最近の子どもは歯が抜けると枕の下に置いて金貨と交換するらしい。
ある日、子どもの歯の仕上げ磨きをしていると、下の歯がぐらぐらしていることに気づきました。
ついに、歯の生え変わりの時期がやってきたようです。
「いいなぁ、私の歯も丸ごと生え変わらないかなぁ」なんて思いながら、「歯が抜けたら、一緒に屋根の上に投げようね」と言いました。
すると子どもはキョトンとして、
「ぬけた"は"は、まくらのしたにおくんだよ?」
と言われました。
え?まくら?
枕の下と言えば、少女漫画の「りぼん」か「なかよし」の後ろのページに、「枕の下に好きな人の写真を敷いて寝ると恋が成就する」みたいなおまじないというか、呪いについての解説があったような、なかったような。
子どもに詳しく聞いてみると、「ペッパピッグ」というイギリスの子ども向けアニメでは「抜けた歯を枕の下に置くと、寝ている間に妖精が来て、歯と金貨を交換してくれる」と言うのです。
気になって調べると、これはアメリカやイギリスで広く信じられているおまじないのようで、抜けた乳歯を枕の下に置いて寝ると「トゥースフェアリー」という歯の妖精がやってきて、お金と交換してくれるんだそうです。
きっとこのnoteを見て下さっている方は、「いやいや、歯は屋根の上めがけて思いっきり投げるもんだろう!」と思うでしょう。
そんな皆さんは、きっと「三丁目の夕日」的な昭和世代、またはコギャルが渋谷を牛耳っていた平成世代の方たちでしょう。
令和を生きる最先端の子どもたちの常識は、枕の下なのです。
一瞬だけ「日本の古き良き文化を途絶えさせてしまうこと」に罪悪感を感じましたが、どうせ我が家はマンションで屋根もないので、枕の下に置くことで子どもと一致しました。
「金貨なんてないから、代わりにコインチョコを1枚買っとけばいいや」と思っていたら、いつの間にかこのことをすっかり忘れて2週間が経過。
先日の朝、起き抜けに子どもが「あ、ぬけた」と言いました。
思わず、「えっ!」と叫んでしまいました。
これは、「乳歯が抜けて大人の仲間入り、おめでとう」という意味での「えっ!」が5%で、残りの95%は「やばいやばいやばいコインチョコ用意してない、コインチョコってどこに売ってんだ」という焦りからくるものでした。
子どもを保育園に送り届け次第、近所のスーパーに直行しました。
このスーパーは、ある日突然アイスの陳列棚に仰々しいフォントで「珍獣コーナー!」というチラシが貼られ、アイスの代わりにワニやすっぽんの冷凍肉が売られるようになった店です。
店中くまなく探しましたが、冷凍ダチョウ肉は売られているのに、コインチョコは売られていませんでした。
仕事の合間に成城石井やカルディを回りますが、見つかりません。
最後の頼みの綱のソニプラ(最近の若者は「プラザ」と呼ぶでしょうが、私は"ソニー"がついていた頃を決して忘れない)にも行きましたが、見つかりません。
お店の人に聞くと、コインチョコはクリスマスやバレンタイン等の時期には取り扱いがあるものの、それ以外では基本的に置いていないそうで。
私は腹をくくりました。
もう、偽造するしかない。
手作りアクセサリーパーツや金具が売られているお店に方向転換し、部品と袋と接着剤を買いました。
ミール皿(レジン細工に使う皿状のパーツ)の裏に大量に接着剤を入れ、その上に飾りを浮かべるだけの簡単偽造。と思ったら、接着剤を入れすぎて全然固まらずパニック。
この日私は偽造に追われ、ほとんど仕事になりませんでした。
その日の夜、子どもは抜けた乳歯を小さな箱に入れて枕元に置き、わくわくしながら眠りにつきました。
子どもの寝かしつけが完了したら、私は偽造の続きに着手。
偽造通貨が乾いていることを確認してから小さな袋にいれて、枕元に置きました。
そして、翌日。
子どもは「ようせいさんがきた~」なんて可愛らしくはしゃぐかと思いきや、朝6:00に寝室にこだましたのは
「っっっっっしゃー!!!!!」
という男子高校生のような雄たけびでした。
想像以上に喜んでくれてうれしく思いましたが、その後の子どもの声に背筋が凍りました。
「あれ、ようせいさん、"は"をもっていってない・・・」
うわー!忘れてた!そうか、コインと歯は交換するんだった!
私Windows95世代だから、iphone15的最先端の文化に慣れてないのごめん!
必死で「忘れん坊の妖精さんだったんじゃない?きっとどこかで取りに来るよ」とごまかし、このイベントは無事終了しました。("歯"は昼間に回収)
その日の夜。
「バタバタしたけれど、なんだかんだ面白かったな」と思いながらお茶をのんでいたとき、ふと気づきました。
私、子どもの歯が抜けるたびに、コインを偽造するの・・・?
瞬間的に「あ、無理」と悟り、ぽちりました。
昭和も平成もいいけれど、やっぱりAmazonがある令和、最強。