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「物語」からはじめるNFTプロジェクトの立ち上げ方

この記事では、コミュニティから生まれるNFTプロジェクトの企画を整理するフレームワークをご紹介します。

はじめに

こんにちは、ささきる(佐々木大輔)です。「T&T」というサービスを通じて、「コミュニティを活性化させる道具」を提供しています。

具体的には、NFTを使ったユーザー参加型のプラットフォーム開発と物語開発をやっていまして、個別のプロジェクトでは「Game of the Lotus 遠野幻蓮譚」と「匠の守護者」には特に深く関わっています。

そこでよくこんな相談が寄せられます。

  • こんなアート作品があるんだけど、NFTでどうにかならないか?

  • こういう豪華特典が用意できる

  • とにかく集客。あたらしいお客さんに来てほしい

  • ふるさと納税の寄付の返礼品にしたい

などなど。お問い合わせをいただくのは、アーティスト、起業家、農家、役人など様々な立場の方々で、みなさんが一同に介する会議のファシリテーションを担当することもあります。
話し合いのなかで問題になるのは、何から手を付ければいいのか? アートなのか、特典なのか、集客なのか、売り場なのか。そして、それらの要素にどういうつながりがあるのか? ということです。

そのような相談を何度か受けるうちに、「こんな風に考えてみてはどうでしょうか?」というフレームワークができあがりました。それが実際に便利なものでしたので、いろんな場面で使えるように広く共有したいと思います。

Talesからはじめよう

フレームワークの全体像

まずフレームワークの全体像から示します。

NFTプロジェクトの企画を整理するフレームワーク

コミュニティの活動から生まれるNFTプロジェクトは、以下のような順番で立ち上げます。

  1. Tales(物語)… コミュニティが誇りに思えるエピソード等

  2. Tokens(験)… アートやなんらかのモノ等

  3. Utilities(用途)… 特典等

  4. Relations(つながり)… Discord、LINE、Instagram等

  5. Sales(販売)… 日本円でも売るのか、寄付の返礼品にするのか等

このフレームワークで一番伝えたいことは、「Tales(物語)からはじめよう」ということです。
コミュニティに共通の誇りは、なんらかの形で物語になっているものです。昔から伝えられている話、自分たちだけが支払った犠牲の話、困難に打ち克った話、などなど。それらが転じて、他にはない特別なエピソードになっているはずです。それを探し出すことが、プロジェクトのはじまりです。

Talesから順番にフィットさせていく

コミュニティの物語(Tales)が決まったら、その物語をもっともよく表現できる験(Tokens)を決めます。なんらかのアートや、キャラクターや、メンバーシップカードなどです。これをTales Tokens Fitと呼びます。

次に、その験から想起される用途(Utilities)を決めます。どんな場面で使えるのか、どんな特典があるのか。それがアートやキャラクターやメンバーシップカードと強い関連性があるかどうかを確認します。これをTokens Utilities Fitと呼びます。

用途が決まったら、それらに関わる人がどこでつながるか、どこに集まるかを決めます。これまでに決めたTales Tokens Utilitiesによって対象となる人々の姿が思い浮かんでいると思いますので、それにあわせてDisocrd / LINE / Instagramなどのツールを選びます。これをUtilities Relations Fitと呼びます。

最後に、そうやって集まった人々が手に入れやすい、買いやすい方法を決めます。NFTマーケットプレイスなのか、日本円などで簡単に決済してもらうのか、無料で配るのか、寄付の返礼品にするのかなど多くの選択肢がありますが、これまでに決めてきた流れに沿えば悩まずに決められるはずです。これをRelations Sales Fitと呼びます。

コミュニティに共通の「誇り」を探す

あらためて「コミュニティ」とは?

「コミュニティ」は通常、共通の目的や興味によって結びついた集まりのことを指しますが、T&Tではもっと狭義に「資産を共有する集まり」と定義しています。

具体的には、自分たちが暮らしている地域であれば、山や川といった地勢や、地名や文化がそれにあたります。それら資産の価値を育て、守っていくことに誰もが当事者であるという意味で、もっともわかりやすいコミュニティです。

一方、オンラインには、資産を共有しない単なるインタレストグラフが数多く存在します。しかしこの数年の間に、トークン(コインやNFT)を共有し合う方法が簡単になったことで、距離を隔てた見知らぬ人々の間にも資産を共有しあう、まるで地域コミュニティのような特徴をもった狭義のコミュニティが誕生するようになりました。

遠野のTalesの素は『遠野物語』、燕三条のTalesの素は「金属加工の集積地であること」

そのコミュニティのメンバーが共通して誇りを持てる物語は、おそらくすでにあるはずです。あらたに作り出す必要はありません。それは、見つけられるのを待っています。

観光客向けの物語ではなく

実際にこんなことがありました。

ある地域から相談を受けているときに、その地域のウリとなる有名な史跡や温泉や郷土食をたくさん挙げてもらったのですが、いまいち場が盛り上がりませんでした。そのときある方が、観光客が誰も知らないような希少生物の話をしてくれました。それがいかに珍しく、保護するのがいかに大変か。「でも私たちは、ときに非合理的なくらい多くの犠牲をはらってでも、その希少生物を守るための活動をしてきました」と熱く語ってくれました。

違いは、前者のキーワードが観光客向けの「ウリ」だったのに対して、後者は、その場に集まったみんなが共有する資産の話であったことです。昔からあり、支払った犠牲があり、困難に打ち克って今も守り続けているものです。それこそが、今回ご紹介したフレームワークの一歩目の「Tales(物語)」です。

私が「それこそがプロジェクトの起点としてふさわしいんじゃないですか」と指摘したあと、会議の流れに一貫性が生まれ、盛り上がりました。それさえ見つけられれば、次は、それを表現するアートを考案する「Tales Tokens Fit」を探っていくステップに進むことができるというわけで、このフレームワークは、こんな感じで使用します。

おしらせ

T&Tではいろんなプロジェクトのご相談に乗っています。そこで得た学びは、ポッドキャストでも公開しています。

また、NFTプロジェクトから学んだメディア論、コミュニティ論を「もしそれが峠だったら」という文章にもしました。

T&Tでは、コミュニティを活性化させる道具の提供を行っています。
ぜひ気軽にお問い合わせください。
T&T - Toolkit for NFT as a Service


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