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WebMagazineタマガ

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多摩美術大学芸術学科フィールドワーク設計ゼミが発行しているウェブマガジンです。芸術関連のニュース、展覧会評、書評、美術館探訪記、美術家のインタビューなどアートにかかわる様々な記事…
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#多摩美

どうしてもミュージアムを巡りたい!〜栃木・福島旅行記〜

 2022年8月、栃木県、福島県に旅行に行った。栃木県、福島県というとまず何を思い浮かべるだろうか。温泉、避暑地、いちご、ラーメン…。どれも楽しめそうだが、これらは一度置いておいて、今回の旅の中ではミュージアムや史跡をメインに巡った。いまこのレポを読んでいるあなたが、それぞれの施設に興味を持つきっかけになればうれしく思う。 那須テディベア・ミュージアム まず紹介したいのが、栃木県那須町にある那須テディベア・ミュージアムだ。駐車場から美術館入口へ向かう道では、たくさんの『とな

下を向いて歩こう! マンホール蓋を鑑賞するのだ

 「前を見て歩きなさい!」誰もが一度は言われたことがあるだろう。前を見る理由はただひとつ。見ていないと危険だからだ。しかし、前だけを見ていてはわからない世界もある。上には電柱、高層マンション、鳥、飛行機…挙げたらきりがない。下にも同じく色々なものがある。小石、雑草、そしてマンホール。  デザインマンホールをご存知だろうか。その土地にゆかりのあるキャラクターなどをマンホールにしたものである。自治体と提携をしているマンホールのみならず、ポケットモンスターとコラボした「ポケふた」

ミニチュアで黄ばみやかみ跡まで表現

INTERVIEW/しばたたかひろ(アニメーション/映像作家)  鍵盤ハーモニカ、冷凍うどん、鉛筆の削りかす——。誰もが目にしたことがある、日常に存在するさまざまな「モノ」。実はこの記事の写真で紹介しているモノは、樹脂やこむぎねんどで作られたミニチュア作品だ。制作しているのは、アニメーション/映像作家のしばたたかひろさん。写真を見ただけだと本物と見紛うばかりのこれらの作品は、どのように作られているのか。そもそも、ミニチュア作品の魅力はどこにあるのか。SNSやメディアを通して

シリーズ「村田朋泰の世界」File.01 アニメーションから生まれたインスタレーション

昨秋、多摩美術大学八王子キャンパスのアートテーク棟の前を通ったときに、ガラス越しに見える赤と白のコントラストに目を留めた学生は多かったのではないだろうか。そこで開催されていたのは、本学芸術学科の展覧会設計ゼミ(担当:家村珠代教授)が企画し、毎年1回学生と作家が協働で作り上げていく『家村ゼミ展』だった。2021年は人形アニメーション作家の村田朋泰氏を迎え、10月4日から19日まで『家村ゼミ展2021「今年は、村田朋泰。―ほし 星 ホシ―」』というタイトルで開催した。美術館でも街

もっと身近に、お守りのように

INTERVIEW / 菅 風子(ガラス作家)  生活に身近な素材、ガラス。その透明性や美しい質感に魅せられた工芸作家の菅風子さんは、日常や旅先のこと、曖昧な記憶を形にする。菅さんはガラスで目に見えないものへ思いを馳せる。  「透明だけど、輪郭がある。確かにそこにあるんです」   ガラスを中心に扱う作家、菅風子さんはそう話す。一見、触れることもできないような透明な輪郭。「そこにある」という言葉にはっとする。  菅さんは多摩美術大学工芸学科のガラス専攻を卒業後、都内の展示に

奥行きを味わうーペンタブから絵の世界へ

INTERVIEW/NIERIKA(イラストレーター)  「直接的な表現より、示唆的な表現が好きです」こう話すNIERIKAさんの、独特な世界観を探る。  NIERIKAさんは、ホラー要素を含む味わい深い作品を制作している。イラストを描き始めたきっかけは、小学5年生のころにペンタブレットを親に買ってもらったことだった。インターネットでさまざまな作品や講座を見て勉強し、絵の世界に引き込まれていった。その情熱は成長するにつれて大きくなり、もっと美術について学びたいという思いか

カードゲーム『PLAY!たぐコレ』で 「現代アート」と遊んでみた

 「アート」の表現や解釈に正解はない。表現する側も、鑑賞して受け取る側も、さまざまな感情や感想を持つものだ。そこには当たりも外れもなく、自由な解釈が出来るのが面白いところである。だからこそ、作品を鑑賞して「よくわからない」と思ってしまうのはもったいない。そこで、今回は現代アートをもっと直観的に、感覚的に、遊ぶように鑑賞をすることができる『PLAY!たぐコレ』というカードゲームを紹介したい。まずは、実際に遊んでみることにした。  木々の葉の色が深まっていく11月中旬。多摩美術

自然に囲まれたDIC川村記念美術館で「クリストとジャンヌ=クロード展」を見る

 8月も終わりに近づく頃、ふと今年の夏に思いを馳せた。現在も新型コロナウイルスの影響が続く中、休業している施設も多く、外出する機会が減ったという人も多い。不要不急とされるものから娯楽が除外されることに落胆を覚えた人も多いだろう。そこで一度都会の喧騒(けんそう)から離れ、美術に触れてみるのも悪くない。目的地は千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館。終わりかけた夏の思い出づくりに、広大な自然の中ひっそりとたたずむ美術館はぴったりだった。  8月29日。京成佐倉駅から無料の送迎バスに

コロナ禍で変わる「ばえる」概念

美術館に「ばえる」という概念は何をもたらしているのか。オンラインメディアに造詣が深いキュレーターの四方幸子氏(キュレーター、批評家/多摩美術大学・東京造形大学客員教授)に聞いた。 本記事は、多摩美術大学芸術学科フィールドワーク設計ゼミが発行しているアート誌『Whooops!』Vol.29(2021年10月21日発行予定)P.10に掲載される同タイトルの記事のフルヴァージョンです。Whooops!誌からの問いに対して四方氏が答えるQA形式で記事を構成しております。 はじめに