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令和版「君たちはどう生きるか?」 【逆ソクラテス書評】

「僕は、そう思わない。」

このセリフ、いつから言わなくなったのだろう。大人になってから、疑問に思ったことを伝えるのに躊躇う回数が増えたように思う。

それは会社のせいでも歳をとったからでもなく、世の中の常識を受け入れる思い込みや先入観を自ずと持ってしまったのかもしれない。

あの偉い人が言っているからその通りなんだろうとか、

去年成功したから今年も同じやり方で仕事進めてみようとか。

自分の頭で考えずに決めつけてしまうことが増えているように感じます。

でも、クリティカルに物事を捉えて常識を疑ってみる、自身の成功体験だけじゃなくて行動結果の分析をしてより良い方法を考えるといったことって日常から考えていく必要があるのではないのかなと思いました。

今回の外出自粛中にビジネス書、教養書を読んだなかで、小学校をテーマにした小説にとても考えさせられ、読了して凄く爽やかな気持ちになりました。

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逆ソクラテス 伊坂幸太郎著

僕は、【好きな小説家はいますか?】と聞かれたら、間違いなく伊坂幸太郎です、と答えるだろう。それだけ、小さい頃から伊坂さんの作品は好きだった。
きっかけは、短編小説集【I love you】収録の透明ポーラーベア。伏線の張り方と、セリフの掛け合いの面白さが印象的で、はじめは恋愛小説メインなのかなと思った。ただその印象はいい意味で裏切られた。人とのつながりをテーマに、ミステリー小説から青春ものまで、様々な作品を書かれる小説家なのだ。

砂漠、アヒルと鴨のコインロッカー、終末のフール、ゴールデンスランバー、アイネクライネナハトムジークなど、彼の代表作を語ったら止まらないので、この辺にしておきます笑。

そのなかで、久々に書店で伊坂さんの新作に出会い、読む機会をとることができました。

なんと、舞台は小学校。

控えめにいって最高でした。

小説の中でもこんなにも気づきを得られて、読後感が清々しくて、モチベーションが上がることってここ数年なかったので本当にあっという間に読み進めることが出来ました。

できるだけ沢山の人に読んで頂きたいです。

題名で名付けられた逆ソクラテスというのは、【冒頭で話した自分の思い込みや先入観を人に押しつけて、威張ってしまう人】のことを言い例えています。

本来、人はソクラテスのように、無知の知という考えを持って、知らないことを知ること、それこそが学び続けるモチベーションになり、日々視野を広げるために学び続ける必要がある。

ただ、世の中には逆ソクラテスみたいな人は結構いるはずです。先入観を振りかざし、
【ピンクの服着てるのは女っぽい。男が着る服じゃない。あの男の子は鈍臭いから、何もできない】とか決めつけてしまうのです。

本書では、主人公の加賀のクラスメイト、安斎が【僕はそう思わない】とそんな逆ソクラテスの考えを一刀両断します。

教師期待効果によって、優秀になりそうだと思って接していると子供は自身が芽生え、優秀になろうと努力する。この子はダメな生徒だと思えば、良いことをしてもたまたまだなと思われ、悪いことをしたらやっぱりなと思われてしまうのだ。それだけ、先生の接し方には影響力があるのかもしれない。

この物語では、そんな決めつけを行っている担任の逆ソクラテスに、加賀、安斎をはじめとした子どもたちのある作戦が実行されます。

何より、担任にできないと思われていた草壁くんがある小さな成功体験により、思わぬ方向に話が進んでいったので、読み終わった後の爽快感が大きかったです。

本作は表題の逆ソクラテスの他に全5篇の短編小説集になっており、テーマは全て小学校を舞台にしてますが、いじめ、嫌がらせ、不登校などの学校をとりまく教育の問題に対してどの作品でも必死に向き合っていこうとする子どもたちの姿がありました。

一歩踏み出せないという先入観に、
まずはチャレンジしてみようという気持ちになる。

それは、最近漫画化もされ話題にもなった 吉野源三郎著【君たちはどう生きるか?】の伊坂流現代版だと言えます。子どもにも読めますし、大人にも読んでほしい小説です!

そしてこの本を読んで、世の中の常識に対して、あれ?と疑問を持って自ら考えを導きだす力、クリティカルな思考(批判的思考)を日々磨く必要を感じました。

最近は、読書以外にも、グロービス学び放題というビジネス教養を学べる動画アプリもみることが日課になっているので、このクリティカルな思考力を磨いていけるよう勉強していきたいなと思います!日々勉強ですね笑。

令和版【君たちはどう生きるか?】、是非ご一読を!

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