2019年12月、カンボジアのサッカースタジアムにAED(自動体外式除細動器)を寄贈しました。
前回、こちらのNoteにてAEDが用意できない場合でもできることとして、BLS(一次救命処置)というのを触れました。
それから10ヶ月が経ちましたが、無事にカンボジアのサッカースタジアムにAEDを寄贈することができました。
今回は、その当時のことを書きたいと思います。
はじめになりますが、AEDを贈呈した際に行なった贈呈式でのコメントです。
ご協力いただいた方々には、AEDのみならず自分自身をものすごく成長させてくださったと思います。改めて感謝です。未熟な僕を最後まで信じ、支え、共に活動を実現していただき本当にありがとうございました!
AEDとは?
AEDとは、一般人が使うことができ、多くの命を救う可能性がある救命処置の医療機器のことを言います。
救命には迅速な電気ショックが欠かせず、救命現場に居合わせた一般の人による電気ショックを可能にしたのがAEDです。
時間がたてば経つほど助かる可能性が急激に低下します。つまり、その場に居合わせた人たちが素早く救命活動を行うことができるか否かが重要です。
しかしながら、多くのアジアの国々、特に発展途上の国ではこのAEDがスポーツの現場に設置されていないことが多いのです。実際に僕がモンゴルでプレーしていた2017年には、友人がプレー中に意識を失い、病院へ運ばれるということもありました。
誰しもが楽しめるサッカーで、そんな姿を見て欲しくないし、選手に対してもその危険性というのは排除できるように環境を整えるべきだと思います。
AEDは高価な機械
とは言っても簡単に設置できるものではありません。スタジアムにAEDを設置したいとは言っても、簡単に設置できるわけではありません。そして、最初に僕はモンゴルのサッカースタジアムへAEDを寄贈したいと考えていました。
モンゴルでのシーズンを終えて、新天地としてタイへ移っていました。そこでは、NHK WORLDさんに取材をしていただきました。取材の内容はタイで契約を目指し、トライをしている選手たちの風景を撮るものでした。
ちょうどそのタイミングで、僕は実際に契約書にサインするところへ同行していただき、簡単なインタビューを受けました。
AEDと、これがなんの関係があるの?
と思うと思うのですが、これがカンボジアへAEDを寄贈する一つの大きなきっかけになりました。
出会い、繋がり
取材を受けた僕は、放送予定日を地元・柏市でいつもお世話になっている食事処とんきの方々に伝えました。(いつも日本へ帰るとあたたかく、美味しい料理とともに出迎えてくれて、日本を離れるときも背中を押してくれるとても大切な人たちです。)
レバニラがめちゃくちゃ美味しい!!(というか全部美味しいので、ぜひいろんな料理を食べて見てほしいです。)
楽しい仲間たち、先輩方ともいつもお世話になっています。柏駅東口を出て歩いて10分くらいです。
食事処とんき
Facebookページ:https://www.facebook.com/izakaya.tonnki/
話を戻します。
NHK WORLDでの放送を楽しみにしてくださったとんきの方々はその時間になるとお店のチャンネルを変えてくれたそうです。
しかし、僕が映ることはありませんでした・・・。
(撮影したときにも編集が間に合わず使われない可能性もあると言われていたので、もしかしたら・・・とは思っていました。)
そのときにたまたまお店に居合わせていた方々が柏市の商工会議所青年部の方々でした。
とんきの方々は「これからアジアの国でサッカーしていて社会貢献活動とかいろんなことやっている子がテレビ出るかもしれないんだ!」ってその方々にも説明をしてくださっていました。
偶然、そのタイミングに柏商工会議所の青年部の方々も「何か社会のためになることを企画して実現したい!」と考えていて、最初はすでに取り組んでいる人の活動を応援する形で、ぜひやろう!と僕の活動を共に取り組んでいただけることになりました。
そこから、僕が日本へ帰れるタイミングで打ち合わせを重ねていきました。
地元・柏レイソルの掲げる「柏から世界へ」を僕たちも実現する。AEDを寄贈するという壮大なプロジェクトに発展しました。
(今回はモンゴルではなく、カンボジアへ寄贈することになりました。その経緯はまたの機会にお話しできればと思います。)
打ち合わせでは、僕らを繋げてくださったとんきさんへも行きました!
