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【ブックレビュー】知的複眼思考法

自分自身、本を読むことは好きであり、実際に本は読んでいる部類に属していると自負している。
しかし、ただ読んでいるだけで終わりになっているのではないか、と危惧している。
得た知識はしっかりと使えるようにしなくては意味がない。
知識の活用に向けた第一歩として、得た知識をしっかりと自分の言葉でまとめる。
そのためにnoteにブックレビューなるものを書いてみようと思う。


【今回読んだ本】


知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ(講談社+α文庫)
著者:苅谷剛彦 出版年:2002年

【一言レビュー】

ステレオタイプから脱し、自ら問いを立てる力を身につけるための指南書
新社会人・新学生に読んでもらいたい名著

【レビュー】


この本は1996年に出版され、2002年に文庫化されている。
つまり発刊からすでに四半世紀が経っている。
しかし、この本で書かれている知的複眼思考法は年々益々、重要性と必要性が高まっている。

高校までの中等教育においては問いに対していかに答えていくか、ということが重要視されていると考える(近年は探究学習が始まっているが)。
一方で大学における高等教育ではいかに自ら問いを立ててその問いに対する答えを探す(研究する)ことが本質である。

こうした自ら問いを立てるために必要なこと。それは自分の頭で考える、ということ。
そのために知的複眼思考法が重要なのである。
知的複眼思考法とはステレオタイプに捉われずに物事を考えていく方法、と筆者は述べている。
自ら考えるために、まずは世の中の常識を疑うことが第一歩となる。
そこから情報を正確に読み取り、物事の道筋を追い、そこから自分の論理を組み立てていく。

こうした自ら考える力を育むために

①著者と同じ立場で批判的に読書を行い、思考力を育む
②論理的な文章技法を基に様々な視点から批判的思考力を育む
③疑問から問いを立てていき、その問いを展開していく
④問いの展開を発展させ、複眼思考を身につける


という4点を述べている(これは章立てにもなっている)。

どの章も具体例を通じてわかりやすく解説されているが、第1章に書かれている「批判的読書の実践」(p98)における新聞記事の批判的読み方や第2章における学生レポートの添削(p131)は巷の本で紹介されている批判的読書や論理的な文章の作成方法などが懇切丁寧に解説されている。
スキルの活用方法が実にわかりやすい。

基礎力を身につけた上での第3章における問いの立て方・展開の仕方について。
ここで書かれている問いのブレイクダウンはビジネスシーンでよく見るロジックツリーの考え方と同様ある。
このあたりが学生だけでなく社会人においても有益な書であることがわかる。
「なぜ」の展開はトヨタの「なぜなぜ分析」そのものだ。
そのほかにも因果関係を見ていく上での重要な視点や抽象と具体を使い分けるための概念化などが説明されている。

そして最後にまとめとして「関係論的なものの見方」「逆説の発見」「問題を問うことを問う」が紹介されている。
物事の多面性に着目することで複数の視点で問題を見つけることが可能となる。
逆説思考によりどのような副産物が生まれるのか。
メタ視点で物事の問題をずらして見る。
こう書くとなかなか難しいが、実際の例が書かれているので理解しやすい。

学生だけでなくビジネスパーソンにおいてもこの本がおすすめなのは社会そのものが不確実性になってきており、問いをたて、常識にとらわれずに突破点を見つけることが必要なっているからだ。
答えは一つではないが、答えを見つけるための考え方の本質は変わらない。
この本を読んだのちにビジネス書を読むと解像度が高くなるだろう。
だからこそ、新たに社会人となる人に読んでもらいたい。

【自分自身の感想】

私自身も社会人歴を重ねていく中で言われていることをこなすだけでは不十分であるシーンが増えてきた。
よくいえば会社に従順。悪くいえば主体性がない。
このままでは良くない、と考え、この本を読んだが、大変示唆に富んだ本だった。
具体的が豊富に書かれているので理解の解像度が高かった。
所謂ロジックツリーやMECEに近い考えもこの書には述べられていて早速応用してきたいと思った。
そしてただ本を読んで知識を得るのではなく、批判的に見ていく。
間違っても良い。まずはそうした批判的思考を身につけていくことが私自身の課題であり、そのために批判的視点での読書、その上での批評(レビュー)というアウトプットを行い、思考トレーニングを展開していきたい。

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