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SNSによる「クレームの言いふらし」に同調する人が減ってきたように思う

顧客(消費者)による事業者(企業、店舗など)へのクレームについては、メールや電話などで直接申し立てる方法と、レビューサイトなどに発信して他のユーザーと共有する方法、そして個人のSNS(twitterなど)に書き込んで閲覧者の共感を促す方法の3つに概ね大別できます。

直接申し立てるクレームについては、受け取る側も確実かつ細かな応対が可能となります。レビューサイトについても事業者側からの返信機能がついているものに限っては、謝罪なども含めたある程度のメッセージが伝えられます。

しかし、twitterなどの匿名SNSに書かれてしまうとなれば少々厄介です。発信元が明かされないのをいいことに、暴言や誹謗を含んだ表現もよく見られます。中にはクレーム被害の特定が困難なものや、書き込まれた内容の真偽そのものが分からない場合もあって、SNSのリテラシーを十分持ち合わせていない企業が対応に苦しむ例が以前はよくありました。


それでも近年は、この手のSNS拡散に加勢する人たちだけでなく、書き込みの内容に異議を唱えたり、書き込んだユーザーを逆に批判したりというケースも少なくありません。

それはいわゆるモンスタークレーマーと呼ばれる輩ども(私はあえてこう呼びます)に対する「逆風」と関係しています。



少し前までは「ネットに書き込むぞ」が有効な脅しになっていた

たとえば、

不当な扱いを受けた。自分の要求に応えてくれなかった。

直接文句を言って謝らせたけど、まだ腹の虫がおさまらないから、ネット上に書き込んで拡散させて、もっとダメージを与えてやろう……

……といった流れでSNSに書き込まれるパターンもあります。私の会社勤務時代にも、電話口で「ちゃんと対応してくれないなら、ネットに書き込むからね」と脅すように直接言われたことがありました。

明らかに事業者側の責任と取れるもっともな内容であれば、不平不満を書き込んで共感を得て、SNSを通じたネット世論の力で企業に反省を促す、という手段もあるかと思います。もちろん事実を歪曲していない、ウソが含まれないという大前提がありますが。

一方で「カスタマーハラスメント」という言葉が認知されるにつれて、SNSを眺める人たちの目も、かなり冷静なものになってきた印象があります。

店員が土下座を強要されて刑事事件にまで発展したコンビニエンスストア、荷物が集まりすぎて営業所がパンクするなどの状況によって疲弊する従業員が続出した配送会社、最近ではコロナ禍によって大変な苦労を背負われている医療現場など、現場の悲鳴が世間にはっきり聞こえるようになった背景もあるでしょう。そしてもちろん、匿名SNSでも発信元が特定されて「アシがつく」ことを自覚する人も増えています。


クレーム発信の正当性によって反応が変わる世の中に

これまでは比較的、事業者側の不備を責める声が多かったネット上の空気に変化が出て、「中でがんばっている人たちのことを考えよう」「利己的過ぎる理不尽な要求はいかがなものか」といった、過酷な現場で従事する方々の不憫さを重く考える人の数は確実に増えたのではないでしょうか。

それによって、クレームや批判を拡散させようとする書き込み主の投稿内容に正当性がなかった場合や、事業者に対する行き過ぎた要求であると閲覧者が判断した場合などには、「そのクレームは間違っている」「お店に非はない。悪いのはあなただ」などと、不特定多数のユーザーによって書き込み主に非難が向けられる流れも生まれています。

これについては、個別の案件を取り上げてどちらが正しい、どちらが正義だという問題ではなく、

本来は事業者とのやり取りで済ませるべきクレームの案件を、安易にSNSでまき散らすことで生まれるリスクの大きさ、重さがより顕著になったことを自覚しなければならない現象のように感じます。


子供じみた文句の拡散に「大人」はもう同調してくれない

私が思うに、SNSを読む大衆の目も冷静になっている印象があります。「この店でこんなひどい目に遭った!」と一方的に書き込んだからといって、読んだ人すべてが即座に同調してくれるわけではなく、その真相まできちんと見きわめて書き込みの内容をジャッジする世の中になってきています。SNSは手軽なツールゆえに、一時の感情にまかせて勢いで書き込んでしまう人もいるわけで、間違った認識で無責任にクレームを言いふらす行為が及ぼす影響、そしてしっぺ返しは想像以上に大きいものとなっています。

一方で企業や店舗の事業者側にとっては、「消費者も大人になれ」という風潮によってSNS上での謂れのない批判、理不尽な文句の自制につながる流れとなれば良いのですが。


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