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【感想文】うらおもて人生録/色川武大【Slight Return】

『血だるま麻雀倶楽部(Slight Return)』

今回は本書『うらおもて人生録』から「動いちゃいけないときの章」をとり上げて、著者・色川武大氏のセオリーについて、麻雀の実戦譜を用いて解説を行う。

▼動いちゃいけないときの章について:
色川氏は勝負事の押し引きについて次のように語る。

<<ワンポイント失った時点で、さらにエラーを重ねるのが一番よくない。―中略― 同じ点差でたたかっていると、有利な方はますます自然に点が追加され、不利な方は自然に減点されて、だんだん点差が開いてしまう。そうなってからでは挽回不可能だ。>>新潮文庫,P.301
 
<<勝てそうになると、つい調子に乗って、とどめを刺したくなるけれどね。―中略― かえって、動いたためにそこでエラーするということが怖い。>>同,P.303

上記で述べられている「エラー」の実例および対処の考え方について以降、牌譜を元に解説する。

▼麻雀実戦譜による本章の解説:
下図に示す牌譜は、とある日の未明に行われた実戦譜である。

1枚目

対局状況のポイントは以下の通りである。

・それぞれの点差は拮抗している。
・上家の麻雀三四郎氏は、テンパイ(4-7ソウ待ち)。ドラ8ソウをポン。
・下家のMasajass氏は、テンパイ(東、5萬待ち)。2ソウと3ソウをカン。
・対面のあきっさ氏は、2シャンテン。自家(私)は1シャンテン。
・前局において私は、対面にマイナス1600点を放銃した。

この状況で親の私が6ピンを引いた。勝負の分かれ目である。
ここで私が目指すべき完成形は「リーチ・ピンフ・ドラ1」の5800点でよく、さらに今回はカン裏が乗る可能性が非常に高く、ドラ1枚乗るだけで11600点が確定する(※①)。上家と下家は鳴きによりガードはユルい(※②)。対面は「白」を連続2枚切りしているためオリたとみてよい(※③)。ということは、トップ目の対面・あきっさ氏(29900点)に対し、私は逆転の射程圏内に位置しており、攻めるには格好のチャンスといえる(※④)。で、血迷って7ソウを切ったところ、上家の「タンヤオ・ドラ4(8000点)」に放銃してしまい、最下位に転落、次局以降、私は再浮上することなく最下位のままオーラスは終わっていったのである。

私は前局に続き今回も放銃して <<エラーを重ねる>> ことになった。では、エラーの原因は何だったのか?そしてどうすればエラーを防げたのか?色川氏は次の様に語っている。

<<非常に人のわるい方法だが、相手のエラーを誘発(さそう)する手もある。とにかく、誰かが次にエラーをするまでは、じっと我慢して攻めにでないこと。状況というものは、刻刻に変化するから、チャンスの芽のようなものは、自分がわるい態勢になっているときでもあるよ。だけれども、見送った方がいい。―中略― わるい態勢のときは、たたかってろくなことがない。>>同,P.301

上記を踏まえると、前述①~④はこれすべてエラー誘発の要素であり、<<勝てそうになると、つい調子に乗って>> しまった私は上家に放銃した。一方、エラーの誘いに乗らず、白2枚を落としてオリに転じた対面・あきっさ氏の冷静な判断は、色川氏が述べた <<じっと我慢して攻めにでないこと>> の成功例といえる。つまり、この局で私が取るべき行動は、6ピンをツモった時点でオリを即決し(そもそも6ピンの使い道なぞない)、以降は、上家・麻雀三四郎氏と下家・Masajass氏の決闘を傍観して次局に備えておけばよかっただけなのである。

といったことを考えながら、実はこの感想文で本当に伝えたかったことを以下に示す↓

2枚目

以上

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