見出し画像

元研究開発者の日々の情報:2.新型コロナによる不安と不眠(2020年12月20日号)

(1)不安

①コロナ危機下の価値観に関する国際調査

慶應義塾大学のなどは、「コロナ危機下の価値観に関する国際調査」の日本版第1波調査の結果しています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を経験した人や、ふだんから不安を感じやすい人、幸福感の低い人で、COVID-19に関する不安(緊張、落込み、孤独感など)が大きいことが明らかになしました。

②COVID-19の経験や不安を100の国や地域で調査

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する、日本人の経験や不安、政府・地方自治体の首長・医療関係者・メディアへの信頼、国・社会・経済の未来予\\などの調査。

この調査を始動したのは、「世界価値観調査協会」のクリスチャン・ヴェルツェル氏ら。同調査はおよそ100の国や地域で継続的に実施されている。

その一環として日本チームは、緊急事態宣言下の地域(北海道・東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・大阪府・京都府・兵庫県)と解除下の地域に分かれた2020年5月中旬に、全国居住の成人3,000人を対象にインターネット調査を実施しました。

研究は、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の谷口尚子教授、同訪問研究員のプラメン アカリースキ博士、名古屋商科大学ビジネススクールのパク ジュナ准教授、電通総研によるものです。

③健康・仕事・家庭に対するCOVID-19の影響を強く経験したのは、緊急事態宣言下の都道府県の居住者や若年層。

COVID-19に関する経験(コロナ関連経験)として多かったのは、「感染を疑う軽い症状を経験」(5.1%)、「仕事を失った」(3.2%)、「パートタイムの仕事を減らされた」(9.5%)、「テレワークで仕事をした」(19%)、「(学校や幼稚園などが休みなので)家で自分の子どもの世話をした」(9.9%)などでした。

男性は自身や親しい人の感染や症状の経験が多い一方、

女性は失職・労働時間短縮・家庭内育児の経験が多い傾向がみられています。

若年層で健康・仕事への影響がやや大きい傾向にあり、テレワーク化も進んでいる。

緊急事態宣言下の都道府県居住者の方が解除地域居住者より、より強く影響を経験している。

特に不安が大きかったのは、COVID-19関連の経験がある人、ふだんから不安を感じやすい人、幸福感の低いでした。

5月前半の時点で、6割が「不安・緊張」を、4割が「心配」「落ち込み」「意欲減退」を、3割が「孤独感」を感じていました。

さらに、COVID-19危機下における「不安感・落ち込み・孤独感」には個人差があることが分かりました。

④COVID-19について不安を感じている人は、政府(国)・地方自治体の首長・医療関係者・メディアに対する信頼感が低い。

信頼している対象として多かったのは、「医療関係者・専門家」(76.2%)、「私企業」(54.6%)、「地方自治体の首長」(52.2%)、「メディア(報道機関)」(37%)、「政府(国)」(35.2%でした。

男性は政府(国)を信頼し、女性は医療関係者・専門家やメディアを信頼している傾向がみられた。緊急事態宣言が解除された地域の居住者の方が、政府やメディアへの信頼がやや高い傾向もみられました。

50代以上では全般的に信頼感が高く、とくに医療関係者への信頼が厚い。

またコロナ関連の経験をした人も、医療関係者やメディアへの信頼感が高かった。

不安を感じている人の信頼感は全般的に低く、とくに政治(国・地方)や企業への信頼が低い傾向がみられています。

また、テレビや新聞などの伝統的なメディアへの信頼とTwitterやFacebookといったソーシャルメディアへの信頼を比べると、全体としては半数近くの人がテレビや新聞などの伝統的なメディアをより信頼するものの、若い人ほどソーシャルメディアを信頼する傾向がみられた。

画像1

出典:2

⑤コロナ危機では、いつも以上に他者との「連帯」を感じている人もいるが、不安を感じている人は他者をやや厳しくみている。 

他者のふるまいへの評価と連帯感についての調査では、「コロナ危機の中で、日本の大多数の人は適切にふるまっていると思う」(43%)、「(同)とは思わない」(26%)、「最近、他の人と会うと、いつも以上に連帯を感じる」(16%)、「(同)とは感じない」(12%)という結果になりました。

危機にあって、他者に対してポジティブな思いを抱いている人の方が多いことが分かりました。

ただし「最近2週間で不安を感じた人」に限ると、「日本の大多数の人は適切にふるまっていると思わない」という回答が29%に、「連帯を感じない」という回答が16%にそれぞれ増え、やや厳しい評価になった。