AEDを寄贈するための問題点
僕たちはAEDをカンボジアへ寄贈すると決めましたが、
「AEDは危険物のため、空輸することが出来ないのではないか。」
という情報を聞いていました。そのため、現地カンボジアで手配をする必要性を考えました。まずはどうしたらカンボジア国内でAEDを入手することができるのか?というところからスタートをしました。
ーーーーーーーーーーーーここから記載する内容に関しては誤った内容もあるかもしれないのでご了承ください。(情報が不確実)ーーーーーーーーーーーーーーー
カンボジアのスタジアムにもAEDはあるのではないか?
なぜなら国際試合を行うオリンピックスタジアムでは日本代表もW杯予選を戦いました。そのスタジアムにAEDがなかったとは考えにくい。
現地で情報を集めていると、「スタジアムもしくはサッカー協会の何処かにはAEDが保管されているだろうとは思うけれど、どこにあるか・・・」
という曖昧な答えが返ってきました。
そのとき、僕は思いました。
「アクションをすることで、本来はあるはずのものであるのであれば、その必要性を認識させるきっかけを与えたい。」
カンボジアは仮に1つ設置すると自分たちも負けていられない・・・というような形で波及して、自分たちのスタジアムもAEDを置こう!という流れが出るのではないか、とも思いました。
まず、僕はこのオリンピックスタジアムへAEDを寄贈できないか、と考えました。
オリンピックスタジアムへ寄贈することへの障害
カンボジアサッカー協会で仕事をされている方とも連絡を取らせていただき、オリンピックスタジアムへの寄贈ができないかという提案をしました。
すると、このスタジアムは1つの団体が管理しているのではなく、複数の団体が管理をしているということがわかりました。
そのため、もし仮に寄贈していただいたとしても、これまでのように誰が管理するのかがはっきりせず、機能しない可能性が高いと聞きました。
また、命に関わる機械なので、その責任を考えると・・・
といった見解すら出ていたようです。この辺りは非常に難しいですね。
危険を回避できる可能性ではなく、それによる責任を考えるということです。
(これは、あくまでこの際に出た危険性の話です。カンボジアの人たちはとても素敵な人たちが多いので誤った解釈だけは避けていただきたいです。)
オリンピックスタジアムへの寄贈を断念
せっかく寄贈するものなので、無駄にすることは絶対に避けたい。そのためにはどこに設置すること(寄贈)が良いのだろうか。
何度もなんども考えました。そこで案としてあがってきたのが、
「ナショナルトレーニングセンター」
です。世代別代表選手などがトレーニングを行い、合宿をしたりする場所です。ここであれば審判への講習なども行なっているため、選手のみならず審判団への指導も実際のAEDを触りながら行うことができる。
また、選手たちへの認知・理解度もあげることができるため最適な場所ではないか。
しかし、僕たちは結果的にここへAEDを設置しなかった。
なぜ、ナショナルトレーニングセンターに設置しなかったか
では、なぜ最適と思われたナショナルトレーニングセンターへの設置をしなかったのかと言いますと、ある1通のメッセージを受け取ったからです。
それは、
「仮にナショナルトレーニングセンターにAEDを設置した場合に、救命処置を行なっても最寄りの病院までの搬送時間では結果的に命を救うことができない。ヘリで搬送するということも現実的ではない。そのため、指導や認知のためには活用できるかもしれないがAED本来の機能を果たすことができない。」
衝撃的なメッセージでした。つまり、もし仮にこのナショナルトレーニングセンターで命に関わる事故が発生してしまうとその命が助かる可能性というのは極めて低いということ。
若く希望に満ちた選手たちがトレーニングに励む環境ですので、何らかの解決が進むことを願っています。(今回はここにはあまり深く触れません。)
やはり、AEDを寄贈するのだから、その本来の機能が発揮できる環境、場所に設置をしたい。
次の案
それではどこに設置するのが良いのだろうか。
また考えました。
