日、この紙芝居が生まれた群馬の山に里帰りして、群馬県藤岡市鬼石のオルタナティブスクール「百の森学園」と、ホピの預言のメッセンジャーであるランドライフ辰巳玲子邸にて再び演じました。 ●あらすじ・・・海から生まれ、雲に運ばれ、川へと落ちた、一滴の雨のしずく。そのしずくが、半世紀前の、群馬県神流

      • 人工林の科学/あとがき

        日本の人工林地は救えるのか? 1ha当たり5000~6000本植えという、本州の一般的な植林密度の2倍近く密植している紀伊半島の人工林。なのに間伐は遅れ、巻き枯らしもされず、それでも風雪害に遭わず超線香林状態で立っている。そうして世界に冠たる「褐色森林土壌」の表土が、大雨の度に流されている。もちろん木は太れなくてヒョロヒョロ。やがて次々に土砂崩壊が起きている。これはもう、世界最悪の森林施業の失敗例といっていいのではなかろうか? 限界成立本数を超え、普通なら枯死木が多数出る

        • 人工林の科学/調査紀行編5・最終回(熊野古道の崩壊地と谷の冷風・三重県〜奈良県側の崩壊地と土砂に埋まる川の変遷2013.7.24-26、コラム「熊野の川でエビを獲る」)

          優良ヒノキ林の2倍の過密度/熊野古道の崩壊地 翌日は熊野古道の崩壊地を回った。当時、新聞記事にもなった三越峠の先にある所で、区間でいえば中辺路ルートの湯川王子と発心門王子の間にある。案内していただいたK さんは、熊野古道が世界遺産になるずっと前からをこれらの道を縦横に歩かれている大ベテランである。 下草の少ない密なスギ林(それでも最近伐り捨て間伐を施した跡がたくさんある)が続く。サワガニやカエルに出会いながら進んでいくと林内に石垣が見え、廃屋が現れてちょっと驚いた。 山

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        古民家の囲炉裏再生から、新築の【囲炉裏暖炉】に至るまで・・・

        • 紙芝居『神流川なつかし物語』

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        • 人工林の科学/調査紀行編5・最終回(熊野古道の崩壊地と谷の冷風・三重県〜奈良県側の崩壊地と土砂に埋まる川の変遷2013.7.24-26、コラム「熊野の川でエビを獲る」)

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        • 人工林の科学(スギ・ヒノキの森と土砂崩壊のこと)
          13本

        記事

          人工林の科学/調査紀行編4(紀伊半島で見た、間伐されたいい山2013.7.24~25、コラム「宇江さんの講演を聴く」)

          講演の帰りに 2011年の半ばに四国・香川県の高松市に移住して、紀伊半島はいくらか身近な場所になった。とはいえそうそう気軽に行ける距離ではない。2013年の7月下旬、関東の埼玉県で講演の依頼があり、その帰りに調査の続きをするスケジュールを組んだ。 講演先は文科系の私立大学なのだが、キャンパスに隣接して山林を所有しており、授業科目として森林文化(座学と実習)が設けられ、森林作業(里山再生のための助伐や道づくり等)の実習もある。文系の大学生たちが山仕事を体験実習する——そんな

          人工林の科学/調査紀行編4(紀伊半島で見た、間伐されたいい山2013.7.24~25、コラム「宇江さんの講演を聴く」)

          人工林の科学/調査紀行編3(百間山・熊野崩壊地〜安川渓谷〜伏菟野崩壊地2013.5.26~27)

          様々な修復工事が継続中 午後は日置川の源流部、熊野(いや)地区大崩壊地を見に行く。2913年5月15日付『紀伊民報』の記事によれば、熊野の深層崩壊は高さ約650m、幅約450m、深さ約50m(!)にわたり、崩れた土砂や岩は約410万㎥。熊野地区19世帯のうち8棟が倒壊し、3人が亡くなられた。 その場所をGoogle Earthで見ると、尾根の南面ピークから始まった崩壊が対岸に追突し、当時2つの土砂ダムができた様子が解る。航空写真で見てもその崩壊地は広大だが、一帯はすべて人

