多摩美術大学芸術学科フィールドワーク設計ゼミ

多摩美術大学芸術学科で小川敦生教授が担当しているゼミです。

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  • WebMagazineタマガ

    多摩美術大学芸術学科フィールドワーク設計ゼミが発行しているウェブマガジンです。芸術関連のニュース、展覧会評、書評、美術館探訪記、美術家のインタビューなどアートにかかわる様々な記事を掲載します。

最近の記事

デザイナー大原大次郎の「手」の痕跡を見る

 東京・銀座のギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の大原大次郎の展覧会「Daijiro Ohara HAND BOOK」を訪ねた。  2023年12月に出版された作品集「HAND BOOK 大原大次郎 Works & Process」と同名を冠した本展覧会では、グラフィック・デザイナーとして知られる大原大次郎の創作活動に共通する「手」=HAND を使った仕事の数々が展示されている。作品集を読み進めていくような形で鑑賞することができる。  ギャラリーに入ると、大原の仕事

    • 秋山光洋(舞台美術家)~人気2.5次元舞台シリーズ『弱虫ペダル』の巨大スロープの秘密~

       『ペダステ』では、スロープが舞台装置として設置されている。「パズルライダー」と呼ばれるキャストたちが手動で動かし、時に学校の裏の坂、インターハイ序盤の峠、はたまた最終決戦が繰り広げられる坂とさまざまなレースコースに変化する。物語の大半がレース場面の『ペダステ』では、必要不可欠な舞台装置だ。  しかし、秋山さんが初めて演出家の西田シャトナーさんに会ったときには、「正直自分の演出の感覚では、セットがなくてもできるんです」と言われたそうだ。「でもセットでさらに面白くなることがあ

      • 【タマガ探訪記】 彫刻になったゴッホと箱根で出会う

        彫刻の森美術館(神奈川県箱根町) 訪れたのは11月中旬の平日。雲ひとつない快晴、屋外展示を楽しむのにうってつけの彫刻の森美術館日和だった。日本人だけでなく外国人も多く訪れており、平日にもかかわらず賑わいをみせていた。7万平米もあるという広大な敷地の中に約120の彫刻が置かれている。作品には触らないのが基本的なルールだが、中に入ったり腰掛けたりできるものもある。音声ガイドのある作品も15個あり、作品の見方を教えてくれる。 印象に残った彫刻をいくつか紹介しよう。1つ

        • 【タマガ体験記】カフェでポタリーペインティングをやってみた @ぽたかふぇ。(東京・高円寺)

           2023年10月、東京・高円寺にある「ぽたかふぇ。」を訪れた。2012年4月にオープンした、ポタリーペインティング(陶器の下絵付け)ができるギャラリーカフェだ。カフェを営業しながら、展示とポタリーペインティングのワークショップを行っている。このほど、記者は陶器に絵を描く楽しみを体験すべく、同店のワークショップに参加した。  店に続く階段を上り切ると、店長の松永美樹さんが笑顔で迎えてくれた。店内には作家のイラストや絵画、松永さんお気に入りの雑貨などが飾られていた。 ポタリ

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          眠れないホテル、MANGA ART HOTEL,TOKYOに宿泊してみた!

           MANGA ART HOTEL,TOKYOは地下鉄神保町駅から7分ほど歩いた、地上9階建ての商業ビルの4階と5階にある。4階が女性専用フロア、5階が男性専用フロアとなっている。チェックインは5階で行うが、それ以外にフロアの行き来はできない。  チェックインを済ませ、4階の鍵番号を入力してドアを開けると、”MANGA ROOM"と書かれた扉が目の前に現れた。扉を開けた先には今年漫画大賞を受賞した漫画が1位から順に並べられている。さらに奥へ入っていくと、所狭しと漫画が並んだ空間

          眠れないホテル、MANGA ART HOTEL,TOKYOに宿泊してみた!