そこで次に浮かんだのはKMHスタジアムというアマチュアクラブの所有するスタジアムです。
このクラブとは実は長く親交があり、僕はオフシーズンになると毎年のように彼らとトレーニングを行い、ボールや衣服などの寄付も行なっています。
そして、今はまだアマチュアクラブですが、近い将来のカンボジアリーグへの参入、完全プロ化を目指しているクラブなのです。
そして、立地も良いと思いました。なぜならオリンピックスタジアムで試合がある場合に、AEDのみ移動させることができるだろうと考えたからです。
このスタジアムへAEDを寄贈する条件として、
オリンピックスタジアムや国際大会が行われる場合など、必要に応じてAEDは移動をする。そして、その管理を責任を持ってクラブが行う。
こうした取り決めの元に、僕たちはAEDをこのスタジアムへ寄贈することを決めました。すぐに現地での段取りなどを進めて行きました。
無事にAED寄贈を実現。カンボジアのサッカーの発展の助けになれば
そして2019年12月8日、無事に柏の商工会議所青年部の素晴らしい方々と共にAEDをカンボジアのスタジアムへ寄贈することができました。
皆さんもカンボジアまで足を運んでいただきました。本当に遠いところまでありがとうございました!みんな素敵な笑顔ですね!本当にすばらしい時間、取り組みだったと思います。協力してくださった全ての方々のおかげです。
当日はBLS講習でお世話になった大城さん(女性)にもAEDの使用に関しての指導をしていただきました。カンボジア人の通訳の方にも来ていただき、より理解を深められたのではないかと思っています。
また僕自身、柏という街に生まれ、育ち、こうした形で少しでも自分の街の名前を知ってもらうことができたと思うと、本当に幸せな気持ちになります。
(皆さんと着ている黄色いシャツの胸には柏商工会議所青年部さん「KASHIWA YEG」とマーキングを入れています。)
AEDを寄贈した後にはプノンペンにある孤児院にも足を運び、皆さんとともに子供達に日本で不要となっていた靴をプレゼントさせてもらいました!
子供達、そして大人もみんなが素敵な笑顔をしています。言葉も違うけれど、みんなが同じ気持ちを共有できているのだと思います。
以前、ここでみんなとサッカーをして遊んだ時にみんなの足元が裸足だったので、こうして靴も提供することができて本当に良かったです。
(以前、孤児院の子供達と触れ合いに来た時の写真:数名の子供達が裸足で遊んでいますよね。)
これからもスポーツ、サッカーを通して世界中の子供達と触れ合いながら、新たな価値を提供していくことができたらどんなに素晴らしいだろうと思っています。
僕がこうした活動を行う根本の理由としては、はじめて彼らと触れ合った際に、彼ら弾ける笑顔を見て感じた「本当の豊かさってなんだろう。」ということです。
経済的に恵まれていることが豊かというのか。そもそも恵まれているというのはどんなことを言うのだろうか。
間違いなく、日本で生まれ育った僕たちは彼らより豊かな環境の中で成長をしてきていると思います。
しかし、それは選べるものではない。
だからこそ、自分たちにできるほんの少しでもいいからともに助け合い、共生して行き、喜びや笑顔も共有していけたら素晴らしいのではないかと思っています。
改めまして、ご協力いただいた柏商工会議所青年部の皆さん、そしてご縁をくださった大好きなとんきの皆さん、本当にありがとうございました!
活動後に、日本へ帰った期間を使って、とんきでみんな集まって楽しい時間をすごしました。
ないならないなりに何ができるのか・・・。また、そのあるべき必要なものを得るためにはどうしたらいいのか。
僕にできること、というのはいつも同じで、自分にできる小さなことをコツコツと丁寧にやっていくことだけです。そんな作業をしている中で出会った素晴らしい方々が僕のことを助けてくれて、実現できているだけです。
周りの方々に感謝をすること、絶対に忘れてはいけないことだと思います。
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