初めて自然と繋がったタスマニア。 本編
ツアーの出発地である港町ホバートに前日入りした私たち、タスマニアといえば、サーモンでしょ!ということで、まずは腹ごしらえに、港にあるレストランでサーモンのバター焼きをオーダー。期待のお味は!というと、かすかにクサイ。
なんやこれ、本場で食べるのにメルボルンでいつも食べてるサーモンの方が美味しいやんか。
絶対間違いないはずのサーモンがハズレ。
これが、これから起こる数々のトラブルの予兆だったのでしょうか。。。
この旅は2人にとって初めての旅である前に、初めてのお出かけ、お喋りの時間。2人でお茶したり、遊びに行ったりしたことはなかった。
だけど不思議なことに緊張はなく、自分の中から、言葉が次から次へとあふれ出して、今までの空白を埋めるかのように、夜通し二人で笑ったり、涙したりしてるうちに気づけば、ツアー出発の一時間前。
まだ日が昇る前、薄暗い中、お迎えのバスに乗り込んだ私たちは、ガイドの説明もそこそこに、早速、深い眠りにつきました。
気がづくと、バスは最初の目的地、美しい滝で有名なラッセルフォールズのあるマウントフィールド国立公園に到着していて、ふらつく足と寝ぼけまなこで最後にバスを降りた私たちの目の前には、霧がかった深ーい深ーい森が広がっていた。
既に仲間たちの背中が見えないほど、遅れて出発した私たちでしたが、なんだか森にゆっくりしていきやーと言われてる気がして、澄みきった朝の空気を肺いっぱいに吸い込み、木々や緑に目を奪われつつ、倒木とツーショット写真を撮ったり、切り株に隠れてひょいっと顔だけ出してみたり、焦ることなくゆっくりとマイペースに2人っきりで散策を楽しみました。
すると森の奥に黒い影が!
当時の私は黒くて大きなウサギの登場に驚きましたが、今調べてみると、タスマニアに生息するアカハラヤブワラビー。別名パディメロン。カンガルーの小さいバージョンだそうです。
たま旅では、こうやって二人だけの時に動物が出てきてくれることが多いですが、タスマニアで出会ったパディメロンが記念すべき第一号となりました。
ここで少し、人間関係について話を挟みます。
海外でよくある、こういったバスツアーでの一週間は、移動はもちろんのこと、食事の準備や後片付け、ほとんどの時間を同じメンバーで過ごし、宿泊所も個室ではなく、シャワー室も共同なので、もはや合宿のようでもあり、ツアー中に恋愛バトルが起こるなんてこともよくあります。
世界各国から集まった性格も文化もバラバラの仲間と過ごす時間。
友達のネットワーク作りに励む人もいれば、
皆をまとめるリーダー的存在になる人、
お笑い担当ムードメーカー、
なんとなくヤング層に色々相談されて世話係になってしまう年配の方や、
本を片手に一人を貫く人、
とそれぞれ役割が決まり、その上面白いことに、欧米人チーム、アジア人チーム、ポピュラーグループ、控えめなグループなど、所属するグループまでもが誕生し、そこには優劣が生まれ、一種の社会生活が始まります。
日本文化において美徳とされること、調和、譲り合い、人の気持ちを組んで行動することが所変われば、仇となり痛い目に合うこともありました。
例えば、シャワーの順番を譲った結果、タンクのお湯が無くなり、水しか出なかった。
食事の配給を最後まで譲っていたら、おかわりする輩が先に並び始め、自分の分が無くなってしまった。
ベッドを選ぶ際に遠慮していたら、いつもギシギシ揺れる残り物、二段ベッドの上段だった。などなど。
そして、その経験から少しずつ、私は自分の気持ちに正直になる強さを身に着け、発言することの大切さを学びました。
郷に入れば郷に従え。
豪に入れば豪に従え。
そこで、今回の旅の始めに、2人で決めたことがありました。
それは、一週間と限られた時間、自分たちと、この旅にフォーカスする為、ツアー参加者との無理な交流はしない。ということ。
そこで私たちが初日のツアー仲間からの命名にあやかって、キメ込んだのが、THEサーディーンスタイル。
