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あの日の新宿と展覧会 「世界の友だちへ」


あの日の新宿

新宿高島屋での展覧会でうけたまわったオーダー納品が完了しました。長らくお待たせしました。(正確にいうと1点だけ後発納品があります)


2月、横浜元町での個展は、暗雲が立ち込めはじめた中、無事に終了。
その後、東京に緊急事態宣言が敷かれました。都市移動の制限が解除されるか否かのタイミングでの新宿高島屋での展覧会。正直、制作していても落ち着かず、いっそうのこと延期になればいいのになんて、弱気な思いも湧きました。モチベーションを保つのがむつかしかったことを、思い出します。

高島屋をはじめ、新宿の百貨店が次々と臨時休館する前日くらいだったでしょうか。展示中の作家を応援しに行きたくて、新宿に降り立ちました。人もクルマもいないスカスカの甲州街道の赤信号が、こんなにも長いと感じたことはありませんでした。雑踏、そして色が消された鼠色のアスファルトが、ピカピカに光って見え、東京オリンピックの旗は虚しくはためきます。本来ならば、世界からの旅行客を迎え入れる街として、ごった返していたのだろうな。封鎖された高速バスターミナルには、スーツケースのゴロゴロ音は皆無。その代わり、南口のアスファルトの泣き声が聞こえたような気がしました。不気味な新宿でした。



心おちつかせて、心おだやかに

制作中、精神的に揺れ動いたのは、感染の恐怖ではなく、不安である世の中で「お客様の心をどのように誘導すればよいのか」ということでした。気に入ったらアマゾンでポチすればいい品物ではありません。

すでにたくさんのうつわを持っているはずです。なかったら生きるのに困るというものでもないでしょう。でも、こんな時だからこそ、心おどるような、感動する本を読んだあとのような、そんな心の奥に入ってゆけるうつわを全国に届けたい。それがコッチョリーノの本望でした。全身全霊で土に向かっているのに「今回はコロナですから来なくていいですよ」はあんまりだなあと。


「心おちつかせて」や「心おだやかに」という流れを吹き込みたい。どうすればいいんだろう?と、制作しながらその方法ばかり考えていました。


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東京の底力

開催者、そしてお客様にも手数がかかってしまう「電話オーダー受け付け」を強行してしまった理由はそこにありました。

移動が叶わない、人混みを自粛しなければならない、持病をお持ちのかた、さまざまな不安、嘆きが少しでも和らげばいいなと思って行いました。結果、泣いて喜んでくださるかた、医療や保育関係者、休みなく働く人、仕事を失われたかたなど、様々な人の緊張した表情が緩む瞬間を拝見しました。大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、ああこれ奇跡!と思うようなことがたくさん起こりました。

やってよかったなと思いますが、反省もたくさんあります。この数ヶ月で、展覧会の主催者やギャラリーのご経験は膨らみました。東京の底力を見せてくださいました。今後は、さらに良い方法で、ギャラリーやお客様に、もっと地球に寄り添っていきたいなと思っています。



世界の友だちへ

SNSやブログで作品の説明はしているけれど、お客様の食生活に至るまでの喜びや悩みまで聞いて、それにお応えするのがコッチョリーノの仕事なのかもしれないと改めて思いました。わたしは、普段の生活においては、しっかりしてない代表者です。けれど、家族そして世界の友だちを尊んでいます。旅の情景と憧れをいつも抱えています。うつわがおまけの「助言者」になれたらいいな。『未来のうつわ』へのアプローチって、本来そこが大切なのかもしれないのです。


お待ちいただいたみなさま、今回はお会いできなかったみなさま、いつも応援してくださっているみなさま、どうもありがとうございました。この記事のトップに置いた写真の作品タイトルは『世界の友だち』といいます。今回は出品していませんでしたが、なぜか複数名のかたが、会場に飛び込んできて「あの作品がどうしても欲しい」とおっしゃいました。

わたしたちは、自然と求めているのです。
友だちは数ではありません。心の片隅にいるかいないかくらいでもいいと思っています。


地球に逆らわず流れてゆく方法を、これからも考えて、モノやコトに落としていきたいと思っています。「世界の友だちへ」また会いましょう!


コッチョリーノ 我妻珠美

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