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短編小説:あかつきのきみに。
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その日、俺は、会社に行かない事にした。
無断欠勤だ。
このまま地上に出てタクシーを拾っても絶対遅刻にしかならない9時直前まで無駄に逡巡していた俺は決心して地下鉄の乗り換えの駅でそのまま反対の、京都方面行きのホームに階段をのろのろと時間をかけて下り、停車中の普通電車に乗った。乗車前、駅のごみ箱にA4サイズの封筒を放り込んで。
既に出勤時間のピークを終えた普通電車、しかも大阪の中心地から
ことりと僕とにいちゃんと鳩1
小説です。2万字くらいを何回かに分けて公開していこうと思っています。これがまず1になります。優秀な兄と凡庸な弟の話。長くなりますのでお付き合いいただける方は是非。テーマは何ですかと聞かれなくても答えると『母と言う罪』みたいなものかもしれません、変わるかもしれないけど。
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僕には7歳年上の兄がいる。
僕の希(のぞみ)と言う名前の兄、僕がいつもにいちゃんと呼んでいたその人は、とにかく生まれた
ことりと僕とにいちゃんと鳩 2
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「自分にそぐわないものを身につけ続けるって本当に苦しい、僕は僕の事を自覚した瞬間からずっとそう思っているから、ああいうのを見ると、突発的にむしり取りたくなる」
12月、僕達の住む地域は、関西とは名ばかりの、まるで北国のようなしんとした寒さに包まれる。その寒気はご丁寧に雪まで運んで来る事もあった。それは本格的な雪への備えのない僕達の町の道路を渋滞させ、橋を凍結させ、時折車のスリップ事故を発
血管を詰めた日の話。
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少し前、「知的にも運動機能的にも遅れがみられる、要経過観察」を心理士に指摘されて親の精神的横っ面をフルスイングで平手打ちしたとこのある娘②は、ここにきて特に言語発達について猛追を見せていて、最近、自分の要求を言葉ではっきりと相手に示すことを身に着けた。
それはとても喜ばしいだし、嬉しい事で、個人的にはもう僥倖と言っていいと事だと思っている。だって今のところ人生の1/3が入院で人生の全部が