画像2

出典:2

⑥多くの人が、今後の感染の可能性や国・経済の先行きについて、強い不安を感じている。また、経済や福祉の安定した社会を求めている。

「ウィズ/ポスト・コロナ」時代における個人・国・経済・社会に関する見通しについての質問では、「自分や自分の愛する人が、COVID-19に感染したり、ひどく苦しんだりすることを恐れている」(73%)、「今後の不景気で苦しむことを恐れている」(72%)という回答が多く、多くの人が先行きを心配していることが分かりました。

また「コロナ危機をくぐり抜けたあと、日本はひどく傷ついた状態になっている」と思う人は46%だったのに対し、「とても強くなっている」と思う人は8%にとどまり、悲観的に感じている人が多いことも分かった。

経済の回復に期待を寄せている傾向があり、「環境保護より経済成長優先」という意見の方が多く、また科学技術による問題の解決も望まれているという結果になった。

今後日本が目指すべき方向性としては、「自由な競争を重んじるものの、税負担が大きくても福祉などが充実し、国が国民の安全と経済の安定を導くような社会が望ましい」という志向がみられました。

COVID-19対策で財政規模が膨らむ中、公共投資などによる経済成長を重んじるべきか、財政規律を考えるべきかどうかという質問では、意見が割れています。

⑦コロナに対する不安を減らして、ともに安定した社会を


COVID-19に関する影響・不安・不信の構造を図で示すと、緊急事態宣言下の都道府県の居住者や若い人が、よりコロナによる健康・仕事・家庭への影響を経験する傾向がみられました。

これらの影響を経験した人やふだんから不安を感じやすい人・持続的幸福感の低い人で、コロナに関する不安(緊張、落込み、孤独感など)が大きい傾向がありました。

不安が大きい人は、政府・地方自治体の首長・医療関係者・メディアへの信頼感も低く、他者のふるまいも厳しく評価する傾向がみられれています。

画像3

出典:2

(2)不眠

「不眠症が悪化した」「2時間おきに目が覚める」……。SNSには新型コロナ(COVID19)ウイルスの感染拡大で、睡眠リズムに変調をきたしたとの投稿が少なくないです。

感染への不安はもちろんのこと、在宅勤務などが長引いたことによるストレスや不慣れな生活、以前の日常に復帰することへの 憂鬱ゆううつ など、さまざまな要因が影響しているようです。

実は、災害と不眠の関係は、これまでにも多く研究されてきた。地震、津波、洪水などの自然災害、あるいはテロや戦争などの人為災害が発生すると、不眠に悩む人が増えることがわかっている。

2001年の米国同時多発テロでは、直接被害を受けていない周辺住民の24.5%が不眠症状となり、10%以上が夜間に悪夢を見たという。さらに、2011年に起きた長野北部地震発生後の対面調査によると、被災者の25%が不眠症状に陥っていました。これらの症状は災害直後の一時的なものにとどまりません。

2011年の東日本大震災後、石巻市内の避難所で行われた調査では、⑥か月から1年後でも15%が睡眠障害を呈し、14から21か月後になっても6.9%の被災者が睡眠関連の問題を自覚していました。

今回の新型コロナウイルスは、多数の感染者、多数死亡者(あくまで一見)を出している災害であり、目には見えない感染拡大の恐怖が人々の快眠・安眠を妨げている可能性は高いようです。

睡眠総合ケアクリニック代々木の井上雄一理事長は、「新型コロナの影響で、不眠症状で通っている患者さんの症状は悪化している」と指摘しています。

「3密回避」のため、新規の医療機関受診者は減っているものの、過去の大規模災害の例を考えると、社会活動が復活するにつれて、不眠症を訴える患者が増えていく可能性は高いようです。

就寝中の悪夢。効用もありますが。

睡眠中に悪夢を見る――。恐ろしい夢でいきなり夜間に目を覚ましたり、起床後に強い疲労感を伴ったりと、言葉で表現しにくい不安や不快さを伴った経験は、誰にでもあるはずです。

誰だって、できることなら悪夢は見たくないが、新型コロナウイルスを恐れる心理がそれを誘発してしまう可能性がああります。

睡眠健康推進機構の高橋清久理事(元国立精神・神経医療研究センター総長)は、「新型コロナへの恐怖感が、就寝中の悪夢となって表れることは不思議ではない」と話します。

悪夢は小さな子どもに多い症状。だが、大人が頻繁に見る場合には「悪夢障害」という病名がつき、ストレスや精神的な負荷が原因のこともあり、医療機関での治療対象になることもある。

