単語学習を面白く,知的にしたい

久々の投稿です。
今回のテーマは単語学習。
少し前まで授業の帯活動で"One Sentence Writing"をやっていましたが,それは露骨な模擬試験対策でした。生徒にも「結構書けるようになった気はするけど,細かいミスばっか気になるからつまんない」と言われてしまいました。ごめんね。

というわけで,模試後から即興性の高いスピーキングやリスニング,そして語彙学習など色々な活動を10~15分程度授業冒頭に行っています。基本的には授業のテンションを上げるのが最低条件,プラス「学び」をどう生み出すかがテーマなので,ありきたりな単語テストなどもっての外です。でも語彙は授業の中で定期的にやっていないと家庭学習でやるハードルも上がり続けると思い,なんとか楽しく組み込みたいなと思いました。

仲間はずれ単語探し

今回作ってみたワークシートはこちら。中学2年生の習熟度別で一番下のクラス向けです。横に並んだ四つの単語から「仲間はずれ」は何かを当てる活動。Nunan (2015)のCh. 8 Vocabularyで取り上げられている活動です。(権威付け)

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第1回目では分かりやすく意味カテゴリー・意味の類似性による区別だったり(1, 4, 5, 6, 8),品詞による区別だったり(2, 3, 7)。これが意外と盛り上がりました。何か法則や例外を発見するというのはある程度普遍的に楽しいのでしょうか。ということで調子に乗ってもう一回やってみました。

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今度は自動詞・他動詞の区別(3, 7)や,心理的な動詞と行為を表す動詞(5),可算・不可算名詞(8)など,ちょっとレベルの高い問題も。難しすぎたのかちょっと時間は使いすぎた感ありましたが,「数えられる・数えられない」とか「〜をとかが必要かどうか」みたいなことを(習熟度別で一番下の)生徒達が気付いていく過程は見ていて熱かったです。
ちなみに8番は「friendだけ生きてる」「いや,でもボールは友達だけど,生きてはなくない?」とか議論も起きてて,あまり細かいところまでこだわりすぎず雑に作っておいたことで「有生」「無生」という別解が生まれたので良かったです。いや,ちゃんと作り込めよと言われてしまうかもしれませんが,結果オーライでしょう。

10分の活動でその後の5分の理解と30分の集中を生み出す

上で紹介した活動は「なんか楽しく,かつ知的な語彙学習できないかなぁ」と思ってペラペラとNunanをめくってみて「あー,なんか,良さそう」ぐらいでとりあえずやってみたものです。

The lesson is very much strategy based. The teacher introduces the vocabulary strategy of classifying. In spotting the odd word out, the learners have to group together, or classify, the words that go together. In the process, they distinguish the words that do not belong. (Nunan, 2015, 110)
(このレッスンは学習方略に大いに基づいている。教師は分類という語彙学習方略を導入しているのである。なじまない単語を見つけ出す上で,学習者は同一グループとして括れるものを括り,分類する必要がある。その過程で,そこに属さない単語を見分けるのである。)

上の引用にあるようにこのワークによって生徒らは意味や特性の似た語彙を関連づけて覚えるということを自然に行います。at, between, overをそれぞれ別々に覚えていた,あるいは覚えてすらいなかった生徒らが「全て場所(や移動経路)を表す」というイメージを持って覚えます。更にそこにinやonといった場所を表す代表的な前置詞を補足的に足していってもいいでしょう。同じ28の単語に触れさせる時間を取るのであれば,このような意味的・文法的関連性を持たせた提示をしたいですし,それを教師が明示的に説明するより(したければその前に),生徒自身の力でそこに気付かせたいところです。
自力で分類できる経験を積んでおくことで,自分たちでは発見できなかった分類もしっかり聞こうという体勢が整います。いきなり「自動詞・他動詞,可算・不可算の復習するぞ〜」とか言われても誰も聞きやしませんが,この10分の活動があるだけで大違いです。

更にこの活動で(必要とあらば)自然と周りと相談しながら難問に立ち向かう姿勢がとれた生徒たちはその後のリーディングの活動にも前向きな姿勢を見せてくれました。習熟度の別に関係なく同じ課題を課しているので,正直彼らにはかなりキツいかなと覚悟してやりましたが,一生懸命辞書をひいたり友達と相談したりしながら一つ一つの課題に取り組んでいました。「これやり切ったら3ページ分の英文クリアってこと!?すごくない!?」と,今まで受けてきた文章を頭から精読していくリーディング授業では絶対無理だった「読破」が近づきテンションが上がっていました。
このリーディング活動については別の記事で詳しく書かせていただきます。

家庭での語彙学習をどう促すか

目次を見て,ここまで飛んだ人,ごめんなさい。

この記事でこの問いへの答えを示すことはできません。

むしろ自分のテーマとして掲げているものです。

「授業は1日に45分しかない」「授業以外の時間の使い方が大切だ」と良く言われますが,でもやはりプロの授業者としては授業の中身があってこそ家庭学習の質が高まるという意識で取り組むべきですし,きっと実際のところそうなのだろうと思います。

稀に「授業がクソだから家でしっかり自分でやろう」という生徒がいます。そんなものを授業者が目指すわけにもいきません。でも,この授業での不全感が自宅での学習を促すという可能性は無視できないかもしれないと最近思います。

なかなか英語の授業で活躍できない生徒が,授業でやる「仲間はずれ探し」対策として僕から配られている英単語リストを家で眺めて来るかもしれません。今見ている学年の生徒のいいところは,与えられた課題に対してあまり斜に構えずに「解きたい」「先生の挑戦に勝ちたい」という思いを前向きに出してくれるところだなと思います。そのメンタリティがあれば,少しずつ自主的な家庭学習に繋がるかもしれないなぁと信じつつ,更に彼らの「学びたい欲」を引き出せるような授業を日々考えております。

参考文献

Nunan, D. (2015). Teaching English to Speakers of Other Languages. An Introduction. New York: Routledge.

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