カプセルホテル愛してる物語!
コロナショックで(株)ファーストキャビンが破産した。
直立できるスペースを確保した画期的カプセルホテルが魅力だったのだが残念だ。
僕も二十歳を過ぎた頃、よくカプセルホテルに泊まっていた。
あちこちの地方でライブをするバンドマンに宿泊の問題は常々つきまとう。しかし貧乏で中々ビジネスホテルなどには泊まれない。僕自身、泊まれるようになったのは、たしか事務所付きになってからだった。
インディーバンドの宿泊先は、ネットカフェか対バンの家が多い。「どちらもいやだ」という変わり者がカプセルホテルへといざなわれることになる。
「カプセルホテル?なんか聞いたことあるけど入ったことはないわよ」というひとが多いと思う。
端的に言うと『物置以上、部屋以下』みたいなスペースに、自らの身体をつっこんで宿泊する施設だ。
ちなみに未だにこのカプセルホテルに泊まる。
完全に泊まる必要もないのだが、ふらりと引き寄せられてしまうのだ。遠出でもないのにいちいち新宿のカプセルに泊まる。
なんというか、この施設には、社会という位相の中にはいない男たちが集う。
わかりやすくいうと、変なやつが多いのだ。
変な場所なので変なやつが吸い寄せられる。宿泊施設と銘打った磁場なのだ。頭おかしいところには頭おかしいやつが揃うものだ。
同様に僕も吸い寄せられてしまう。
なんかしらの事情があって家に帰れないサラリーマン。ヤクザ、変態、バンドマン、オカマ、芸人、作家、大富豪と大貧民、住所不定男。などおっさん盛りだくさんだ。
住所不定男はこの中でもカースト最高位にあたる。定住しているからだ。
そう、家賃六万円ぐらいで住めるプランがあるのだ。
風呂もあって光熱費ガス代などもかからず、食事は有料だが出てくる。掃除もいらない。考えようによっては住居として安い。「ホテル住まい」と言えるセレブっぽさまで付いてくる。
デメリットは個人の持ち物が保管できないことだ。憧れはあるが、もちろん実際にやる勇気は無い。
新宿のカプセルホテルの店員はなぜか厳格で、入館した瞬間、店員に「まずクツを脱いで!」と言われる。
「いらっしゃいませ」よりも「こんにちは」よりも、とにかくクツの脱着をうながされるのだ。
面白いのが「風呂のまかない」ライクなシステムもある。
さっきまで風呂掃除をしていた男が、いきなり全裸で入ってくるのだ。
我々が入浴中でも構わず掃除をしているし、突如従業員がザブーンと湯に入ってくる。福利厚生なのか知らないが、とにかく客と従業員の境目が無い。
食堂もかなり味がある。
中高生の授業中のように、全員が一方向に向くのだ。けっこうなおっさんばかりなので、かなり味のある光景になる。
学生服の男優に違和感がすごかった大昔のエロビデオみたいだ。
何故こうなのか。
おそらく野球を見なくてはいけないからだ。
不思議とみんな野球が好きなのだ。しかも敗北を願う(心斎橋のカプセルホテルで隣りのおっさんが「巨人なんか負けたらええねん!」とブツブツ言っていた)
野球を観ながら食事をし、夜が来る。
そして深夜になると『談話室』と呼ばれる休憩所に男たちが流れ込む。
夜な夜な語らうのだ。全然知らないおっさんと。
↑上のようなスペースが談話室だ。
夜中、かついろんな人々が寝ているので、室内がおもいきり暗くなる。静かにしないと「静かにしろ!」とすごく大きな声で怒鳴られる。
カプセルホテルの年齢層はゴリゴリの中年層だ。
比較的僕は若輩者なのでビールが自動で出てくる。ここに居る人々は気味が悪いほど気前がいい。頼んでもないのに奢ってくれる。
代償として「人生とはな!」「はい!すみませんでした」と言った体育会系のような押し問答をされる。
意外なことにそこまでダルくない。
「いつかはリッツ・カールトンで飲みたいすね!」
「カプセルホテルでいいんだよ、これぐらいがちょうどいいんだよ」
「なんでなんすか!?こんなとこの何がいいんすか!?」
「いやぁ、こうしてダラダラ飲むんだよ・・・金麦をさ、知らない誰かと。こんなに贅沢なことがあるか」
「いや!リッツ・カールトンがいいす!」
みたいな話を交わす。何にもならない話を知らないおっさんと交わす。
たしかにこれがたまらないのだ。
思い返せば、僕はカプセルホテルにまつわる歌もたくさん書いてきた。
せっかくなので貼り付ける。
ここまでこのnoteを呼んだあなたはもうカプセルホテルのトリコのはず。聴いたらもっと好きになるはず。
「犬」という曲だ。
ホテルに集う連中を犬と表現した力作。二十二歳のときに書いた。
歌舞伎町のホテルで狂うまで眠る。彼女もこの歌で死ねたと笑う。
歌舞伎町にも朝が来て浴槽に浸かる。暮らすために殺す人と浸かる。
He says "Take off your shoes". This basket case together.
(まずクツを脱いで!頭おかしいやつらとといっしょ!)
There is funky a Baito. Funny people's work. No money better.
"BASKET CASE TOGETHER!!"
(変なバイトがいる!変なやつらの仕事!金はない!頭おかしいやつらといっしょ!)
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