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日常をベトナムに移してみる vol.5 サパ

前回↓の続きです。


9時頃までぐっすり寝た。ハノイに来て6日目になった。

今日は5/4(金)、日本では建国記念日だ。祝日なので仕事の連絡が頻繁にくることもない。今日は一旦仕事は何もしないで、ゆっくり過ごすことにしよう。

昨夜ニンビンに行くことに決めたのだが、やはりサパも気になって仕方がない。どこに行こうか悩む。

フロントに行き、宿のスタッフであるトムに聞いてみた。

「もし今日サパに行くとしたら、何時のバスがある?」
「今日だったら、13時と21時があるよ。」
「ありがとう、ちょっと考えてみるよ。」
「僕はニンビンがいいと思うけどね!近いし!」

依然としてニンビン推しのトムだったが、ここはしばらく自問自答してどちらに行くべきか考えてみよう。
フロント前の椅子に座って、あれこれ思いを巡らせた。

確かにニンビンは美しいし、静かで良さそう。2時間で行けるというのも魅力的だ。
しかし、例えばこの先再びベトナムを訪れる機会があったとする。その時の私に、6時間かけてサパへ移動する体力や時間があるだろうか。
思い起こせば、もともとはサパにも行きたいからハノイに来たのではなかっただろうか。
うん、決めた。

「サパに行くことにするよ。13時のバスチケットを手配してくれないかな。」
「おぉ、わかったよ。サパね。確認してみるよ!」

このホステルは旅行代理店も兼ねているので、バス予約をお願いすることにした。ここまでニンビンを推していたトムからするとやや残念な結論だったかもしれないが、すぐにどこかに電話をかけ、手配を進めてくれた。

「13時のチケットとれたよ!」
「ありがとう!助かったよ。」
「バスターミナルまでのタクシーも予約しておこうか?」
「うん、お願いするよ。」

トムはGrabでタクシーを予約してくれて、ひとまずあと1時間半後に宿からタクシーに乗り、バスターミナルに移動することになった。

部屋に戻り荷物をまとめる。広くはないが清潔で静かで快適な時間を過ごせた。
4泊した部屋を後にして、再びロビーに戻る。

「そういえばタクヤはここの宿どうやって予約したの?」トムが言った。
「Booking.comだよ。」
「そうなんだ、レビュー書いてよ。あ、スマホをちょっと貸してくれない?」

私はスマホの設定をベトナム語に切り替えてトムに渡した。
トムはそれを受け取ると、何かを入力している。
その後ニヤニヤしながら聞いてきた。

「ねぇ、これでレビュー投稿してもいいかな?」

Booking.comアプリの画面には、こう書かれていた。

『Tom friendly. I like stay here so much.』 

まぎれもないステマ投稿だが、トムがフレンドリーなことは間違いなく、私が投稿したとしても同じことを書くだろう。

「うん、いいよいいよ!」
「ありがとう!」

トムは自分のやったことがツボにハマったのか、しばらく間のヒャッヒャっと笑っていた。

ちゃっかり満点の10もつけていた。

そうこうしているとタクシーが到着した。

「このタクシーが到着したところで待っていたら、サパ行きのバスに乗れるからね!」
「ありがとう!とても助かったよ。」

トムに別れを告げ、タクシーに乗車。10分ほどで目的地に到着した。
ドライバーにお金を支払い、タクシーを降りる。

周りを見渡すと、なんでもない道端だった。特にバス停のような標識もない。
勝手にバスターミナルのような場所に到着するのかと想像していたばっかりに、ここで待っていて本当に大丈夫なのだろうかと心配になってきた。

近くにいた若い女性に、「サパ行きのバス乗り場はどこですか?」と尋ねると、「私は、学生だから分からない。代わりにあの男性に聞いてみて」と言われた。

その男性に聞くと、「たぶんこの道真っ直ぐ行った角じゃないかな」と教えてくれた。その角に行ってみたが、ここもバス停らしき場所ではなかった。

バスの出発時間まで10分を切っていた。少し焦ってくる。

近くになんか信頼できそうな警備員がいたので、聞いてみた。
するとやはり、タクシーを降りたところに行けばいいと言われた。

もう一度その場所に戻ると、先ほどはいなかった大きなバックパックを背負ったカップルが立っていた。
なんかサパ行きの人っぽく見えたので、「サパ行きのバスを待ってるのですか?」と聞くと「ええ、そうよ。」と答えた。

そこで待っているとすぐにバスの係員が現れ、近くに止めてあったサパ行きのバスに案内してくれた。

トムが言っていた通り、タクシー降りたところで待っていれば良かったのだった。あまりにも普通の道端だったので、心配になってしまいうろちょろしてしまった。
ふぅ。良かった。

無事にバスに乗車すると、内装がラブリーだった。
スリーパーバスといって横になれるタイプの座席だったので、仰向けに寝転んでみる。するとラブリーな壁紙の中に突如として年配男性が現れ、情報量の多さに圧倒された。
このデザインでゴーサインが出てしまうベトナムの懐の広さは、なんとも羨ましい。