          自然光で日高理恵子の「空」を見る

           家村ゼミ展2023『空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く』が、多摩美術大学八王子キャンパスのアートテークギャラリーで開催されている。展覧会名のごとく、人工照明を用いずに絵画を自然光のみによって見せている。同ギャラリーの4つの部屋に展示されている日高理恵子の作品は計5点。それぞれに、異なる姿の樹木が描かれている。同ギャラリーにある複数の大きなガラス窓からの採光の下で、それらの絵は空間に溶け込んだかのように存在し、自然の美しさを放っているようにも感じられた。  201

          未来を望む! 新たな国際アートフェア「Tokyo Gendai」を訪ねて

           フェア初日の7月7日は、日本や中国で毎年行われる伝統行事「七夕」である。会場中央では、そのイメージを表現に取り入れたという彫刻家・大平龍一のインスタレーション作品《The Circuit》が展示された。今回のアートフェアのために制作されたものという。たくさんの彫刻が立つ中に、レース場のような「サーキット」が敷かれている。伝統的な美意識や文化の多様性を問うコンセプトと、ダイナミックな展示方法が印象的だった。 アートの未来のあり方を感じる展示  Tokyo Gendaiは、

          未来を望む! 新たな国際アートフェア「Tokyo Gendai」を訪ねて

          ヴィジュアル作品としての表現を追究した詩人・北園克衛の資料が物語るもの

          1993年に「北園克衛文庫」を設立  北園は、日本を代表するモダニズム詩人であり、詩作のほか評論の執筆、雑誌の編集、書籍の装幀など幅広い分野で活躍した。本学は北園の多くの資料を収蔵する機会を得て1993年に「北園克衛文庫」を設立し、関連の展覧会を開くなど顕彰に務めてきた。 詩をヴィジュアル作品として捉えた北園  「紙面の広がり、漢字とかなの配分、レイアウト、フォント、すべてに明晰な北園の美学が冴えわたっている」「抽象絵画のような、具象彫刻のような、北園の独自の詩世界」と

          ヴィジュアル作品としての表現を追究した詩人・北園克衛の資料が物語るもの

          安藤礼二教授のイラン旅行記〜「シルクロードの先に日本が見えた」

           9月に2週間ほどイランを旅した多摩美術大学芸術学科教授の安藤礼二氏に、現地についての話を聞いた。「シルクロードの先に日本が見えるような感覚を覚えた」という。  羽田空港から安藤教授が出発したのは、9月8日だった。イランへは、タイとカタールの空港で乗り継いで向かったため、空港での待ち時間も含めて到着までに24時間以上かかったという。  今回、イランへ向かった目的は、建築家の磯崎新氏が中心となって行う『間』展をイランで開催する準備のためだった。初めてイランを訪れた安藤教授は

          安藤礼二教授のイラン旅行記〜「シルクロードの先に日本が見えた」

          どうしてもミュージアムを巡りたい!〜栃木・福島旅行記〜

           2022年8月、栃木県、福島県に旅行に行った。栃木県、福島県というとまず何を思い浮かべるだろうか。温泉、避暑地、いちご、ラーメン…。どれも楽しめそうだが、これらは一度置いておいて、今回の旅の中ではミュージアムや史跡をメインに巡った。いまこのレポを読んでいるあなたが、それぞれの施設に興味を持つきっかけになればうれしく思う。 那須テディベア・ミュージアム まず紹介したいのが、栃木県那須町にある那須テディベア・ミュージアムだ。駐車場から美術館入口へ向かう道では、たくさんの『とな

          どうしてもミュージアムを巡りたい!〜栃木・福島旅行記〜

          下を向いて歩こう! マンホール蓋を鑑賞するのだ

           「前を見て歩きなさい!」誰もが一度は言われたことがあるだろう。前を見る理由はただひとつ。見ていないと危険だからだ。しかし、前だけを見ていてはわからない世界もある。上には電柱、高層マンション、鳥、飛行機…挙げたらきりがない。下にも同じく色々なものがある。小石、雑草、そしてマンホール。  デザインマンホールをご存知だろうか。その土地にゆかりのあるキャラクターなどをマンホールにしたものである。自治体と提携をしているマンホールのみならず、ポケットモンスターとコラボした「ポケふた」

