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逆噴射小説大賞応募作

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悪い子善子ちゃん

悪い子善子ちゃん

 悪い子じゃないんだけどね、という言葉に、善子ちゃんの全てが集約されている。

 吉田善子ちゃん。大学生になったばかりらしくて、私の二つ下。太ってる訳じゃないけど大柄で、元気いっぱい。レジに立つと、いらっしゃいませの声が大きすぎてお客さんが驚いて、品出しをすると、勢い余って商品を落としてしまうような子だ。

 そんな感じだから、パートの人が彼女の陰口を叩く際、たいてい最初か最後に悪い子じゃないんだ

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ゾンビ、PA、立てこもり

「すごーい! 食べ物の自販機とか初めて見た!」

 アキはロングドライブの疲れも忘れてはしゃいだ。一足先に簡素な長椅子に座った冬子は、右脚を擦りながら言う。

「アキ、早く決めちゃってよ」

「えー、でも、なんか新鮮で」

 あ、ホットスナックっていうのもあるよ!アキの高い声が、大きめの物置みたいなパーキングエリアに響いた。冬子はあくびをして机に上半身を預ける。冬子はさっきから食事を選ぶのも面倒で

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魔境猫島

魔境猫島

 猫好きが集まる島、それが猫島だ。おれの同僚も先週金曜、わざわざ有給を取って、三連休にして出かけていった。犬派のおれは、はははいってらっしゃい、と軽く見送ったが、今朝になって変てこなニュースが飛び込んできた。

『……コメンテーターの田貫さん、どう思われますか? この、人々が猫島に吸い込まれているという……』

『やっぱり現代人は疲れてますからね、癒やしを求めて、でしょう』

『でも、この人数です

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六月の夫

 新メニュー、あじさいのかき揚げとかどうかな、と紗栄子に言われて、幸はうーんと首を捻った。

「毒があるって聞いた気がする」

「うわ。じゃあ駄目だね」

 紗栄子は肩を竦めて猪口を傾ける。でも良いアイデアだったよと励ましながら、幸は茄子のひばり和えを出した。彼女は顔をほころばせ、いただきますと箸を伸ばす。こういう笑顔を見る度、この店を継いで良かったなと思う。

 幸が母の小料理屋を継いだのは十年

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田中助手の時間旅行

田中助手の時間旅行

「ついに出来たぞ、タイムマシンが!」

 神林博士は嗄れた声で高らかに叫ぶ。棚の中のビーカーすら割れんばかりの声量に、助手の田中は顔を顰めたが、それも気にしていないようだ。

「博士、喜ばれるお気持ちはわかりますが。実証実験がまだです」

「なに、そんなの些細な問題だ」

 神林はどこから自信が湧いてくるのか、世界を手にでもしたかのような笑みを浮かべている。田中は溜息をついた。ただ田中も喜んでいな

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