![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70392942/rectangle_large_type_2_33f387dd96cd4908a9d51af5fb7a23d0.jpg?width=1200)
ミニチュアで黄ばみやかみ跡まで表現
INTERVIEW/しばたたかひろ(アニメーション/映像作家)
鍵盤ハーモニカ、冷凍うどん、鉛筆の削りかす——。誰もが目にしたことがある、日常に存在するさまざまな「モノ」。実はこの記事の写真で紹介しているモノは、樹脂やこむぎねんどで作られたミニチュア作品だ。制作しているのは、アニメーション/映像作家のしばたたかひろさん。写真を見ただけだと本物と見紛うばかりのこれらの作品は、どのように作られているのか。そもそも、ミニチュア作品の魅力はどこにあるのか。SNSやメディアを通してさまざまなミニチュア作品を制作しているしばたさんに語ってもらった。
![冷えピタ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70398193/picture_pc_217d7163a24a212440fb827fa13d99da.png?width=1200)
「現実世界を作りたい」
しばたさんのミニチュア制作へのこだわりは、日常にあるもの、ファンタジーではなく現実にあるものを作ることだ。しかも、こむぎねんどを材料にした《カレーのごみ》や《冷えピタ》のように、日常の脇役にスポットを当てた作品を制作している。日常に存在する、ありふれたモノをミニチュア作品にすることの意外性を大切にしているという。
![鉛筆だったもの](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70398324/picture_pc_02fc3e258de2d6b33102e284e2d58dbf.png?width=1200)
たとえばブローチの場合、大体2週間ほどかけて制作しているという。一番時間がかかるのは、原型作りだ。ただ型をとるだけでなく、流し込んだ樹脂を取り出せるような工夫をしなければならない。以前制作したDIY用の道具グルーガンを模した《グルーガンのブローチ》は、非常に形状が複雑だったためシリコンでうまく型が取れず、苦戦してしまった。それは、「型の取りやすさ」と「デフォルメの仕方」の重要さを知る経験になった。ただ小さくして元の形に忠実に再現すればいいというわけではない。そのモノの持つ雰囲気がいかによく出るかが大切なのだ。
細部の再現性へのこだわりは、とにかく半端ではない。中でも《鍵盤ハーモニカ》という作品では、本体の黄ばみや鍵盤に貼られた音階のシールが途中で抜けているところから、唄口のかみ跡まで、とことんリアルさを追求した。しばたさん本人にとってもお気に入りの作品だという。
色はどの作品を作る上でも重視している。色はモノを見たときにすぐに入ってくる情報であり、微妙な差異がモノの現実感を変える。作品を見た人に、そうした細かい部分の再現性に気づいてもらうと、うれしくなると言う。
![鍵盤ハーモニカ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70398337/picture_pc_cdcd28781434924cd5461dcdb594af5a.jpg?width=1200)
近年ミニチュアは、ブームと言っていいほどたくさんの製品が発売されている。多くは「カプセルトイ」、いわゆるガチャガチャのおもちゃだ。商業施設のガチャガチャコーナーに行くと、少なくとも1つは「なんでこんなものが」と驚いてしまうようなユニークなミニチュア製品が置かれている。こうしたブームも、そのかわいさと、モチーフの意外性から生まれるギャップが人々の心に火をつけて発生したのだろう。
しばたさんのミニチュアはそうしたかわいさばかりではなく、細部の表現を徹底的に突き詰めている。見る者がその世界に思わず引き込まれるゆえんである。
![カレーのゴミ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70397833/picture_pc_718dd956204939690d2fc7393a3e22b3.png?width=1200)
取材・文=村尾青空
写真提供=しばたたかひろ
しばたたかひろ
1992年5月10日、愛知県岡崎市生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。
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