高橋理事は次のように言う。

 「悪夢を見ることは異常ではなく、むしろ正常な反応。それが続いても、自分はストレスに弱い人間であるなどと考える必要はない。ストレスを自覚しているのなら、それを周囲の人に話すことが効果的だ。言葉にすることで、自分の状態を客観的に見ることができ、場合によっては、不安感など必要ないことと気づくこともある」

さらに意外なことに、悪夢には効用もあるといいます。眠っている間に悪夢を見ることで、自分の激しい感情を解放しているという事です。

「不安感や恐怖感を心の中にしまい込むことで、それらが大きくなり、不安障害やうつ病の原因となる危険がある。悪夢を見ることで、それらを表面に出し、解放することで、自らを救い出しているとも考えられる」

毎日の睡眠 今から整えて

睡眠健康推進機構では、不安の時代に良い睡眠を得るための 動画「新型コロナウイルス感染の現状にあって 心地よく眠るために」 を発表し、「生活リズムの乱れ」「食事方法」「活動量の向上」「入浴」などについて、啓発を行っています。

(3)不眠と不安

前の記事

で書いた通り、不安の背景にはセロトニンが深く関わっています。

一方、セロトニンには寝つきを良くする睡眠効果や、興奮や不快感を鎮めて精神を安定させる効果があり、不足すると睡眠障害などに陥りやすくなります。

セロトニンは、脳でメラトニンに変換されます。メラトニンは体内時計の調整を行う働きがあり、睡眠サイクルを正常にしたり時差ぼけに効果があるなど睡眠と密接な関係を持っています。

①セロトニンの原料となるトリプトファン

トリプトファンとは、牛乳から発見された必須アミノ酸のひとつで、乳製品や大豆製品、ナッツ類などの様々な食物中のたんぱく質に含まれています

食物から摂取されたトリプトファンは、肝臓や腎臓で分解され、エネルギー源として利用され、トリプトファンは脳に運ばれると、ビタミンB6やナイアシン、マグネシウムとともにセロトニンを生成します。

このセロトニンが不足すると、睡眠障害やうつ状態、不安感などが引き起こされます。脳内のトリプトファン濃度が高まるとセロトニンが増えるとされ、催眠剤や鎮痛剤としての効能が期待されています。

トリプトファンを多く含む食材として挙げられるのは、牛・豚・鶏のレバー、小麦胚芽、牛乳、チーズ、バナナ、大豆、アーモンド、かつお、まぐろなどです。バナナはトリプトファンとビタミンB6をどちらも含むので、効率よくセロトニンを作ることができます。

これらの食材を食事に取り入れると、不眠やうつ病などの解消を促すことができます。

トリプトファンは体内で合成されない必須アミノ酸であるため、毎日摂取しなければなりませんが、体が必要とする以上に摂取してしまうと、肝臓で脂肪の変化が起こり、肝硬変を招く恐れがあります。

トリプトファンの適量摂取は、精神を落ち着かせ不眠やうつ病などの解消を促してくれますが、過剰な摂取は副作用が起こる可能性があります。

うつ病治療の抗うつ剤との組み合わせにより、血圧や心拍数の変化や脳血管収縮障害などが起こる場合がありますので、投薬・服薬をしている場合は、事前に医師などへの確認が必要です。

トリプトファンの健康効果5つ

不眠解消の効果

トリプトファンは脳に運ばれると、ビタミンB6やナイアシン、マグネシウムとともに神経伝達物質であるセロトニンをつくる原料となります。セロトニンには寝つきを良くする睡眠効果や、興奮や不快感を鎮めて精神を安定させる効果があり、不足すると睡眠障害などに陥りやすくなります。

セロトニンは、脳でメラトニンに変換されます。メラトニンは体内時計の調整を行う働きがあり、睡眠サイクルを正常にしたり時差ぼけに効果があるなど睡眠と密接な関係を持っています。

美肌効果

トリプトファンには、体内で発生した活性酸素を除去する作用があることから、美肌効果があるとされています。「若返りの薬」ともいわれるメラトニンの分泌量は年齢を重ねるほど減少するといわれており、脳内のトリプトファン濃度が高まればセロトニンが増えてメラトニンとなり老化防止に効果があると期待されています。