情報の大洪水に飲まれる私を尻目に、バスは淡々と街中を進み始める。

高速道路に入ると、心地よい揺れもあり、眠たくなってきた。

ぐっすり眠っているとサービスエリアに到着していた。
ひとまず下車してみたものの、バスが出発する時間が分からない。運転手さんはベトナム後しか喋らないので、何か言っていたとしても分からない。

トイレを済ませて、サービスエリア内を見ると、同じバスに乗っていた中国人のご夫婦が、チラチラとやたらバスの方を見ながら、忙しなくご飯を食べていた。
きっと私と同じく、何時に出発するか分からないのだろうと思った。みんな一緒らしい。

バスに戻ると、数分で出発。
ひとまずBooking.comで今晩の宿を探そう。中心地から5キロくらいのところにある田舎風の宿があったので早速予約。またぐっすり眠ってしまった。

しばらくすると、あたりはすっかり暗くなり、バスはくねくねと続く山道をハイスピードで登っていた。
ここで横転したら終わりだなと思っていると、だんだんと景色が山道から街中へ移っていった。

景色が薄暗い街並みから、ネオンがギラギラ光る賑やかなものになってくると、しばらくしてバスは停車した。サパに到着したらしい。
バスを降りる。

「ヘイヘイ!タクシー!」
「ヘイヘイ!バイクタクシー!」

ベトナムのバスターミナルではどこも同じらしい。タクシー勧誘の人がわんさか群がっている。さすがに慣れてきているので、今となっては何とも思わない。

しかし、標高1,600mの街とあって肌寒い。
リュックから上着を出して、Tシャツの上に羽織った。

19時を過ぎ、お腹が減っていたので、近くにあったレストランでフォーを食べることに。初めて食べる、ピリッと辛いタイプのフォーだった。

ハノイとは違い、サパは町中が静かなのかと思っていたが、店内ではカラオケ大会が繰り広げられており、ここでもやはり爆音が轟いているのであった。

サクッと食べ終え、今日はもう遅いし、宿に向かおう。

スマホを見ると、先ほど予約した宿からメールがきていた。そこにはこんな一文が添えられていた。

『宿までは悪路のため、バイクか徒歩で来ることをおすすめします。google mapを頼りにして来てください。』

なんだ、タクシーで行きたかったが、それなら仕方がない。
近くにいたバイクタクシーを引き止めて、連れていってもらうことにした。

ドライバーにgooglemapを見せると、首を傾げている。

「行けそうですか?」と尋ねると
「うん、行ってみる。けど道がよく分からないから、あなたがスマホを持って僕が見えるようにしてて下さい。」

私はバイクの後ろにまたがり、左手でgooglemapが表示されるスマホを持ち、ドライバーが画面を見れるように手を前に伸ばした。その状態でバイクは走り出した。
ドライバーは顔の横に掲げられた画面をチラチラ見ながら、どんどん進む。そして時より歌を口ずさむ。

「ハレルヤ〜、ハレルヤ〜♪」

ご機嫌なドライバーの後ろで、私はスマホをきちんと掲げ、右手でバイクを力強く掴む。
何なんだこの状況は。思わず笑ってしまった。

5分ほど進むと、舗装された道から、脇の細い道に進むようにgooglemapが指示してきた。それに従い、ドライバーは進む。

先ほどはグレー色のよくあるアスファルトの道だったが、脇道に入ると、白色でギリギリコンクリートといった感じの、手作り感溢れる道になっていた。
車1台通れない細く曲がりくねった山道を、車体をぐわんぐわん縦揺れさせながら降っていく。

街灯などは無く、バイクのライトだけが道の先をわずかに照らす。
googlemapではあと5分という表示が出ていたが、その表示を最初に見てからすでに20分経っていた。それくらいスピードが出せない悪路なのであった。

ドライバーの歌声はいつの間にか消え、暗闇の中、バイクのエンジン音と虫の音だけが響く。

おぉ、これで進んだ先、宿が無かったらまずいな。ベトナムのこんな山奥でひとり取り残されたら参ってしまう。

不安が募ってきたが、なんとか目的地あたりまで到着した。
ただ、周りを見ると宿らしいものは無かった。

ドライバーが、たまたま外に出ていた地域住民らしい人に訪ねてくれた。
すると、どうやら今いる場所のお隣の建物が宿であると分かった。

中に入ると薄暗く、人の姿はない。

ドライバーが「おーい、ここに予約入れている外国人が来ているぞー。」的なことを言ってくれて、奥から若い女性と、年配の女性が出て来た。
ドライバーがあれこれ説明してくれて、無事宿泊できることが決定した。

「なんか大丈夫そうだね!僕は帰るね。」
「おーありがとうありがとう!!」

とても心強い、本当に助かった。。
ドライバーにチップとして追加でいくらか上乗せして支払った。いくら出しても足りない気分だった。感謝してもしきれない。

宿の年配の女性は、シャワールームや部屋など丁寧に案内してくれた。
道のりが道のりだっただけに、普通に宿泊できるということはこんなにもありがたいことなのかと身に染みた。

到着した宿の共用スペースで、ほっと一息。

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