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パンジー=野生の感を取り戻せ


「ミモザのリース」

2月のレッスンはみんな大好き「ミモザ」。切り花のミモザはそんなに長くは楽しめませんが、リースはそのままドライになるので大人気。毎年恒例のレッスンとなりました。

今月のレッスンテーマはパンジー。語源はフランス語のパンセ(pensée)。俯くように咲く花の姿が考え事をしているように見えるからという説があります。(動詞penserは考えるという意味)

パンセと言えばパスカルの哲学書で”人間は考える葦(あし)である”。
むか〜し昔のフランス通貨500フラン札の顔だった偉人です。でっかいお札で折り畳まないとお財布に入らないはた迷惑なサイズ。当時の日本円に換算すると一万円札に相当しました。

パンジーといえば、どのようなイメージがあるでしょうか?
春に咲く可愛らしい可憐な花とか、花壇を色とりどりに飾る明るいイメージがあるかもしれません。

まだ寒い時期に咲く花々に共通するのは、暖色系で柔らかい花弁を持つものが多い。これは、自然界が示し合わせたのではないだろうか。

「生徒作品」

パスカルの他に、パンジーといえば思い出すのはレヴィ=ストロース「野生の思考」。その表紙には、まさしくパンジーが描かれています。今、なんとか読破しようと取り組んでいる書物です。

今なぜ「野生の思考」にたどり着いたかといえば、昨年のパリ滞在中にサンジェルマンデプレのカフェ(サルトルやボーヴワールなどが通った)で、なぜだかふと「私はサルトルの実存主義は肌に合わないなあ」と思いたち、野生の思考を読んでみたいと思ったのでした。

旅の醍醐味ってこういうことなんじゃないでしょうか。普段考えもしなかったことに出会えて、何か本質に行き着くような。

レヴィ=ストロースは第二次世界大戦で召集され、ドイツとフランスの国境沿いの地に赴きます。その時、目の前のたんぽぽを見つめながらその美しい秩序を発見し「構造」に着目しました。自然界の秩序と人間が作り上げる構造について。人間の思考は自然が創り上げたものだと。

良書に出会うって、ワクワクする、これは一種のエンタメだと思うのです。

そう言えばもうひとり、岡本太郎も戦場で花から啓示を受けた経験がありました。

太平洋戦争が始まる直前にパリから帰国し、兵役についた彼は中国で厳しい軍隊生活を送っていました。

ふらふらになりながら、腹這いになって前進していた時、目の前に揺れる小さな花を見た。「そいつと鼻をつきあわせて、ぼくは、いのちがしぼりあげられるような感動にふるえた」と、当時を振り返って記しています。これを読んだ時、私まで感動にふるえました。

「生徒作品」

自然の中に身を置くと、ガラリと人生の文脈が変わる瞬間があります。これが野生の思考を取り戻すきっかけになっているのではないでしょうか。

理論で意味を説明するより、野生の感で価値を与えることが大切だと気づいた今日この頃です。


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