          人工林の科学/調査紀行編3(百間山・熊野崩壊地〜安川渓谷〜伏菟野崩壊地2013.5.26~27)

          人工林の科学/調査紀行編2(熊野川に沿って、熊野古道館〜滝尻崩壊地へ2013.5.25~26)

          熊野川沿いの崩壊地 新宮の熊野速玉大社に行ってみる。ここも紀伊半島豪雨のとき水をかぶったそうだ。世界遺産の碑。境内に珍しいナギの大樹がある。 熊野川は岸辺に水害のときの跡が喫水線のように鮮やかだ 河口近くの橋を渡って対岸を遡ってみる(熊野川が県境になっているのでこの県道740号は三重県の紀宝町になる)。 速玉大社の神域である「御舟島」は、大水害のとき水をかぶって樹木が折れてしまったが、現在は青々と回復中。ツツジが開花しているのが遠目に確認できた。 このまま三重県側を進

          人工林の科学/調査紀行編2(熊野川に沿って、熊野古道館〜滝尻崩壊地へ2013.5.25~26)

          人工林の科学/調査紀行編1(紀南の崩壊地、那智川源流をを歩く—— 2013.5.23〜25)

          古座川のスギ林を計測してみた 紀伊半島豪雨から1年9カ月後の5月、森林調査を目的に旅をした。まずは那智の滝へ向かった。途中「稲積島」や「江須崎」の天然林を見、そのあと古座川近くで人工林の山に入ってみた。地図上で赤点のあたりである。 山の外観は青々としているけれど、中に入れば写真のような感じで、超過密なスギ人工林だ。林内に他の雑木はほとんどなく、道際はわずかにシダなどが生えている。樹高はどのくらいだろうか? 根倒れした木を見つけたので、巻き尺で正確な樹高と胸高直径を測ってみ

          人工林の科学/調査紀行編1(紀南の崩壊地、那智川源流をを歩く—— 2013.5.23〜25)

          人工林の科学/森林講義編7・最終回(日本の雨とヨーロッパの雨、道づくりと囲炉裏部屋)

          日照の長い夏に雨が多く、ヨーロッパ諸国1年分が1日で降ってしまう日本の山 さて時間が来てしまいました。大事なところだけ残り時間でお伝えしましょう。この表は日本とヨーロッパの雨のちがいを見せたものです。『木を植えた男』(ジャン・ジオノ+フレデリック・バック/あすなろ書房 1989.12)という絵本がありましてね、一時たいへんに売れた本でブームになりました。これ、フランスのプロバンス地方で荒野に木を植えたという美談なのですが、プロバンスというのは雨の少ない乾いた場所でして、日本

          人工林の科学/森林講義編7・最終回(日本の雨とヨーロッパの雨、道づくりと囲炉裏部屋)

          人工林の科学/森林講義編6(風雪害のない山づくり、間伐こそ日本林業の核心)

          スギ・ヒノキ林なのに地面がフカフカ、保水力抜群の山になる! これは四国高知県の魚梁瀬杉で有名な馬路村魚梁瀬の山です(下写真)。なすび伐りといって天然林の中から優良木を抜き切りし、幕藩時代から厳重な保護を受けながら森を育てていったところです。ここも雨が多く、何度も大きな台風が通過しているはずですが、これだけの太い木が混交林になって残っています(写真は同じ地点で上中下層を撮って並べてある)。このような森では土もフカフカして腐葉土が厚く、大量の雨を吸収・保水する機能を備えています

          人工林の科学/森林講義編6(風雪害のない山づくり、間伐こそ日本林業の核心)

          人工林の科学/森林講義編5(目指すべき森のかたち、風雪害・自然間伐の再生林と「伊勢神宮宮域林」)

          紀伊半島の人工林の問題点 紀伊半島の森・人工林の問題点を整理してみましょう。 まず、土壌は世界最高といっていいほどの褐色森林土壌です。しかしその下の心土、岩盤、土が崩れやすい。軟らかい。もともと崩れやすい地質の上に広葉樹がしっかり根を張って防いでいたのではないか。 それを皆伐して人工林化した。それをきちんと間伐して、間に広葉樹を入れればよかったのだが、それができなかった(*23)。  ①吉野林業の影響下にあり密植林を真似る → 間伐が遅れるととたんに線香林化。 ②台風

          人工林の科学/森林講義編5(目指すべき森のかたち、風雪害・自然間伐の再生林と「伊勢神宮宮域林」)

          人工林の科学/森林講義編4(荒廃人工林はどうしてできるのか? なぜ崩れるのか?)