鎮痛効果

アメリカのテンプル大学健康科学センターで、トリプトファンが鎮痛剤としての働きを持つことを証明する実験が行われ、あごに慢性的な痛みをもつ患者のグループにトリプトファンを投与してセロトニンの濃度を高めたところ、痛みの軽減に加え歯に痛みが加えられたときの耐性も強くなったとの報告があるそうです。

集中力や記憶力を高める効果

トリプトファンは、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質をつくるために、チロシンと一緒になって働きます。

ドーパミンとノルアドレナリンとは、ホルモン調節に関わり、気分を高めてやる気を生み出すホルモンです。

これまでの研究では、脳や行動障害の治療に役立つことが分かっており、不眠症やうつ病治療への効果も期待されています。

オハイオ州立大学医学部の研究では、、子どもたちに1週間トリプトファンを与えたところ、学習能力について良い結果が得られたという報告もあります。

月経前症候群(PMS)を改善する効果

トリプトファンを摂取することで、鎮痛作用や精神を安定させる効果があるため、月経前のイライラや体の不調を改善できる効果があるといわれています。

その他もトリプトファンは、免疫系に働きかけ、コレステロール値や血圧を調整したり更年期障害の症状を緩和するなど多くの効果があります。

トリプトファンと睡眠の関係

トリプトファンはセロトニンや睡眠ホルモンであるメラトニンと言った物質の材料とされ、体内でそれらの物質に合成されるため、トリプトファンが不足すると、不眠症などの睡眠障害を起こしたり、うつ病を起こしたりする可能性があります。

逆にしっかり取ることができれば、メラトニンが分泌され、眠りの質が上がり、不眠の解消なども期待できるのです。

光を浴びてセロトニンを発散

メラトニンの生成には太陽などの光が密接な関わりがあり、2500ルクス以上の光(太陽光、または人工的な強い光)を浴びると脳内で生成され、およそ14時間後に分泌されます。

メラトニンが分泌されると、体温・脈拍・血圧を下げ、眠気を誘発します。

つまり、メラトニンは『朝目覚めてから太陽光を浴び、夜になると自然と眠くなる』という人間の自然な生活サイクルを作っているのです。

この自然な生活サイクルが崩れ(夜更かしなど)、セロトニンが不足すると、メラトニンがうまく生成できなくなり、不眠症などを引き起こす原因となります。セロトニンとメラトニンはぐっすり眠るために必要ですので、その材料となるトリプトファンを摂取する事は非常に大切です。

トリプトファンの摂取量

トリプトファンの1日摂取量は体重1kgにつき2mgが目安(成人の場合)とされています。体重60kgであれば120mgが必要となり、これは普通の食生活をしている場合は問題なく摂れる量です。

しかしながら、トリプトファン単体では、セロトニンを作ることができず、ビタミンB6も摂取する必要があります。つまり、トリプトファンだけのサプリメントではあまり効果が期待できません。一番いいのは、食事とサプリでバランスよく摂取できることです。

セロトニンの原料となるトリプトファン・ビタミンB6を配合したサプリもおすすめですが、くれぐれも「過剰な摂取は副作用が起こる可能性があります。うつ病治療の抗うつ剤との組み合わせにより、血圧や心拍数の変化や脳血管収縮障害などが起こる場合がありますので、投薬・服薬をしている場合は、事前に医師などへの確認をお忘れなく」

また厚労省のホームページでは、外国では食品(サプリメントを含む)として販売されている製品であっても、医薬品成分が含まれていたり、医薬品的な効能・効果が標ぼうされていたりするものは、日本では医薬品に該当する場合があります。

・外用剤(毒薬、劇薬及び処方箋薬を除く。):標準サイズで1品目24個以内外用剤 軟膏などの外皮用薬、点眼薬など

・処方箋薬 有効で安全な使用を図るため、医師による処方が必要とされる医薬品
・毒薬、劇薬又は処方箋薬:用法用量からみて1ヶ月分以内
・上記以外の医薬品・医薬部外品:用法用量からみて2ヶ月分以内


引用:

1.【新型コロナ】日本人は何を不安に感じているか 求めるのは「安定した社会」 | ニュース | 糖尿病ネットワーク

2.慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、2020年

3.「コロナ不安」で不眠、悪夢…健やかな眠りを取り戻すには? : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)

4.「大災害と不眠」 中林孝夫、栗山健一(「精神医学」59(6)、2017)

5.スリープハック SLEEP HACK

「元研究開発者の日々の情報」は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?