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はるのいのち(2)

着地と浮遊

タネは、どこかに着地して芽を出さねばと思っているけれど、浮遊して意思を散らし残したいとも思っている。自分でつくった料理も、外食でつくってもらう料理も、テイクアウトも、いただきものも、つかれた人も、かなしい人も、どこかに着地を求めながら、毎日ちがう日なんだから浮遊したいと思っている。

▶︎はるのいのち(1)




地球のかけら

当時よく登っていた山で、足元の土や手元の岩ばかり見ながら「三点支持(さんてんしじ)」(四肢のうち三肢で体を支えること)の体勢でひらめいた。3つの手足は着地しているけれど、ひとつは浮いているじゃないか。

工房の名「コッチョリーノ 」は、ミラノでの工房修行を終えるとき、師匠から釉薬レシピといっしょにもらったもので、意味は「ふだん使いの陶器」とか「陶のかけら」。師匠の工房名「コッチョ」に、ちっちゃいという意味の「リーノ」をつけて「地球のかけら」とした。ちっちゃめのかけらに着地するドキドキ感。作品には、着地と浮遊をくりかえすラディシネの証「根っこ」と「足あと」を線刻しつづける。(作品の線は彫って象嵌するというオリジナル技法です)

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うつわにうつす

失敗のないうつわを提供しようとは思っていない。利便性にスタイリッシュをあわせもったような優秀なうつわをつくろうとは思っていない。料理がのって、失敗も成功もあってこそ、自分の感情がうつわに乗るのだ。


小さなつぶやきに、すてきな言葉が集まる。
まさに「うつわ」に救いの温度を感じているご様子がうれしい。

こんな紳士な言葉も加わってゆく。
つくり手として、ツイッターはあたたかい学びだ。

自分で料理を「つくる」のはもちろんすばらしいし、買ってきたものや、いただきものを食す時間も、ていねいに感じたい。「うつわにうつす」という行いは、着地と浮遊。そこには息づかいや深呼吸が聞こえ、心の余裕につながると思っている。食材への「いのち、いただきます」と同じように、つくってくれた人への「ありがとう」も大切にしたい。



あとがきコッチョリーノ 

▶︎写真のお寿司は、あなたの街にもきっとあるチェーン店で買ってきたお寿司。しかも閉店まぎわの半額。ネタはそりゃ薄いけれど、味は上々。2パック+のりまき1パック。この1ヶ月はろくに食事がつくれないよと前もって宣言しているので、家族協力隊の料理やテイクアウト食に助けられています。▶︎新アイテムは、必ず自宅で使ってみて納得いくものだけ出品します。本文に書いた通り、それは利便性やスタイルだけではありません。救いの愛というのでしょうか、うつわに温度を感じたら自作自演ですが映画監督のようにGOを出すのです。▶︎今回の新作は、昨年の春ころから、信楽の粘土製造会社と相談を重ね、オリジナルでつくってもらった粘土です。試行錯誤1年経過して、今回ようやくお披露目が叶います。来週末には「はるのいのち」が咲きますように。


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「はるの いのち」我妻珠美 陶展

2月8日(土)– 16日(日)
11:00〜19:00 
*月曜定休(祝日は営業)

CROCO ART FACTORY
横浜市中区元町 1-71 メゾン元町2F
045-664-4078



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