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年月を必要とする優しい世界

「受講生作品」

できれば柔軟に、「この自分」と思い込んでいる外の世界へ飛び出したい。そう願う人たちは、知的好奇心を満たす事がエネルギー源なのですね。

私は花を通じて、そのような方々とお会いする事で前進するエネルギーを頂いています。この場をお借りして(って、読んでないよ!)そう読んでないと思いますので、お礼を念じます。

今月の「文学と一花一葉」のテーマは谷崎潤一郎の「刺青/しせい」でした。
この、初版本の表紙のタイトルは、谷崎の3番目の奥さま松子さんが書かれたそうです。

若い頃は谷崎文学は理解できない人が大半であっただろうし、文学というにはスキャンダラスであった時代でもありました。

しかし、時を越えて、ただ触れてみたいという純粋な気持ちで講座へいらっしゃる方々が、とても好ましいと思うのでした。

駕籠の簾の陰から、真っ白な女の素足がこぼれているのに気がついた…
その女の足は、彼に取っては貴き肉の宝玉であった…
江の島の海辺で獲れるうすべに色の貝にも劣らぬ爪の色合い…
珠の様な踵のまる味…
この足こそは…男のむくろを踏みつける足であった

刺青・谷崎潤一郎

かなり省略しましたが、どんだけ足フェチだったのでしょうか!
それを芸術的表現へと昇華させる力があったからこそ、ノーベル文学賞に7回もノミネートされたのですね。

好きを突き詰めて、それを芸術的なまでに美しく表現した時、救われた人達もあったでしょう。なんというか…元気になった人たちも含め(笑)。

ある意味、これはレジリエンス。

生い立ちからして複雑な環境にあり、苦労して東大へ入った谷崎が発表した作品は、きっと多くの人の心に火を付けたんじゃないでしょうか。

谷崎潤一郎がやった事は、そういうことかもしれない。

とても優しい世界。長い年月を重ねて作り上げた世界。

私もそんな優しい世界を花で表現したいものです。


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