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英語の授業は嫌いじゃない子

英語科教育法IIIの模擬授業第3回目。

ReadingからPost-Readingに繋げる指導。

物語をペア及びグループで協力しながら要約を作成する活動。実際にはその後に音読の練習も用意してくれていたのだが、(そしてそのためにワークシートもしっかり作ってくれていたのだが)生徒のあらわれに対して丁寧かつ柔軟に対応してくれたおかげで、約45分の授業で音読まではいけなかった。
まぁ授業とはとかく予定通りに進まないもので。

数年ぶりに生徒役に挑戦

学生からのリクエストもあり、生徒役の人数確保の意図もあり、何より私自身も英語科教育法Iでの生徒役のパフォーマンスに感化されてやりたくなり、高校2年生役を学生たちと一緒にやってみることに。
生徒役をやるのは大学院生以来約3年ぶり。楽しかったぁ。

私が演じた生徒は英語は決して得意でも好きでもないが、人と話すのが好きでペアワークやグループワークでは割と積極的に発言する(けど英語は分からないし、あんまり考えたくはない)というタイプ。
(実は教養の授業で見ている学生の中にも何人かいて、少し動きを参考にさせてもらった。このnoteを読まれたら「私のことかも」って思われそうだけど、まぁ読まれないだろう)

このタイプの生徒と関わるのが私は割と好きで、自分が生徒役をやる時にもこういう生徒を演じることが比較的多い。
このような生徒は英語への苦手意識こそあれど先生やクラスへの反抗心があるわけではなく、むしろクラスメイトとのコミュニケーションを取りたいために英語をやってるフリをしながら授業についてくる
そこで先生がどういうアプローチをするかによって、この生徒が英語から完全に離脱してしまうか、頑張って英語に向き合えるかが変わってくる。まさに先生の腕の見せ所だ。その時間で何をやっても暖簾に腕押しというほどの低いモチベーションでもなければ、何もせずともどんどん勝手にやってくれるような「都合の良い」生徒でもない。

それに加えて大事なことは、この生徒の空気が周りの空気に比較的大きく影響しがちであるということだ。英語とは真剣に向き合わずになんとなくで喋るこの生徒に引っ張られて、その子のペアやグループメンバーの生徒もそういうテンションになってしまうと、本来その生徒たちが経験できたはずの英語学習の質が損なわれてしまう。
事実、私とペアワークをした生徒は開始早々に、残りの生徒も後半のグループワークであっさりと私のいい加減な態度に飲み込まれてしまい、英語の学びとしてはあまり質の高くない時間になってしまった

また、今回は私がちょっかいをかけた相手の生徒役も私のテンションに乗ってきてくれた(流石に先生を跳ね除ける勇気はまだなかったらしい)のだが、ここで彼女が私に対して分厚い壁を使って自分一人で作業しようとしたら、おそらく私は孤立することになっただろう。英語がやりたいわけじゃなくて、友達とお喋りを楽しみたい私にとってはその時間はかなり苦痛を伴う。もしその展開になっていたら先生はどう対応してくれただろう。
(大学生の自己から抜け出しきれず、そういう展開に出来なかったことを悔やんでいた学生が頼もしい。)

先生があまり感情の面では動じず、常に色々考えながら授業したことがよく分かる。

精読からの脱却

今回の模擬授業は物語を要約することがゴール。
ある有名な童話を英語にしたものを前半と後半で分けて配り、それぞれを2人ずつで協力しながら要約した上で、前半と後半の要約を持ち寄って4人で1つの要約を作成する。
英文の長さを考慮して前後半で分けた上で、それでも一人で読むことが大変だろうという予測に基づいて2人ペアで協力しながら読むことにした。ここに、「前半と後半のそれぞれの要約を持ち寄ると意外な展開が待っている」みたいな仕掛けがあっても良いかなと思ったが、先生役の学生は「みんながよく知っている(=内容スキーマを持っている)物語を使った方が良い」と考えてそこの仕掛けは特に考えていなかったようだ。

しかし、(奇跡的に?)後半を担当した生徒は物語の後半の展開を知らなかったためにその内容に驚き、前半組との共有の際に興奮気味に内容を伝えていた。(知らなかったのも、興奮気味で伝えたのも私なのだけど)

ただ、この私(とペアの生徒)の童話知識の乏しさは先生からすると想定外だったようで、知らない展開に混乱する後半組の二人に対して先生は日本語で内容を解説してくれた。
川村演じる高校生はすかさず「え、もう先生要約出来てるじゃん」とサボろうとするのだけど、「英語で要約してみて」と言われ、仕方なく再びペアの生徒に甘える。

