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【感想文】日の出前/太宰治

『「日の出前」兼「変身」読書感想文』

今回、私は何をどう勘違いしたのか、間違えてフランツ・カフカ『変身』の感想文を書いてしまった。

なぜだろう。馬鹿だからだろうか。
ただ、折角書いた以上、破棄するのも惜しいと思った私は咄嗟の機転を利かせ、間違えて書いてしまった変身の感想文中の人物名だけを修正することで、本書日の出前の感想文に作り変えることに成功した。
よって、今回はそれを以下に紹介する。

なお、感想文中の引用箇所は『変身』からの抜粋である。また、以下に示す「作者」「本書」という表記は太宰/カフカの両者/両作品を指す(前述の通り人物名だけを修正した)。

▼『日の出前』読書感想文:
まず、あらすじをごく簡単に述べておくと、この一家は父、母、兄、妹、女中から構成されており、兄・勝治は家族を支えていく一員であったにもかかわらず、ある日を境に毒虫となり一家を苦しませることになる。毒虫・勝治の滅茶苦茶な生活態度は、父をはじめとして家庭内に軋轢を及ぼすのだが一方、妹・節子だけはそんな勝治を慕い続ける。その理由は <<妹にしてみれば、家族がただでさえもういやというほど苦しんでいるのであるから、なんとしてもみんなの悲しみをそれ以上は大きくしたくないという肚(はら)だったのであろう>>[新潮文庫:変身,P.42] という心境から明白である。
そうした妹の献身的な態度に味を占めたのか、勝治は <<もっと口に合うような別のものでも持ってきてくれたのかしら。おれに言われなくても、自分からそうやってくれまいものか>>[同,P.39 ] と改善の兆しは一向にない。その結果、たまりかねた父に勝治は殺される。あっけない最期であった。

しかし、本書のクライマックスは親の子殺しではない。
終盤における妹の <<放り出しちゃうのよ>><<本当はあたしたちの不幸だったんだわ>>[同,P.86-P.87] という一変したセリフにおいて物語はピークを迎え、そして本文最終行 <<彼らの新しい夢とよき意図の確証のように映った>> と皮肉に締め括る。

思えば、人の「幸福」とは何であろうか。太宰治は『家庭の幸福』という作品において「家庭の幸福は諸悪の本(もと)」と書いた。本書も然り、作者は「幸福」の存在意義を逆説的に問題提起している。それ即ち、勝治だけが毒虫に変身したのではなく、彼の両親、ひいては妹も「幸福」なるものを求めて人非人(にんぴにん)、つまり毒虫に成り果てたことを意味しているのである。

といったことを考えながら、私は3歳の甥っ子を『アンパンマンミュージアム』に連れて行ってやろうとしたつもりが、何をどう勘違いしたのか、間違えて『アパマンショップ』に連れて行った。

以上

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