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「ブランドコンサル」という仕事の魅力・面白さ

この記事では「ブランディング」という仕事に興味を持っている方に「ブランディング」とはどんな仕事なのか、「ブランドコンサル」という仕事の面白さは何か、について書いてみたい。日本ではまだ一般的ではない「ブランドコンサル」という仕事に少しでも興味を持ってもらえると嬉しい。


「ブランディング」とはどんな仕事か

まず、ブランドとは「ナイキといえばかっこいい」というように、ブランド固有の期待やイメージが顧客の頭の中に作られている状態のことである。

このような「●●(ブランド)といえば、▲▲(イメージ)」という認識を、各種施策によって消費者の頭の中に作りあげることが「ブランディング」である。

ブランディングでは「一貫性」が大切だと言われる。例えば、ナイキと消費者の接点は、ロゴ、店舗、ウェブ、店員、商品、パッケージ、スポーツ選手、等、たくさんあるが、どの接点でも「ナイキらしさ」が一貫して伝わるからこそ、「ナイキといえばおしゃれ」「ナイキといえばクリエイティブ」というイメージが消費者の頭の中につくられるのである。

ブランディングという仕事はさらに、①ブランド戦略、②アウターブランディング、③インナーブランディング、の3つに分けられる。

①ブランド戦略

上の例で言えば、「ナイキといえば▲▲」の▲▲を何にすべきか(=ブランドコンセプト)、そして、誰に対してその▲▲という認識を持たせるべきか(=ブランドターゲット)を決めることがまず大切である。▲▲の中身を何にするのかは、ブランドの最上流の意思決定であり、これによってブランドのポテンシャルが決まるため、極めて大切な仕事である。また「just do it」のようにブランドの世界観や信念をキャッチコピーに落としこむのもブランド戦略の一種である。ブランド戦略(コンセプト)を軸に、アウターブランディングやインナーブランディングを展開するのである。


②アウターブランディング

例えば、ブランド戦略として「ナイキといえば、シンプルでクリエイティブで先進的なスポーツブランド」という定義がなされたとする。このような認識を消費者にもってもらうために、店舗の外観はどうするのか、どんな広告をどの媒体で打つのか、どんなキャンペーンを展開するのか、など、各種のコミュニケーション施策を考える必要がある。例えば、2020年11月にナイキが展開した「動かしつづける。自分を。未来を。The Future Isn't Waiting, #YouCantStopUs 」というCMは、3人のティーネイジャーたちが学校でいじめの対象になっている架空のストーリーを通して、日本の若者の試みと苦難を描いていた。このCMは賛否両論あったが、話題化によってナイキの信念やイメージを消費者に効率的に伝達することができた。このような顧客への施策を考えるのがアウターブランディングである。


③インナーブランディング

では、誰がアウターブランディングの施策を打つのかというと、「社員」である。代理店を使うとしても、要件を定義して依頼したり最終承認をするのは「社員」である。したがって、社員ひとりひとりが「自社がどんなブランドを目指すのか」を理解・共感していてないと、絶対にアウターブランディングは成功しない。ナイキのように既に有名であり、かつ、そのブランドが好きで入社するような社員が多いケースというのは稀であり、多くの企業がブランディングで最も課題に感じるのはこのインナーブランディングであることも多い。特に、大企業がリブランディングをする場合や、ベンチャー企業がサービス拡大期に社員の求心力を働かせたいときは、このインナーブランディングが特に重要となる。


「ブランドコンサル」の魅力と面白さ


ここまで見てきた、①ブランド戦略、②アウターブランディング、③インナーブランディングを「コンサル」の立場として支援するのが、「ブランドコンサル」の仕事だ。この仕事の醍醐味・魅力はたくさんあるが、ここでは2つほど紹介したい。


①興味の対象が広がり、生活がちょっと豊かになる


例えば、自分が普通に暮らしていたら出会わないようなブランドの仕事をできる機会が得られる。例えば、つい先日ある女性向けのサプリメントのブランド戦略を考える機会があった。自分はこれまでサプリメントを飲んでいなかったし、女性でもないので、サプリメントを利用する女性の気持ちを理解するために、クライアントや競合の商品を買ってみたり実際に飲んで見たり、女性の知人に話を聞いてみたり、普段は全く見ない女性雑誌を熟読してみたりした。その結果、ちょっとだけ女性の優先事項やキレイになりたいという気持ちを理解できるという楽しさがあった。また、妻との共通の話題も1つできたというのも収穫であった。
 他にも、ある物流会社のリブランディングPJでトラックデザインを考えていた時は、高速道路で車を運転しているときに、すれ違う全てのトラックが勉強材料、分析対象に自然となっていた。また、アウトレットで買い物するときには、店に入ると自然とブランドのターゲット層やブランドコンセプトは何だろう、といつのまにか考えていたりということもある。これを楽しめるかどうかは人によるとは思うが、ブランドの仕事をしていなかったら、興味分野はもっと閉じていたと思うのし、様々なブランドとの出会いが得られるのは、この仕事の醍醐味の1つである。


②右脳と左脳を使う「人間味のある仕事」であること


ブランディングは右脳と左脳のどちらも使う知的にタフな、やりがいのある仕事であると感じる。例えば、ブランド戦略であれば左脳が活躍する。ターゲットを決めるために、市場全体を定義した上で、市場をMECEにセグメンテーションし、さらにその各セグメントの獲得魅力度と獲得可能性を評価するための定量リサーチを実施し、ファクトをもとに戦略を組み立てる。一方で、例えばロゴデザインの際は、ブランド戦略をベースとしつつも、言語化が難しいような感覚的な議論をデザイナーとすることもある。また、リブランディングの案件であれば、これまでのブランドに愛着が強くて変わることへの抵抗感があるクライアントに対し、ただロジカルに変わるべき理由を説明するだけでは足りず、感情的に寄り添うことも必要なケースがある。例えば、これまでのブランドの強みを確認し、それをリスペクトしつつ、変革すべき理由を柔らかく表現したり、クライアントが腹落ちをするまで議論を何度も重ねることもある。そのプロセスは必ずしも直線的ではなく、泥臭く人間味のあるコミュニケーションが求められることも多い。このように、コンサルとして左脳でロジカルに物事を考えるのはもちろんだが、クライアントや組織、そして最終的にはクライアントの顧客を動かすために、左脳だけでなく右脳の力も使って、全身全霊で仕事をするのもこの仕事の面白さである。


今回は以上である。ブランドコンサルの魅力については、分かりやすい2点を上げたが、他にも魅力はあるので、またそれについてはどこかで書いてみたい。


#私らしいはたらき方


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