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どうしようない斜陽感の中で、口数が減っていく凋落前のハイエースの車内。

白黒つけようとすると大体つらくなる。物事はグラデーションで出来ていて、Aさんのことが嫌いでも守ってしまったり、Bさんのことが好きでも壊してしまったりする。

「嫌いだから殺す」なんて分かりやすい論理的な事象はこれまで生きてきて、これまであまりなかった。

日々の生き方も同じくだ。もちろん濃淡はある。

コンビニのクジで当たりが出たり、改札に入った瞬間にタイミングよく電車に乗れたり、好きなひとに話しかけられたり。出かけた瞬間に雨に降られたり、コンビニの店員が愛想悪かったり、嫌いな人間ばかりの飲み会にどうしても行かないといけなかったり。

それなりの良い悪いのグラデーションはあるけれど、「特別なこと」なんてそうそう毎日に設置されていない。

ロックは退屈を壊す装置になり得るエネルギーがあるけれど、全員がその恩恵に預かれるわけもない。

やはり毎日はつまらないまま進んでいくのだ。ナメクジのような速度で、『毎日』という早すぎる時間の中を走っている。ほら、一年前のことなんて、本当に最近ではないか。振り返ると、思い出すと猛スピードで時が流れている肌触りに冷や汗が出る。

そんな時の流れにビビりながら、『毎日』の大切さをじんわり噛み締められたら一番いい。その噛み締める対象は特別な面白さをはらんでいなのだけど、やはり自覚していたい。

一年前の退屈だった日々が、今振り返ると人生の中でもかけがえのない時間だったんだと気付いたりする。

バンドマンは『解散』というやつを味わうことが多い。こいつには一つメリットがあって、人生の終わりを擬似体験できることだ。「バンドの一生」というのは大体三年だと言われている。僕は前のバンドを七年半生きることができた。そして死んだ。

振り返ると、思うのだ。

あのスタジオの日々、ライブの日々、収録、制作。結成前夜の高揚感、増える人気と掴んでいく初体験、そして斜陽のときは訪れ、凋落を感じながらももがき、衰弱し、少しずつ口数はハイエースの車内から減っていった。

そんな数年間だった。毎日、楽しいこともつらいことも濃淡だった。

でもあれらはすべてかけがえのない時間だった。もう二度と戻らない「生前の思い出」だ。

引き伸ばされているだけで人生の数十年も、バンドの数年も本質は変わらない気がしている。

たぶん今日もかけがえがないのだ。

この後、深夜2:00からテレビ東京のMelodix!でエンディングテーマとしてjuJoeが使われる。濃淡の『濃』だ。

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