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奥行きを味わうーペンタブから絵の世界へ

INTERVIEW/NIERIKA(イラストレーター)

 「直接的な表現より、示唆的な表現が好きです」こう話すNIERIKAさんの、独特な世界観を探る。

 NIERIKAさんは、ホラー要素を含む味わい深い作品を制作している。イラストを描き始めたきっかけは、小学5年生のころにペンタブレットを親に買ってもらったことだった。インターネットでさまざまな作品や講座を見て勉強し、絵の世界に引き込まれていった。その情熱は成長するにつれて大きくなり、もっと美術について学びたいという思いから、大学受験では東京藝術大学のみを受験した。結果見事、美術学部先端芸術表現科に現役合格を果たし、現在もキャンパスライフを送っている。
 藝大の授業はさまざまで、これまで受けた中で印象的だったのは、2mの球体を制作する授業だった。いくつかのグループに分かれ、なるべく速く転がる球体を作ることを目標にグループワークを行い、コミュニケーションを取りながら作品を作る楽しさを学んだ。また、先端芸術表現科は絵画以外の分野を主に手がけている人も多くいるため、学友から新しい刺激を受けた。藝大に入学してよかったと感じたことだったという。
 普段はたいてい何かしらの作品を制作している。見るからに完成度が高いのだが、よほどじっくり向き合って描いているのかと思いきや、制作時間の短さに驚かされる。《風船》は1日、《兎》は2時間程度で描いたそうだ。テーマは特定の何かに執着しているわけではなく、その時に感じたものを筆に乗せて描いているという。
 「直接的な表現よりは示唆的な表現が好きなんです」
 だから自然と奥行きのある作品が生まれるのだろう。魅力の秘密はここにあったのかと、納得した。
 大切にしていることは、「描いていて楽しいかどうか」。飽きっぽいため、楽しくなくなったら放り出す。一方で、好みがすぐに移り変わることから、どういう作品なら楽しいかは一概には言えないという。
 他のアーティストの作品にも大いに刺激を受けているという。いい作品を見たら、「どの要素に惹かれたのか、抜き出して換骨奪胎できないか」などと考える。特に空想的な図柄のシモン・ストーレンハーグやスポーツの場面をよく描くバーニー・フュークスが好きで、空間と色、その関係には大いに興味があるそうだ。とはいえ、眼高手低、すなわち口だけの批評にはならないよう常に心がけ、謙虚に制作に取り組んでいるという。

取材・文=伊藤千聡
写真提供=NIERIKA

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《風船》2018年10月

うさぎ

《兎》2020年10月

NIERIKA(にえりか)
2018年4月東京藝術大学美術学部先端芸術表現科に入学。Instagram(ni_e_ri_ka)にて、色彩豊かで独特な世界観を持つ作品を載せるイラストレーター。2020年7月、新宿眼科画廊にてグループ展『未日常』に参加。過去にアーティストsamayuzameの名刺、ロゴデザインを担当。また、ANOINBAEの曲『CHILDREN』のMVイラストを担当するなど、幅広く活動をしている。

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