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日常をベトナムに移してみる vol1.出発前

2024年に入ってから数ヶ月、割とバタバタと過ごしていた。

というのも、3月に開催されるJR国立駅前のまちづくりイベントに関わることになり、年明けからそのイベント開催まで、週末はその準備に時間を費やすことが多くなっていたからだ。

自分の住んでいるまちを盛り上げようと、まちに関わる方々が一体となって頑張った。結果予想をはるかに超える集客があり、多くの方が駅前で穏やかな時間を楽しんでいた。
大成功だったと思う。関わさせてもらえたことに大いに感謝している。

イベント後、週末の予定に余裕がでてくるようになった。するとどうか。

私は慢性的に旅に出たいという欲を抱えているのだが、なにか別にすべき事があると気が紛れて、その欲は身を潜めてくれる。

ただ一旦何も無くなると、待ってましたと言わんばかりに、さぁ旅に出よと、脳内がお祭り騒ぎになってしまう。

具体的に、今回はこのような異常行動が見られた。

まず、たまたま訪れたZINEフェスでタイ旅行に関する本を買ってしまい、東南アジアの蒸し暑い熱気と、独特の匂いが感じられる写真をたくさん見た。
ここで何かのスイッチが入ってしまったように思う。

次だ。ある土曜日の午前中、用事があり都心を訪れる。
その日の午後は予定が空いていたので、成田空港近くにある「さくらの山公園」に向かった。ここは飛行機の離発着が間近に見れることで有名で、多くの航空ファンがごっついカメラを抱えて写真を撮ったりするところである。
私は以前、NHKの「ドキュメント72時間」という番組でここの存在を知り、いつか行ってみたいと思っていた。

公園に着くと、さっそく爆音とともに、飛行機が頭上を通り過ぎていった。おそらく10機ほどは見たかと思う。
機体の色を見るとおおよそ航空会社が分かるので、あれは韓国行き、あれはタイ行きなど考えたりした。自分の意識が少しずつ海外に移っていくのを感じた。

さくらの山公園を出た後、休憩がてら、飛行機に乗りもしないのに成田空港に行ってしまう。

ふと、行った事のないベトナムの事が知りたくなり、空港内の書店で「地球の歩き方」を買おうと思った。しかし、ベトナムの地球の歩き方が売り切れていた。仕方がなく、タイの地球の歩き方を購入し、出発ロビーのベンチでコーヒーを飲みながら読んだ。

ベンチの両隣では、海外の方々がそれぞれの言語で会話している。そして時より、搭乗案内などの空港アナウンスが耳に入る。まるで今自分が旅をしているかのような空気に包まれていた。

家に帰り、地球の歩き方を購入できなかったということもあり、ベトナムのことが余計に気になり始めた。そして衝動的にスカイスキャナー(各社の航空券を一気に検索できるサービス)で航空券を探し始めた。
スカイスキャナーでは検索するタイミングによって航空券の金額が上下したりするので、デイトレーダーのように画面に張り付いて検索を繰り返していた。

翌、日曜日の夜、ベトナム・ハノイへの往復航空券の決済完了画面を見つめて、やっと正気に戻っている自分がいた。

いつも旅に出るまでは、自分以外の何者かに脳内を乗っ取られているような感覚がある。そして航空券を予約できると自分が戻ってくる。

自我を取り戻した後は、あぁ海外に行けるのだと、あぁ美味しいものが食べられるんだと、ふつうに旅のことを楽しみに感じている人間的な状態になる。

決して衝動的な行動に悔いを感じることはなく、穏やかに、満たされている気持ちだ。けどなぜかその前は、思考を止められて、航空券を探すために指先が勝手に動いているかのような、目バッキバキの非人間的な状態になっている気がするのである。

さくらの山公園にて

ひとまず、2週間後にベトナム行きが確定した。あとは気軽に準備など進めていこう。

とはいえ、そんなにすることも無いので、日暮里から成田空港までの京成スカイライナーと、初日の宿だけ予約して、後は変わらず日々を淡々と送った。

ある平日の夜、知人が近所でドーナッツが食べられるバーを始めたと聞いていたので、仕事帰りに寄ってみた。

そこでたまたまご近所さんのOさんに会ったので、美味しいドーナツとカクテルをいただきながら雑談が始まった。

「今度ひとりでベトナムに行ってこようと思ってまして。向こうで普通に仕事もしながら過ごそうかと思ってます。」と伝えると、
「へぇ、いいですね!」と興味を持っていただけた。

私は先に述べた、旅する前の脳内の異常のことを伝えようと思ったが、うまく説明できず、
「旅する前の私はどこか変で、自分が病気なんじゃないかと思ってるんです。」と言うと、Oさんは、
「そうなんですか。メンタルは大丈夫ですか?」と心配して下さった。

全く病んでるとかそんなのではないので、全然メンタルは大丈夫で健康だということをきちんと伝えた。

その場には他にも知人が数名いたので、それぞれにお土産のリクエストを聞いてから家に帰った。

つづく↓

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