先生も教えすぎにならないように少しずつヒントを出してくれるのだが、なんせ英語に真剣に向き合おうとせず「なんとなく」で読んでいく私と、その私のテンションに流されている優しい女子生徒のペアなので、頓珍漢な解釈を繰り返してしまう。
最終的には英文の内容をほとんど全部先生から教えてもらう形になった。

リーディングのプロセスとしてはその運び方では不十分だったかもしれない。しかし、これまでの模擬授業ではどうしても文法形式にフォーカスが当てられすぎていたり、本文を上から順に逐語的に読もうとしたりというシーンが目立っていたのに対して、この授業では精読を思い切って捨てて、文章の概ねの内容を理解することと、要約を作成することに狙いを絞っていたことは評価されるべきことだ。
先生役を務めた学生は非常に真面目な学生で以前は仮定法の授業をかなりゴリゴリの「ザ・文法指導」というテンションで進めた。その彼が勇気を持って正確さや緻密さへのこだわりを捨てることはそれなりに授業観の変容があってこそだろうと思う。

正確さにこだわることが悪いわけではない。
その授業での最終的な目標に照らして、授業内での学習を微調整していくという段階に踏み出したことが嬉しかった。

先生の行動範囲が狭まる

私が隣の生徒と一緒になって先生を困らせていた裏で、前半の要約を担当していたペアは早々に要約を作り終えていた。

検討会でこのペアの学生は「暇やなぁ」「終わったけど何すればいい?」と思っていたと振り返ってくれた。
先生は想像以上に後半組のペアの対応に時間と注意を注いでいたため、後から授業動画を見返してみてもやはりほとんどの時間をそのペアの近くで過ごしている。
既に作業を終えた二人への声かけは特になく、二人はペア活動からグループ活動に移るまでの時間特にやることなく過ごしていた。

この二人に対して先生はどのようなアプローチをするべきだったのだろう。もちろん早く終わった生徒が暇にならないように追加の課題を与えるというのは現場の教員ならよくやることだ。(そういう時に家庭学習用のワークは重宝される)
しかし、個人的にはそれはあまりお勧めできない(何もアプローチしないよりはいいかもしれないけど)。早く要約ができた二人に対しては、その要約を更にブラッシュアップさせても良いかもしれないし、元の英文をどこまで正しく読めているのか確かめるための発問を投げても良いかもしれない。

検討会でTeacherとStudentの間に矢印が引かれている部分の多くが手のかかる2人の生徒との関わりであった。それはその時間帯、授業に参加(engage)していたのがその2人だけだったということを示唆する。

1時間の授業で欲張らない

英語科教育法IIIの授業後、学生と授業を振り返りつつ雑談するのが毎回の恒例になりつつあるのだが、今日はその中で「物語の要約って結構難しいなって思うんですけど」と生徒役の学生に尋ねられた。

今回の模擬授業では実は「要約って言われてもどんな感じか分からんよね」と言って、赤ずきんちゃんの物語の要約を先生が板書して、「大事なところだけ取り上げて、セリフとか細かい出来事は省いてあるよね」と説明してくれた。
しかし、少なくとも私の演じる高校生はいくつかのキーワードから連想して「赤ずきんちゃんだ!」と言っただけで、実際にはその要約の中身は全然読めていなかった。

もし「要約って言われてもどんな感じか分からんよね」という段階なのだとしたら、赤ずきんちゃんの要約は板書で済ませるのではなく、それ自体を手元に置く教材として活用し、要約に必要な要素と不要な要素を考えさせるべきだったのではないかと私は考える。
要約文の分析の授業でもいいし、要約文の候補を複数出して最も良いものを選ぶという活動でも面白いかもしれない。

また、もしそういった活動を通して要約を作る際のポイントを知っている段階なのだとしたら、要約を作り始める前に教室全体でそのポイントをおさらいする時間があると良いだろう。

あるいは、今回の模擬授業では最終的にあまり良い要約ができなかったのだが、そのあまり上手くない要約が「なぜ上手くないのか」そして「どうすればもっと良くなるのか」を考えるための教材として活用するというのも一つだ。
何かが出来ないと感じる時に、それができるようになるための知識やアイテムを欲する気持ちが強くなる。英語の授業でもあえて「失敗」させてそれをその後何時間もかけてブラッシュアップしていくという手段を取るのもアリだ。もちろん失敗させること、そしてそれを自覚させることには先生と生徒の信頼関係が求められるだろうけれど。

大事なことは、1時間であらゆることを達成しようと思わないこと。前後にどんな授業があることを想定した1時間なのか。長い長い道のりのうち、この時間ではどこまで行けばいいのか。
大局観というと大袈裟かもしれないが、そういう見通しを持てるようになること、つまり「〇〇は難しいだろうけど、できるようになるためにはどういうステップを踏めばいいかな?」と考えられるようになると、いよいよ「授業」から「単元」へとスケールアップしていく。


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