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【感想文】沈黙/遠藤周作

『コペルニクス的ラーメン屋』

本書『沈黙』を読解する為に必要な麺類は、ラーメンである。
1ミリたりとも意味が分からないと思われる為、以下に説明する。

■ラーメンの起源:
ラーメンは、中国の山東省福山区の麺料理がその発祥といわれ、それが「藍州(らんしゅう)ラーメン」へと変化を遂げ、幕末から明治にかけて中国から日本へ伝えられたとされている。

■日本の精神風土:
作中、フェレイラは日本を <<沼地>> であるとし、<<デウスと大日と混同した日本人はその時から我々の神を彼等流に屈折させ、そして別のものを作り上げはじめたのだ。>>P.233 と語っている。
それは作中の随所に現れる <<参ろうや/参ろうや/パライソの寺に参ろうや>> という異質な祈祷文からも窺える。
一方、日本のラーメンにおいても明治から現代に至るまで独自に進化し続けており、「家系ラーメン」「二郎系ラーメン」「味噌カレー牛乳ラーメン」といった多岐にわたるラーメンが発明されている。
つまり、日本におけるキリスト教と藍州ラーメンは日本の風土に同化された、似て非なる何か、である。

■作品の解釈:
前述の通り、キリスト教と藍州ラーメンの境遇は共通していることから、この際、「沈黙」をラーメンの観点で語っても全く差し支えはない。

① イエスが創業した藍州ラーメン(=キリスト教)の日本支店を視察するため、経営戦略部部長(=ロドリゴ)は、日本へと出向く。
② 彼が目の当たりにした光景は、藍州ラーメンという屋号ながらも、その実、二郎系インスパイヤ店に変わり果てた店舗であった。
③ そんな中、熱狂的ラーメン二郎ファンのジロリアン(=キチジロー)に終始付きまとわれるが、ロドリゴは彼の藍州ラーメン評価を受け入れられない。
④ ロドリゴは、近所の中華屋の大将(=フェレイラ)に昨今のラーメン事情を伺ったが、日本にラーメンは無く、オマージュ(=沼地)に過ぎぬといって一向に要領を得ない。
⑤ ジロリアン達は、二郎系ラーメン特有の中毒性の穴に落ちて抜け出せなくなる(=穴吊りの刑)。
⑥ ロドリゴは、藍州ラーメン株式会社を退職(=棄教)、新たに中華ソバ屋を開店、ジロリアン達が流れ込む(=愛の行為)。
⑦ 常連客キチジローリアンが熱心に中華ソバをすする姿を通じて、藍州ラーメンのスープの秘訣を習得、秘伝を受け継ぐ。(=棄教の如何に関わらず、互いの弱さを赦し合いひたむきに信じる)

このように、「沈黙」の要所を理解するにはラーメンに逐一置き換えればよいと私は思う。

といったことを考えながら、私はこの持論を近所の子供達に披露したところ、『素直に芥川龍之介の「神々の微笑」を用いて説明した方が分かりやすいと思いますが?』と忠告されたので『小鳥と歌い、舞踏を踊るのがそんなに高尚か。刺す。』と言い返した。

以上

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