夜寝る前から話が盛り上がり、いつも一睡もせず日程をこなしていた私たちは、みんながお喋りする憩いの時間であるバスの移動中は決まってほぼ100%、缶の中のイワシのように後部座席に2人並んでお行儀よく、本気で睡眠をとっていました。
ですが、やはりいつものクセが出てきて、皆と仲良くなるよう積極的に接した方がいいのかな、グループ行動した方がいいのかな、嫌われないかなって不安になってブレそうになりましたが、自分たちにとって何が大切かもう一度きちんと確認し合い、覚悟を決めたところ、輪に入らずとしても、いい距離感でみんなと仲良く過ごすことができました。(ブレについてSaoriちゃんが面白い記事を書いているので詳しくはNoteで→柔軟でいたい自分とブレたくない自分)
話を元に戻します。
パディメロンの他にも、こんなことがありました。
ツアー参加者の80%以上がオプションで予約していた、「妖精の愛称を持つ、世界最小、体長わずか30㎝の野生のフェアリーペンギンウォッチング!」
日没後、海から巣のあるビーチに上がってくるペンギン達を見るという夜出発のツアーでしたが、昼間から大雨が降り続いていたので、どうやらこのままいくとペンギンツアーは雨天中止。ということで、私たち2名を省いた全員が、ロマンチックなペンギンツアーをキャンセルし、何ともおぞましい「元刑務所を訪れるホラーナイトツアー」に変更したのです。
宿泊所から先に出発したホラー組を横目に、私たちも内心ドキドキでしたが、ここは日本人。20名以上の予約客が全員キャンセルだなんて、ツアー会社も困るだろうと余計な義理人情でロマンチック街道を貫くことにしましたが、この時、なんとなく、信じれば、叶う!と強く思っていました。
そして、1時間後。バスを降りると。。。。。
雨雲はどこへやら、ビーチには満天の星空が広がっていました。
ごく少人数で行われたおかげで、知らないうちに私たちの後ろにペンギンが並んでいたり、こんなに間近で野生動物を見るのは、滝で有名な大阪箕面のお猿さん以来です。
タスマニアは面積の1/3が世界遺産自然保護地区で、ワラビーやペンギンの他にもユニークな動物がたくさん生息しています。
野生のウォンバットの生息地である草原へ行った時は、夕暮れの霧雨の中でしたが、撮った写真には無数のキラキラとした光が映っていて、おとぎ話のようで、とても幻想的。
ウォンバットはどっちかというとボッテリしていて、顔も大きく、グッドルッキングではありませんが、味があって、本当に素敵なところに住んでいて、センスあるなーって羨ましく思いました。
ごめんなさい。なんせ10年以上前のことなので、ツアーの何日目だったかは覚えていませんが、
さぁ!いよいよ本ツアーの大目玉、クレイドルマウンテン国立公園です。
前日の大雨で登山道が滑りやすくなっている為と、早朝からのあいにくの雨天の為、残念ながら登山は中止で、湖周辺の散策予定でバスは走り出しました。
ところがどっこい、みるみるうちに空は晴天に。
ツアーガイドの判断で、体力に自信があり、登山の装備が整っている者は登ってよい。ということになりました。
そこで、靴のチェックが入ります。
さすが、この山の為ににツアーに参加している!という人が多いだけに、皆さん、きちんと登山靴を履いています。
私はというと、寝不足で体力に自信はないし、山登りなんて、学校のハイキングぐらいだし、唯一の装備である、この旅行の為に買った靴は、お洒落重視で底がつんつるてんのスニーカー。
そこで、恐れていた言葉がガイドの口から発せられました。
「靴の底見せて? はい、あなたはダメ。湖周辺散歩組ね!」
山は厳しいし、危険がいっぱい。当然です。反省してます。
でも気づいたら発言してました。「ゆっくり、十分に注意を払って登り、無理だなと思ったら引き返すので、行かせてください!」
ちなみに、さおりちゃんの靴の底は、ギリギリ合格でした。
「晴天、ありがとう!登らせてくれて、ありがとう!そして、楽しく無事に登山できるよう、助けてください」登山が始まる前に、山に、大自然に、感謝とお願いをしました。
後編へつづく!
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