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「フランス人間国宝展フォーラム」

過去のトークイベントの感想まとめ。

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2017.09.16(Sat.)
「フランス人間国宝展フォーラム」
@東京国立博物館 表慶館

フランスにて日本の人間国宝に影響を受けて、1994年に策定されたメートル・ダール(Maître d’Art)は、フランス伝統工芸の最高技術者に与えられる称号であり、この展覧会はメートル・ダールの称号を有する作家を中心に15名の作品が展示されている。
その展覧会に合わせて実施されたフォーラムにお邪魔してきたので、そちらを。

1部は「日仏両国における人間国宝」というテーマ。
メートル・ダールをバックアップするフランス国立工芸研究所会長のリン・コーエン=ソラール、紋章彫刻作家(!)のジェラール・デカン、人間国宝であり漆芸家の室瀬和美、司会は九州国立博物館副館長の伊藤嘉章という構成。
日本の人間国宝とフランスのメートル・ダールの相違が非常に興味深かったが、何よりフランスにおいて芸術分野に対する社会的位置づけが確立されているのがすごいなと。
「我が国は芸術に誇りを持っている、そして工芸もまた芸術である」というのがフランスの立場で、日本はそれに比して明らかに劣っていると言わざるを得ない。見習うべきところが沢山ある。美術より工芸が下というのも、文化庁が省でないのも、未だに工芸の世界は丁稚奉公なのも、改善すべき慣習ではなかろうか。

2部は「建築の世界の伝統と革新」というテーマ。
本展にも出展しており、日本建築家とも共同しているガラス作家のエマニュエル・バロワ、建築家・伊東豊雄、司会を美術評論家の伊東順二という構成。
バロワ氏の言う伝統traditionとは、形formeと精神性espritを併せ持つことで、伝統をいかに現代に結びつけるかが重要である、としている。いつの時代も最先端技術を伝統に応用するのは一緒であり、そのため制作活動とは常に流動的でなければいけない。
それを受けて伊東豊雄氏は、まつもと市民芸術館や多摩美大図書館、台中オペラハウスといった、流動的な建築への挑戦で応えた。その中心には、有機的な自然にいかに建築が溶け込むか、という思想がある。
ここで重要なのが、形態や素材は流動性に直結しないということだ。例えば、伊東豊雄氏はミースのガラス建築を指して、「透明だが壁より固いものに感じた」と言う。翻って、コンクリートや鉄でも、形が四角くても、柔らかいものが作れるのではないか、という考え方である。バロワ氏の作品は工業製品に手を加えて、人間らしさを付与しているものも多い。伊東豊雄氏も四角い箱を少しずつ柔らかいものにして変化させているという点で共通している。
バロワ氏の発言で最も面白かったのが、「ガラスは完結された素材ではなく、絶えず変化する素材である」というものだ。ガラスは化学反応によって固定させているだけであり、つねに動き流れている、いつかは自然に還るものである、と。それを産業革命以後、あまりにも固い素材として使ってしまっていることに、建築界は多いに加担してきた。

両部を通じて、ある一つの素材や制作品に対して、常に挑戦し変革を起こそうとしていく姿勢の重要性を再確認した。これまでに無い可能性を探り続けることは、感動を生み出すのだろう。

1991年神奈川県横浜市生まれ.建築家.ウミネコアーキ代表/ wataridori./つばめ舎建築設計パートナー/SIT赤堀忍研卒業→SIT西沢大良研修了