Yさん ショートショート 短編小説🖋

とある理系大学生です。よろしくお願いします🙇‍♂️

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仕組まれた退屈

 今少し先の未来の話である。以前も世界では一般の人が人の道を踏み外さないようにという名目で法律や条例、如何わしいサイトの削除など様々な方法で日常生活に規制が敷かれていたが、ここ数十年の間でその規制が非常に厳しくなった気がすると人々は言う。何がどう変わったというわけでは無いが、現に犯罪件数も数十年前と比べても比較にならないほど減少した。別に法律が増えて規制がきつくなったわけでは無い、ただ皆口をそろえて言うのは自分が何かに監視されている気がするということである。 N氏もそ

    • 完全記憶

      ビルの屋上で青年は嬉々とした表情で全身に風を受けていた。彼はこの世に生を受けてから20年のこの短く長い人生に終止符を打とうとしている。 彼の一番最初の記憶は真っ暗な世界である。そこでは軽い身動きしかできず、そもそもしたいという感情があったとも言えなかった。しばらくすると急に光を感じた、初めて彼は外というものに触れたのである。そして当然のごとく泣いた。これを彼が出産であったと認識するのは少し先のことである。 普通ならあるはずのない記憶をどうして彼はもっているのか、それは彼が

      • 暗くする暗闇

        暗闇は自分までもを深く深く暗く染め上げてしまう、Nはそう思った。Nは暗闇が好きだ。あの自分を包み込んでくれる静かな闇が好きだ。昔からそうだった、Nは小さい頃には靴箱によく隠れてそのまま眠ってしまったり、押し入れで寝るんだといって母を困らせたこともあった。さすがに大きくなってからはわきまえることを覚えたが、Nの中では暗闇への憧れは何ら変わっていない。 今の生活もそうだ。Nは昼のあの日差しの輝きが自分を見下しているようで嫌いで、だから働く時間は決まって夜にしている。夕方に家

        • 感情の取捨

          この惑星は争いで満ちている。もう何千年も前から争いが世界から消えた日は存在しない。指導者は口をそろえて「平和」というが誰も完璧に実現できるなんて思っていない。裁判所なんていかにも「平和」な顔をして人を言葉や文書で裁いているが、そもそも裁判所自体が争いの象徴みたいなものだ。だから人々はせめて自分の周りだけでも争いが起こらないように毎日神経をすり減らして暮らしている。だが確かに皆どこかで世界の平和を望んでいるのも事実である。  そんなある日、世界に衝撃が走った。神と名乗る存在

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        • ショートショート集
          8本

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          リプレス

           M氏はどうも言葉を発することが苦手であった。会話は特に苦手でどうもうまく言葉が出てこず、よく会話中に沈黙を生み出してしまう。それを察してか人はM氏と話すのを避けるようになって、結局M氏は大体一人でいることが多かった。だがM氏の認識は周りの人と違った。自分は話すこと別に苦手ではなく、返答を思いつくのが遅いだけであると思っていたのである。現にM氏は何かを媒体を介しての会話はそこまで不自由では無かった。例えばネット上での会話ではそこまで会話のテンポは重視されていないので、M氏はゆ

          時と金と体

          大学2年生のNは曇天が自分を笑っているような気さえした。Nは朝が嫌いだ、なにも始めから嫌いだったというわけでは無い。Nの心にのしかかるのは登校の時間の長さである。Nの自宅は大学の最寄り駅まで電車で1時間半なのだが、Nにとってこれはそこまで問題ではない、というのも電車の中ではNは基本的に瞼をふせ、休息できているからである。ただ最寄り駅から大学までの徒歩30分の道のりがNを苦しめるのである。普通の人でさえ30分のも間ただ歩くのは好まないであろう。ましてやNは昔から時間を無駄にす

          積極装置

           Sはこの世に嫌気がさしていた。確かにここ数年で世界は急に便利になった。コンビニに行っても、かつてはいた従業員の影はない。店舗も小さくなり、欲しいものをモニターに言えば、その通りの商品が出てくる。もちろん会計は自動引き落としで、今では現金を持ち歩いている人のほうが珍しい。そのお金はというと3年前から政府により国民にベーシックインカムとして生活を送るには十分な収入が与えられるようになり、仕事をする人もほとんどいなくなった。他にも昔の人から見れば考えられないかもしれないが、美容室

          【短編小説】思い出裁判

          近い未来の話である。現代では考えられないだろうが、死後の世界の研究が進みこの世を旅立ってからの大体の流れが理解されている。昔話であったように、閻魔様というものは実在しているらしく閻魔様の裁量によって死人の行く末が決定する。ただやはり昔からの話とは異なってくる箇所もある。死人は天国と地獄の2パターンではなく、10段階のランクに分けられランクに応じた生活を送ることになる。ランク10つまり最上位にあたるランクはそれはもうたいそう素晴らしい生活だそうで、人間が妄想や想像していることな