          下を向いて歩こう! マンホール蓋を鑑賞するのだ

          ミニチュアで黄ばみやかみ跡まで表現

          INTERVIEW/しばたたかひろ(アニメーション/映像作家)  鍵盤ハーモニカ、冷凍うどん、鉛筆の削りかす——。誰もが目にしたことがある、日常に存在するさまざまな「モノ」。実はこの記事の写真で紹介しているモノは、樹脂やこむぎねんどで作られたミニチュア作品だ。制作しているのは、アニメーション/映像作家のしばたたかひろさん。写真を見ただけだと本物と見紛うばかりのこれらの作品は、どのように作られているのか。そもそも、ミニチュア作品の魅力はどこにあるのか。SNSやメディアを通して

          ミニチュアで黄ばみやかみ跡まで表現

          シリーズ「村田朋泰の世界」File.01 アニメーションから生まれたインスタレーション

          昨秋、多摩美術大学八王子キャンパスのアートテーク棟の前を通ったときに、ガラス越しに見える赤と白のコントラストに目を留めた学生は多かったのではないだろうか。そこで開催されていたのは、本学芸術学科の展覧会設計ゼミ(担当:家村珠代教授)が企画し、毎年1回学生と作家が協働で作り上げていく『家村ゼミ展』だった。2021年は人形アニメーション作家の村田朋泰氏を迎え、10月4日から19日まで『家村ゼミ展2021「今年は、村田朋泰。―ほし 星 ホシ―」』というタイトルで開催した。美術館でも街

          シリーズ「村田朋泰の世界」File.01 アニメーションから生まれたインスタレーション

          もっと身近に、お守りのように

          INTERVIEW / 菅 風子(ガラス作家)  生活に身近な素材、ガラス。その透明性や美しい質感に魅せられた工芸作家の菅風子さんは、日常や旅先のこと、曖昧な記憶を形にする。菅さんはガラスで目に見えないものへ思いを馳せる。  「透明だけど、輪郭がある。確かにそこにあるんです」   ガラスを中心に扱う作家、菅風子さんはそう話す。一見、触れることもできないような透明な輪郭。「そこにある」という言葉にはっとする。  菅さんは多摩美術大学工芸学科のガラス専攻を卒業後、都内の展示に

          奥行きを味わうーペンタブから絵の世界へ

          INTERVIEW/NIERIKA(イラストレーター)  「直接的な表現より、示唆的な表現が好きです」こう話すNIERIKAさんの、独特な世界観を探る。  NIERIKAさんは、ホラー要素を含む味わい深い作品を制作している。イラストを描き始めたきっかけは、小学5年生のころにペンタブレットを親に買ってもらったことだった。インターネットでさまざまな作品や講座を見て勉強し、絵の世界に引き込まれていった。その情熱は成長するにつれて大きくなり、もっと美術について学びたいという思いか

          奥行きを味わうーペンタブから絵の世界へ

          カードゲーム『PLAY!たぐコレ』で 「現代アート」と遊んでみた

           「アート」の表現や解釈に正解はない。表現する側も、鑑賞して受け取る側も、さまざまな感情や感想を持つものだ。そこには当たりも外れもなく、自由な解釈が出来るのが面白いところである。だからこそ、作品を鑑賞して「よくわからない」と思ってしまうのはもったいない。そこで、今回は現代アートをもっと直観的に、感覚的に、遊ぶように鑑賞をすることができる『PLAY!たぐコレ』というカードゲームを紹介したい。まずは、実際に遊んでみることにした。  木々の葉の色が深まっていく11月中旬。多摩美術

          カードゲーム『PLAY!たぐコレ』で 「現代アート」と遊んでみた