          道路工事で伐るまで解らない、緑麗しい荒廃林 紀伊半島に戻りましょう。これは私がブログで紹介している熊野の本宮の近くの人工林の写真です。2年半くらい前(2010年5月下旬)に撮影したものです。 これは崩れたのではなく、道路工事で林内の様子がよく解るという例なのです。道路工事でじゃまなので森林のキワを伐ったのですね。伐る前はこの緑が下まであって、一面緑の葉に覆われていた。森のことをまったく知らない人がそれを見れば「ああ麗しい緑の山だ」と思うでしょうけれど、ここを伐ると中があら

          人工林の科学/森林講義編4(荒廃人工林はどうしてできるのか? なぜ崩れるのか?)

          人工林の科学/森林講義編3(気候風土と森林の基本構造・紀伊半島の実像)

          3つの写真、イチイガシのどんぐり・伊勢神宮宮域林・アトリエの囲炉裏前置きがちょっと長くなりましたが、スライドを映しながらお話をしたいと思います。 私は講演の度にスライドの表紙をオリジナルで作ることにしているのですが、今回は3枚の写真を使いました。左①は先日奈良に行ったときに奈良公園でイチイガシがたくさんあったのでどんぐりを拾って撮影したものです。 まん中②はこの講演の中で詳しく説明しますけれど、人工林施業の非常にすばらしい成功例である伊勢神宮宮域林のヒノキ林の写真です。昨日

          人工林の科学/森林講義編3(気候風土と森林の基本構造・紀伊半島の実像)

          人工林の科学/森林講義編2(プロローグ=熊野の森を歩いてみた!)

          どうもこんにちは。たくさん集まっていただいてありがとうございます。後藤先生の作られた「熊野の森ネットワーク いちいがしの会」は以前からよく知っておりまして、すばらしい活動をされているなと思っておりました。このようなところに呼んでいただき光栄です。では講演時間は一時間半ということで、話をさせていただきます。 最初の著作は「林業の技術書」私は林業の専門家でも何でもなく、森林の学術的な勉強を大学でしたとかそういうこともなく、まあ自分で山を歩いて、それから森林ボランティア活動が入門

          人工林の科学/森林講義編2(プロローグ=熊野の森を歩いてみた!)

          人工林の科学/森林講義編1(はじめに)

          長らくお蔵入りしていた『人工林の科学』(スギ・ヒノキ人工林施業と土砂崩壊のこと、とくに紀伊半島の現状とその再生法について書いた文章)をnoteに無料公開します。講義編(7本)と調査編(5本)+「あとがき」の合計13本です。まずはイントロ「はじめに」です。 はじめに——クジラのひげとベルギーワッフル2011年(平成 23年)8月末から9月初めに日本列島を襲った台風第12号は、広範囲に強い雨を降らせ、全国各地に土石流・地すべり・崖崩れなどの大きな被害をもたらしました。特に紀伊半

          人工林の科学/森林講義編1(はじめに)

          本棚のなかの『遥かなる山釣り』 by 山本素石

          このところ琵琶湖周辺に縁があって、先日も仕事の下見に行き、その夜に「炭火薪火講座」やタマリン紙芝居をやったりしてきたのだが、ブログを書くのに琵琶湖や愛知川のことを調べていたら、山本素石という人が引っ掛かってきた。 山本 素石(やまもと・そせき 1919年ー1988年)は渓流釣り師でエッセイスト、当時はツチノコ博士としても有名だった。山本素石の生まれは滋賀県甲賀郡甲南町、すなわち琵琶湖に流れる野洲川の支流、杣川の上流部なのである。 ベッドに横たわりながらスマホでググっている

          本棚のなかの『遥かなる山釣り』 by 山本素石