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【税金Q&A】少額資産の損金算入

<質問>取得価額が少額な減価償却資産の損金算入ルールが改正されたのですか?


<答え>

 2022年4月1日以後の取得分から、貸付け(主要な事業として行われるものは除く)に供した資産が除かれることとなりました。
 これは、ドローンなどの少額資産を大量に取得して損金算入することで、取得年度の利益を圧縮するとともに、その後の事業年度で賃料収入を計上する節税スキームが問題視されたためです。
 もちろん、主要な事業として行われる貸付け用資産の取得は、従来どおり損金算入の対象です。

(注)損金算入・・・会計で費用損失として経理した項目につき税務も認める(文句を言わない)こと。反対に、会計で費用損失として経理した項目を、税務では認めないことを損金不算入といいます。

◆ 節税の大原則は「投下資本の早期回収」

 会社の節税およびファイナンス理論の視点で企業価値を高めるためにも、資産購入のために要した支出額はできるかぎり早く損金算入するとともに、税金納付を遅らせることが大切です。
 資産購入のために費やした資金を早めに損金算入することを「投下資本の早期回収」といいます。

 

◆ 少額減価償却資産の損金算入特例

 取得価額が少額な減価償却資産については、事業のために使用した時に、一時に損金算入できる3つの特例が設けられています。
 これらの3つの特例は、事業の用に供した日の属する事業年度において、「損金経理」することが要件となっています。損金経理とは、確定した決算(株主総会での承認を受けるまたは報告する決算)において費用または損失として経理することをいいます。
 損益計算書において、意思表示を持って、費用または損失として処理することが要件ということです。

 また、当期中に購入した少額減価償却資産であっても、未使用のままでは損金の額に算入されません。
 「今期の決算は、予想以上に儲かっちゃった!」ということで、あわてて少額減価償却資産を山ほど購入しても、梱包も開けずに積んでいるのでは、損金算入されません。あくまで事業供用時に損金算入されます。


(1)少額な減価償却資産の損金算入
 
 取得価額が10万円未満
または使用可能期間が1年未満の減価償却資産は、会社の規模を問わず、事業供用時に損金経理することにより一時に損金算入できます。
 
 取得価額が10万円未満かどうかは、通常1単位として取引される単位ごとに判断します。機械及び装置は1台または1基ごと、器具備品は1個、1組または1揃いごとの取得価額が判断基準となります。

 たとえば応接セットなどでは、椅子1脚、テーブル1台はそれぞれ10万円未満でも別々に判断するのではなく、1セットとしての取得価額により少額減価償却資産であるかどうかを判断します。
 この他、同一の色調やデザインで統一されたカーテンなどの器具備品は、単体で機能を発揮できない資産として、1枚ごとではなく部屋全体の取得価額で判断します。他の会社と共有で購入した減価償却資産の場合には、自社の所有権の及ぶ範囲内である持分の取得価額が10万円未満であれば、少額減価償却資産として損金の額に算入できます。

 使用可能期間が1年未満であるかは、同業種における使用・補充状況から消耗性のものと認識されているか、または自社の過去3年間における平均的な使用・補充状況から判断します。

 この規定により損金経理した少額資産は、市町村役場が課税主体となって賦課する償却資産税も課税されません。

(2)一括償却資産の損金算入

 取得価額10万円以上20万円未満の資産については、会社の規模を問わず、その事業年度中に事業供用した資産の取得価額の合計額を一括(ひとくくりに)して3年間で、各年3分の1ずつ損金算入できます。

 各資産の事業供用月数に関係なく、一括償却資産の取得価額の合計額を、事業供用年度を含めた3年間で均等に償却します。1日だけ事業に使用した資産であっても、取得価額の3分の1に相当する金額が損金算入されます。
 反対に、事業供用後の事業年度で売却や除却、滅失した場合にも、3年間の均等償却を継続しなければなりません。

 一括償却資産の損金算入により損金経理した資産については、償却資産税も課税されません。

(3)中小企業者等に対する特例

 「中小企業者等」は、取得価額30万円未満の少額減価償却資産について、年合計300万円まで、事業供用時に、その全額を一時に損金算入できます。
 中小企業者等とは資本金1億円以下の中小企業(資本金1億円超の大法人の子会社等を除く)と農業協同組合等をいいます。
 この特例は、従業員数が500人を超える中小企業、当期前3年間の平均年所得金額が15億円を超える中小企業には適用されません。

 たとえば、1事業年度中に28万円のパソコンを11台購入して事業供用した場合には、10台分の取得価額280万円については一時に損金算入され、取得価額の限度額300万円を超える1台分28万円は特例の対象から除かれます。
 11台目のパソコンは器具備品として資産計上し、本来の耐用年数(パソコンは4年)に応じて減価償却費を計上することにより損金算入します。

 なお、この中小企業者等に対する特例を適用して、一時に損金算入した30万円未満の少額減価償却資産については、償却資産税は課税されますので、個別の資産管理は必要となります。


◆ ビジネスに不可欠な金利意識

 これらの規定の適用は、税金の減免措置ではなく、コストの先取りです。  
 つまり利益の繰延べであり、資産の購入から売却時までの通期で見れば、納税額が減少するわけではありません。

 しかし、ビジネスに不可欠な金利意識の観点からも、投下資本の早期回収を心掛けていただき、費用化できるものは早く費用化することが大事です。
 そして、なおかつ、利益を計上できる会社であれば、本当に実力のある会社だといえます。

 


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